総務省「自治体DX推進計画」では、RPAの利用推進が重点取り組み事項とされているが、同時に市町村レベルでの導入には遅れが見られるとの指摘もある。そんな中、先駆けてRPAを導入し、成果を上げている飯能市の取り組みを紹介する。
※下記はジチタイワークスVol.14(2021年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]Blue Prism株式会社
RPAの迅速な導入で、住民サービスの質を守れ!
自然豊かなベッドタウンとして人気の同市だが、近年はほかの地域と同様、人口減の課題を抱えている。おのずと労働力不足に陥る危機感があったと、西澤さんは語る。「今後、自治体職員数の減少は不可避です。何らかの手を打たなければ行政サービスの質の低下、職員の疲弊を招きます。人口減少時代に合わせた庁内DXを加速する必要がありました」。解決策を検討した結果、RPAの導入を決定。
市町村規模での導入事例がまだ少ない中で情報を集め、協力事業者から提案があった「Blue Prism(ブループリズム)」を選定。小規模自治体でのRPAの有効性を確認するため、令和元年度に実証実験を行った。
自治体のRPA導入状況
平成30年度からRPA導入の動きは加速し、令和元年度には導入予定・検討中を含めると約60%がすでに何らかの動きをとっている。
※令和3年1月総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」より(全国の都道府県・市区町村1788自治体への調査)
操作を“部品化”できるから安定性や拡張性も高まる。
同社の性能で最も評価したのはセキュリティ面だったと、西澤さんは振り返る。「ログを暗号化してサーバーに一元管理するので、問題発生時に原因を追跡できるという点が優れていました。セキュリティ要件の厳しい金融機関での導入実績が多いのも、信頼感がありましたね」。
また、システムはオブジェクトと呼ばれる“部品”で構成され、共有や管理を容易にする独自の仕組みを持つ。RPAは導入後に、改修を重ねながら運用するためメンテナンス性が問われるが、この形式なら、変更が生じても対象部品に手を加えるだけで全作業に反映される。修正漏れの心配もなく、安定稼働につながるという。
さらに、高い拡張性もポイントだった。「様々な業務への全庁的な横展開を最初から考えていたので、部品を流用しながらシステムを構築できるという点は魅力でした」。
実証実験に当たっては、まず全庁向けの説明会を実施し、導入希望業務を募った。100を超える応募の中から、税関連など4業務に絞った実験の結果、試算では年間約400時間の業務時間削減になるとの手応えを得て、令和3年3月から本格稼働に移ったのだという。
デジタル職員を日々育て、地域の未来を豊かにする。
都築さんは「RPA導入は、時間換算できない大きな成果もある」と強調する。例えば税に関する業務では、職員が膨大な時間をかけてチェックしていたが、“重要なプロセスだからこそ”とRPAに移行。これにより、タイトなスケジュールとプレッシャー下の作業ストレスから職員を解放し、窓口対応のように職員にしかできない仕事に注力する時間が生まれた。麻田さんは「作業完了までの時間を予測できるので、繁忙期に他部門をサポートするなど、人材配置やマネジメントもしやすくなる」という。
このように陰で働くRPAを、西澤さんは“24時間、365日フル稼働できる職員がいる感覚”だという。「異動で人が変わると使えなくなるような、属人化したRPAでは意味がありません。職員が行う業務が確実に減ると同時に、活用し続けられる運用体制をつくることが重要です」。
また、都築さんは「今は基幹系での運用が中心ですが、もっと多くの職員が関わる全庁的な業務にも広げていきたい」と将来を見据えつつ、こう締めくくった。「RPAは、職員と同様に育てていくもの。当市の経験が、ほかの自治体の新たな挑戦のきっかけになれば幸いです」。
飯能市 企画部 情報戦略課
左:主査 麻田 哲平(あさだ てっぺい)さん
中央:主任 西澤 徳泰(にしざわ とくやす)さん
右:課長 都築 洋司(つづき ようじ)さん
目先の効率化にとらわれない!選ぶべきは将来を見据えたRPA。
実証実験から本格稼働へとトライアンドエラーを繰り返し、まさにRPAを“育てて”いる同市。当初の想定を超える結果があったという。実証実験からの新たな気づき、RPA導入検討においてのポイントをまとめた。
飯能市が実証実験から得た気づき
1.全庁向け説明会による職員の意識向上
RPAは単なる業務効率化ではなく、人口減による労働力不足という、将来的な課題を解決するための手段であるとして、国の動きやRPAの役割などを説明。その上で自動化対象業務を募集したところ、100を超える応募があった。これほどの数が集まったのは、職員が課題を自分ごととして捉え、危機感を共有できたということだろう。
2.多角的な視点で検討することの有用性
対象業務の検討や開発においては、協力事業者の開発担当とシステムSE、同市からは企画部門、情報システム部門、業務担当の合計5者で協議を行った。1つの業務について異なる立場から考えることにより、今の業務を単純に自動化するのではなく、そもそもどうあるべきかという業務の最適化にまで踏み込むことができた。
3.エラー原因を追跡できることの重要さ
検討を重ね開発しても、いざロボットを動かしてみると想定外のエラーは必ず発生する、ということが分かった。その際に、いつ、どこで、何が起きたかという原因を追跡できるかどうかがカギとなる。素早く原因を特定できれば、修正対応も再稼働も迅速に対応でき、業務への影響を最小限に抑えることができる。
RPA導入検討におけるポイント
1.定量化できない多くのメリットに注目
作業時間が何時間短縮できる、といった定量的な効果で評価されることの多いRPAだが、以下のように、時間ではあらわせない成果にこそ本質があるといえる。
現場からの声
●業務最適化にまで踏み込むことで、RPAで自動化した方が良い業務と、別のシステムやツールと組み合わせた方が効率的な業務を発見できた。
●複数部署での類似処理について、業務フローの統一を進めるいい機会となった。
●処理だけでなく確認作業までRPAのフローに入れて、ミスを減らすことができた。
2.導入することよりも運用体制の構築が重要
現場レベルで属人的に開発したRPAだと、担当者の異動で使われなくなることも多いという。横展開したい場合も、各部署に同様の人材が必要だ。また、想定外のエラー解決は素人には難しく、逆に保守の負担が増える可能性も高い。任せるべきところは外部の協力事業者に任せ、運用体制まで整えてこそ真の導入といえる。
3.高いセキュリティと追跡性は必須
全庁的な展開を考えた場合、住民情報といった機密情報を扱う業務でのRPA利用も踏まえると、セキュリティの高さと追跡性は最優先事項だ。エラーなのか、重大な事故なのかという問題の切り分けや原因追及は必須となり、不正が行われていないか、ポリシーを逸脱していないかという全体統制まで想定しておく必要がある。
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