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デジタル田園都市国家構想を通じて国が実現したいこととは?

国が掲げる重要施策の1つ「デジタル田園都市国家構想」。デジタルの力を活用して日本が直面する社会課題を解決する構想で、国は中長期の目標を提示し、各種交付金を用意して地方を支援する。一方、地方は国の支援を活用しながら、市民の暮らしやすさ・働きやすさ・豊かさを向上させていかなければならない。少子高齢化や過疎化、都市一極集中などの問題を解決するためには、地方が輝くことが必要と言える。

そこで第3回では、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局の小野康佑さんに、地方創生に必要なカギやデジタル田園都市国家構想の将来像などについてお話を伺った。

 

【デジタル田園都市国家構想交付金 デジタル実装タイプTYPE1 まるごと解説!】

(1)デジタル実装タイプ「TYPE1」を分かりやすく解説
(2)デジタル実装タイプ「TYPE1」申請のポイントとは?
(3)デジタル田園都市国家構想を通じて国が実現したいこととは? ←今回はココ

Interview

小野 康佑さん
デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 参事官補佐

プロフィール

新卒でNTT東日本に入社。新規事業開発室や戦略子会社(株式会社NTTe-Sports)の立ち上げに関わったのち、神奈川県横須賀市への在籍出向を経て、2022年7月より現職(出向)。

国が地方自治体に期待すること

デジタル田園都市国家構想は、全ての地方自治体、全ての原課に開かれた取り組みである。すでにデジタル化の波は民間のみならず、官公庁においても待ったなしとなっている。

例えば総務省の令和4年3月の調査によれば、DX・情報化を推進するための職員育成の取り組みは47都道府県が行っている。市区町村レベルでも6割を超える自治体が、DX・情報化に関する研修などを実施している。 

「デジタル田園国家構想交付金(デジタル実装タイプ)は領域問わず、本当にどこでも使っていただければと思っています。事務局としては情報発信や事前相談の対応をしながら各自治体担当者の申請の後押しをしていきたいです」

さらに、これまで申請に至っていない自治体には一歩踏み出してほしい、と小野さんは語る。近年は、デジタル化に前向きな自治体は申請数が多くなっている一方、そうではない自治体はなかなか出てこず、格差が広がっているそうだ。

「一番避けてほしいのは、最初から諦めて不戦敗で終わってしまうこと。まずはTYPE1から検討してみてほしいです」

 

地方活性化のカギはソフト力

地域のデジタル化を進める際、ハード面の整備に終始してしまうケースが少なくない。例えば、市民や観光客のために無料Wi-Fiを整備して終わりというのは最たる例だ。

もちろんそのようなインフラ整備は重要なのだが、それよりも大事なのはそこに乗せる「サービス」である。いくら線路を地域内に張り巡らせたからといって、そこに電車(サービス)が走らなければ、せっかくの線路を有効活用していることにはならない。

「すでにデジタルインフラの整備は当たり前の世界になりつつあります。これからはインフラの上に乗せる今の地域に求められるサービスを真剣に検討し続け、速やかに実装してもらいたい。それこそが地方創生のカギになるのではないかと思っています」

 

意欲ある自治体に共通すること

自治体への出向経験があり、現在も様々な自治体と仕事をされている小野さんに、「意欲ある自治体の共通点」について質問すると、次のような答えが返ってきた。

「大きく2つあります。1つは、自分の地域を良くしたいという想いが強い職員がいること。もう1つは、まわりの人を巻き込むコミットメントが強いトップ(首長や部長等)がいること。この2点を兼ね備えている自治体は、プロジェクトの成功率が高いように感じます」

そして、小野さんはそういった自治体にこそデジタル田園国家構想交付金(デジタル実装タイプ)を活用してほしいという。担当者や首長が強い意欲をもっていれば、当然事業計画にもきっちりコミットでき、サービスの継続的な実装も可能となるはずだ。

 

スタートアップ企業の事業機会創出にも

デジタル実装タイプは、スタートアップ企業側にもチャンスとなる。全てのTYPEで、スタートアップをサービス提供主体にすると審査時の加点対象となる。そのため、各地域のスタートアップ企業は、自治体への営業を諦めず行ってほしいと小野さんはいう。

「今回、実装事例やQ&Aをはじめ、民間企業も含めて広く情報発信をしています。それは企業側から自治体へのアプローチを促す意図もあるので、ぜひスタートアップ企業も含めた民間企業の皆さまには、自治体への営業にトライしてほしいです」

 

最終的目標は全自治体が2027年度までに地域のデジタルサービスの実装に取り組むこと

デジタル田園都市国家構想では、2027年度までに地域のデジタルサービスの実装に取り組む自治体を1,500に増やすことが目標に掲げられている。さらに最終的には、全自治体が地域のデジタルサービスの実装に取り組み、地方各地から日本を元気にするような取り組みが出てくるのが構想の理想像である。

ただ、そうはいっても様々な理由からデジタル実装になかなか取り組めないという自治体もあるだろう。次年度には新たな取り組みとして、デジタル実装に向けた計画づくりをサポートする「計画策定支援事業」も開始される予定だ。

さらに同時に、国はデジタル実装タイプのTYPE2やTYPE3といった高次のデジタル化も横展開させていきたい意向だ。「計画策定支援事業やTYPE1で面の拡大を図るとともに、TYPE2・TYPE3の優良事例の横展開で質の向上も目指していきたいと考えています」

 

デジタルの力で日本の課題を解決していく

今後、人口減少により、過疎化や地場産業の衰退など、様々な社会的課題が深刻化することが予想される。一方で、近年のデジタル技術は目覚ましいスピードで進化し続けている。使い方次第で日本に存在する多くの問題を解決に導くことができ、その足掛かりとなるのが「デジタル田園都市国家構想」である。

国は構想の中長期的な方向性を示し、地方に対して多面的な支援を行おうとしている。地域の個性を伸ばしながら社会課題を解決するためにも、各自治体は国の支援を活用してみてほしい。デジタル化が遅れてしまっている自治体もまだ遅くはない。ぜひ、これをきっかけに地域のデジタルサービスの実装に取り組んでほしい。

 

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【埼玉県川口市】デジ田交付金を活用し、地域企業のDX推進を学びによって支援する。

 

【岡山県岡山市】デジタル化のレベルに応じた、きめ細かな支援事業を実施。

 

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