ジチタイワークス

福岡県久留米市

3年で5億円の財源を確保! コスト削減を成功させた電力入札ノウハウとは

市の管理する150もの高圧受電施設で電力コストを見直し、1年で約1億円、3年で約5億円もの財源確保に成功した自治体があります。福岡県久留米市役所です。

大幅な電力費削減の噂を聞きつけ、久留米市にノウハウを教えてもらった他県の自治体も、数千万円の財源確保に成功しているといいます。

カギとなるのは「久留米方式」と呼ばれる入札方法でした。今回はそのヒミツに迫ります。

※下記はジチタイワークスVol.2(2018年6月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
 [提供] 福岡県久留米市

 

電力を見直せば確実にコスト削減!?まずはアンケートを実施

久留米市では平成17(2005)年から入札を実施しています。施設は設備課が管轄する市庁舎のみで、これまでのコストダウンの平均は約3%でした。ところが、平成26(2014)年度の入札で16%、800万円以上を削減できたといいます。背景には電力会社の料金値上げや新電力事業者(特定規模電気事業者)の増加がありました。

設備課の清水淳さん、篠原幸治さん、西木浩二さんは「市の管理するすべての施設で入札ができればさらにコストが削減できるはずだ」と考え、電力コスト削減プロジェクトをスタート。まずは中核市へのアンケートを実施します。すると、65%は入札を実施していたものの、すべて成功しているわけではないとわかりました。入札不調、つまり入札されないのはなぜか。理由を探るため、3人は東京の新電力事業者の元へ向かいました。


プロジェクトについて話す篠原幸治さん

参加して“もらう”ために実施時期や方法を見直す

直接新電力事業者と話すと、現在の入札方法の改善点が見えてきました。入札には負荷率(電気設備の稼働率)への配慮が必要。高負荷率の施設や低負荷率でも規模が小さい施設だと入札は成功しにくいのです。これらの施設を低負荷率でスケールの大きな施設とまとめることで、入札不調が出ないように調整しました。これが久留米方式と呼ばれる手法です。

また、新電力事業者が魅力的だと思える入札プランも練りました。繁忙期を避け秋ごろに入札を設定。郵送でも受け付けることで事業者の移動の負担を低減しました。また市の施設を管理する各部署が連携し、窓口を一つにすることで事業者の手続きを簡略化しています。

この部署間の連携が「何より大変だった」と篠原さんは話します。どの部署でいくつの施設を管理しているかがわからない。さらに、契約内容を調べる必要もありました。「プロジェクトを成功させれば必ずコストは下がる」という信念で、13におよぶ部署に根気よく説明し、施設を調査し続けました。

久留米方式を日本全国へ

そして迎えた入札日。4度に分けて実施した1回目の入札で5000万円ものコスト減を達成し、最終的には約1億2000万円のコスト削減を達成できました。さらに、窓口を設備課に一本化したことで、庁舎内でも合計約900時間もの事務作業が削減できているといいます。短期間で準備し、応札率100%を達成できたのは「必ず成功させる、という強い気持ちがあったから」と篠原さんは話します。

ノウハウを共有すれば、多くの自治体が頭を悩ませる財源確保の道が開かれるに違いない。篠原さんは「電話で問い合わせされる方も、視察に来られた方にも久留米方式を伝えていきたい」と語ります。


入札対象となった市内の城南中学校

How To

①電気の専門知識を身につける

電力の入札には大量のデータ分析も必要なため、電気にまつわる専門用語の知識があると進めやすい。あらかじめ電気の仕組みを理解しておくことが大事。特に初年度はスピードが求められ、電気の知識を持つ職員がいたため入札にこぎつけられた。

②相手の立場に立つ

現状を調査するため中核市へのアンケートを実施したところ、入札に失敗する事例があるとわかった。新電力事業者や先進自治体への直接訪問を実施し原因をつきとめるなかで「事業者が参加しやすいシステムにすればいい」と気づいたことが大きかった。

③事業者ニーズにマッチした仕組みに変更する

年度末に実施していた入札の時期を変更する、郵送でも受付可能にする、負荷率の違う施設をグルーピングするなど、事業者が入札に参加しやすい工夫をする。

④負荷率の高い施設は部分供給入札を実施

単体でもグルーピングしても入札が成立しない施設は、部分供給入札※を導入。ベースの電力会社を変更せずに、ピーク電力を新電力事業者から供給するシステムだ。

※部分供給入札…電力使用量をベース部分とピーク部分に分割し、ピーク部分のみを入札対象とする方法。

⑤窓口を一本化

設備課が主導することで、事業者にとっても庁舎内でも、事務手続きの負担が軽減する。また、設備課、各部署の役割を明確にして、目標達成に向けて市全体で連携した。

⑥高い志が必要

今回は職員の提案事業だったこともあり、プロジェクトを通常業務と並行して進めた。入札が成功すれば必ず大幅なコスト削減が実現するため、目的意識を持ち、「入札を成功させる」という強い気持ちが支えとなった。

Results

〇応札率100%を達成
〇すべての入札で3~10社が参加
〇1年目は約1億2000万円の財源を確保
〇3年で約5億円のコスト削減を実現
〇約900時間の事務作業時間を削減

スピードが肝心だったのでミーティングは毎日実施しました。3人でぱっと集まって相談や進捗を共有し、入札までの道筋をきちんと描けるように準備を進めたのです。ほかの自治体でもぜひ、トライしてみてください。早いほど効果も高いと思いますよ。


(左から)都市建設部 設備課 片山大樹さん、篠原幸治さん、清水淳さん

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