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自治体のRPA導入状況を解説!導入事例に学ぶ成功のポイントとは?

RPA(Robotic Process Automation)は、データの入力や集計、照合などの作業をソフトウェアのロボットに代替させて自動化させる仕組みである。処理のルールを定めた「シナリオ」にしたがって、表計算ソフトやメール、業務システムなど複数のアプリを連携させながらルーティン作業をロボットが行う。

近年は自治体でも導入が進んでおり、今回は日本の自治体におけるRPAの導入状況を解説する。

RPAとは ? 自治体がRPAを導入すると何ができる?

RPA(Robotic Process Automationの略)とは、人が行う定型的なパソコン操作をソフトウェアによって自動化させる仕組みのこと。自治体においては主にデータの入力・照合・集計などに用いられることが多く、コンピューターによる作業なのでミスも発生しにくい。

人間とは違ってロボットなら間違えないだけでなく、「辞めない」「休まない」「ムラがない」。これらの強みから近年は、多くのシーンでRPAが活用されるようになっている。

なお、作業の自動化手段としてよく知られる表計算ソフトのマクロ(VBA:Visual Basic for Applications)がある。作業を自動化するという点においては同じだが、RPAは複数のアプリケーションを連携できたり、ノーコードで自動化できたりと、それぞれの実務にあった使い方ができるのが特徴である。大規模なシステムインフラ不要で導入できるため、コスト面での優位性も高い。

自治体内において、RPAを活用できるシーンは多岐にわたる。例えば健康・医療の分野だけでも以下のような作業をRPAによって自動化できる。

●国民健康保険
・資格管理:国民健康保険異動届の入力、資格証明書情報の管理
・賦課管理:簡易申告書の入力、転入者の所得情報の入力
・給付管理:レセプト点検結果の入力、高額療養費申請書の入力、限度額適用認定証の年度更新
・統計・報告:月報の作成

●後期高齢者医療
・資格管理:年齢到達による保険証交付
・給付管理:高額療養費申請書の入力、高額介護合算療養費申請書の入力、限度額適用認定申請書の入力

●健康管理
・成人検診(健診):予約入力、結果入力、通知書作成、受診勧奨者の情報抽出、減免申請に係る課税状況等の調査
・母子保健管理:訪問先地図の作成

自治体におけるRPAの導入状況 

総務省発表の調査によれば、2021年度のRPA導入済み団体割合は都道府県で91%、指定都市では95%となっている。その他市区町村は29%と表面上は低水準となっているものの、「導入予定および検討中」を含めると6割近くの自治体がRPA導入に前向きだ。RPA導入率を時系列で見ても、ここ数年で軒並み増加傾向にある。

【RPA導入済み割合】

参考:「自治体におけるAI・RPA活用促進」(総務省)

自治体のRPA導入が進む分野は「財政・会計・財務 」

RPAの導入はどの分野でもおおむね増加傾向にあるが、中でも「財政・会計・財務」、「組織・職員(行政改革を含む)」「児童福祉・子育て」での導入が多い。

導入費用・年間運用費用ともに「100万円未満」の回答が最多となっている。令和元年度の調査で「100万円~250万円」が最多であったため、近年はあまりコストをかけない小規模なRPA導入がトレンドといえる。
 

自治体のRPA導入の動機と課題 

導入推進の主体となる部署は「情報政策担当課」が多く、そのあとに「行政改革担当課」が次ぐ。また、導入の動機は市区町村レベルでは、「担当課からの要望」「ソフト提供会社からの提案」が多くを占めており、先進事例の横展開がきっかけというケースも少なくない。

導入に向けた課題としては人材不足や予算不足のほか、導入効果や活用の方向性が分からないという声などが挙げられている。


■RPA導入事例|RPA導入で自動化業務はロボットに任せ、職員にしかできない仕事に注力する埼玉県飯能市
■RPA導入事例|AI-OCR+RPA導入で効率化できる作業を吟味、「意味のあるDX」を実現する滋賀県近江八幡市

自治体のRPA事例にみる導入効果 

RPA導入済みの自治体では、実際に作業時間を大幅に削減し、定量的な効果を出すことができている。一般にRPAの導入効果は、自治体の人口規模が大きければそれだけ大きくなりやすい。しかし、以下を見て分かる通り、中小規模の自治体でも一定の成果が出ている。

※人口:2020年1月1日住基台帳より 職員数:2020年地方公共団体定員管理調査(2019年4月1日現在)より
参考:「自治体におけるRPA導入ガイドブック」(総務省・令和3年1月)

自治体におけるRPA導入の流れ

RPAの導入の流れは大きく「事前検討→企画・予算化→調達→構築→運用」のようになる。導入後も効果検証と維持・改善プロセスを進め、PDCAをまわしていくことが欠かせない。

導入前にポイントとなるのは、「なぜ、RPAを導入するのか」を明確にすることだ。導入目的を定め、RPAを適用する業務を選定する。選定の際にはその作業がRPAに適したものかはしっかりと吟味する必要がある。事前検討をないがしろにすると、導入効果を最大化できなくなってしまう。

おおよその方向性が決まったら、具体的な庁内体制を整備する。

・導入推進組織:情報政策担当課、行政改革担当課など
・導入対象組織:市民課、総務課、健康福祉課など
・保守運営組織:導入推進組織、導入対象組織、外部事業者など

目的にあったRPAを導入したら、自動化したい作業のシナリオを作成しテストを行う。その際、誤った入力や処理が生じることもあるが、トライ&エラーを繰り返して精度を高めていく。実運用がスタートしたあとも、正しく作業ができているか、ムダが生じていないかなどを逐一チェックして効果検証もおろそかにせず行う。

自治体RPA導入を失敗させないために気を付けるべきポイント

最後に自治体においてRPAを導入する際の注意点を紹介する。

スモールスタートを心がける 

自治体内にはRPAが活用できる業務が数多くあり、導入検討時は色々と手を出したくなるものだ。しかし、最初はスモールスタートを心がけることが肝心である。大規模な業務改革を行うべく高コストなツールを導入した結果、現場がそれを使いきれず失敗してしまうというのはよくある例だ。「導入する部署を限定する」「特定の作業のみで試験導入する」など、RPAをはじめて導入する場合には小さくはじめることが大切である。
 

導入目的を周知徹底させる

RPAを導入する際には、導入する目的を明確にして関係部署にそれを周知徹底することが重要だ。RPA導入によって何を目指すのか、この点については組織全体で共通認識をもつと効果的である。目的が確固たるものであれば、必要なリソースや導入対象、効果検証方法などもおのずと見えてくるはずだ。
 

使いやすいツールを選ぶ

導入目的が決まったら、それにあったツールを選ぶ。デジタルツールにうとい職員でも活用できるよう、使いやすさを重視すると失敗しにくい。また、導入済みの自治体では管理人材の不足が課題として挙げられていることから、メンテナンスのしやすさもRPAツール選びの重要な基準となるだろう。

まとめ

今後日本では労働力人口が減少していくため、その中で成長を続けるためには私たち一人ひとりが生産性を上げるしかほかにない。そして、RPAはそれを実現できる有効なツールだ。単純なパソコン作業は積極的にRPAを使って自動化し、思考を伴うような仕事にリソースを割くべきである。自治体の仕事とRPAの相性はよく、うまく使いこなせれば得られる効果は計り知れない。

なお、導入開始時はスモールスタートを心がけ、徐々に作業範囲を広げていきながら業務効率アップを図るといいだろう。

 

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