ジチタイワークス

神奈川県横浜市

レシートを現金化するアプリで、地域経済の活性化を目指す。

地域経済活性化のための施策が各地で行われているが、実施するまでの準備に時間がかかり、迅速な支援ができないケースもあるようだ。そんな中で横浜市は、レシートの有効活用に着目し、住民や店舗から好評を得ているという。

※下記はジチタイワークスINFO.(2022年11月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]WED株式会社

長期間の準備が必要な支援策は“今”の状況に間に合わない。

新型コロナの影響で、大きなダメージを受けた国内経済。特に、飲食店をはじめとする様々な小売店は、営業時間短縮要請やアルコール類の提供制限、外出自粛などを受け、厳しい経営状態を強いられた。そうした状況に対して各地の自治体が、プレミアム付き商品券や観光クーポンの発行、ポイントのキャッシュバックなど、消費喚起をねらった各種キャンペーンを実施しているものの、中には予想通りの事業効果を発揮できないケースもあるようだ。

商品券やキャッシュバックは、キャンペーンの実施が決まってから加盟店申請の呼びかけを行い、発行・換金に関わる事務作業の準備も進めなければならない。そのため、支援すべきタイミングとキャンペーン開始までに、数カ月間のタイムラグが生じてしまう。特に紙券の場合は、印刷・運搬の手間と時間がかかり、運用中も券の回収・集計・換金など煩雑な作業が必要だ。

「横浜市でも、平成27年と令和元年にプレミアム付き商品券を発行しましたが、加盟店集めなどの事前準備だけで4~5カ月を要しました。その経験から、飲食店支援のための事業予算が決まってすぐに、“できるだけ迅速に始められること”を条件に、消費喚起キャンペーンの手法について検討を開始しました」と、髙橋さん。

キャッシュレス決済アプリを活用すれば、商品券発行のような事前準備が省ける分、迅速な事業開始が可能になる。しかし、それでは特定の決済方法しか使えないため、事業展開の幅への制約になってしまう懸念があったそうだ。そこでプロポーザルを実施し、複数の手法を比較検討した末に選んだのが、「WED(ウェッド)」が手がけるレシート買取アプリ「ONE(ワン)」を使った市内飲食店の利用促進キャンペーンだった。

偏らない店舗支援と、データの活用が各方面のメリットに。

ONEはスーパーやコンビニなどで購入したレシートを撮影して投稿すると、通常1~10円で買い取られるアプリ。たまった残高は口座に移したり、デジタルギフトに変えたりして利用が可能だ。このアプリに市独自のキャンペーン内容を加え、利用者にポイントを還元することになった。レシートはどの店舗も発行するため支払い方法に関係なく全消費者が幅広く活用でき、支払い方法などによって支援が偏らない“ニュートラル”な点が魅力だったという。

また、市内の商店会では過去に、レシートを台紙に貼って郵送すると抽選でプレゼントが当たるレシートラリーを実施し、好評を得た事例があった。「ほとんどの店は日常的にレシートを発行しているので、加盟店募集などの事前準備は必要ありません。迅速に始めたい飲食店支援策の手法として、かなり有望だと考えていたのです」。

市が考案したキャンペーンの仕組みを同社がアプリに構築し、約2カ月で運用が始まった。担当課が行うのは動作の確認や、住民への周知のみで、手間がかかる店舗登録の作業は不要。FAQの作成などは同社が担当した。

こうして令和3年12月、アプリ活用による1回目の市内飲食店利用促進事業「レシ活チャレンジ」がスタート。飲食店が発行する店内飲食またはテイクアウトのレシート、デリバリー注文画面の写真を投稿し、簡単なアンケートに回答すると、利用金額の20%が還元される。

さらに、2万円以上利用の場合は抽選で景品が当たるキャンペーン内容で、原資約2億円に対して10億円以上の経済効果を生んだという。

アプリ利用者へのメリットだけでなく、自治体にとっては、利用者の動向をデータ化し、分析結果が分かるというメリットもある。登録データとアンケート結果、アップロードされたレシート画像から、利用の多い曜日や時間帯、利用者の年齢層や来店人数などをアプリが自動で集計。次回のキャンペーンや新規の施策に活用することができる。

「1回目のレシ活では、まだ認知度が低かったこともあり、利用者数は3万6,000人ほどでした。しかし、データ集計の結果によると、レシ活の効果で客単価が全体的に上がっていることが確認でき、キャンペーンの手応えを感じられました」。

2回目の実施で反響が高まりさらなる施策の展開にも期待。

1回目の成果を受け、同市は令和4年度もキャンペーンを実施。飲食店を対象としたレシ活チャレンジに加え、原油価格や物価全般の高騰を鑑み、飲食以外の市内小売店やガソリンスタンドを対象とした「レシ活VALUE」の2つを行っている。総額44億円を利用者に還元する計画だ。

2回目開始に向けたリリースは、食料品や日用品の値上がりが報道されていた時期と重なった。「記者発表は1回しか行わなかったのに、複数のテレビニュースや情報番組で取り上げられたことで、大きな反響がありました。結果的に注目度が上がり、前回の2~3倍の利用者が開始早々に集まったのです」。

そのため、当初3カ月間を予定していたレシ活チャレンジは、開始から20日足らずの9月半ばで予算上限に到達したという。「市民の期待感が高まっているように思います。当市としても、この早さでキャンペーンが終了したことはうれしい誤算でした」。

当初の目的通り、短期間でのキャンペーン開始や、決済方法に限定されないポイント還元がかなえられ、2回の実施を通して参加者も増加した同市の事業。また、神奈川県内全域で同時期に実施しているほかのキャッシュレス決済サービスのキャンペーンと併用することができるタイミングで、ポイントが二重に取得可能になる。対象の利用者にとっては、大きくメリットを感じられる仕組みとなった。

一方で、課題も見つかった。スマホを持っていない住民や、アプリのダウンロード操作に慣れていない住民から、“レシートを郵送で受け付けてほしい”といった問い合わせもあったという。「できるだけ多くの人が参加できるよう、レシ活VALUEは郵送申請にも対応することになりました。商店会で、市民向けサポート協力店の募集もしてもらっています」。

今後はアプリの写真投稿機能を活用したキャンペーンの実施も、担当者レベルでは構想しているという。例えば、商店街などにエリアを限定し、周辺を散策しながら写真を投稿すると、商店街の店舗で特典が受けられるなど、来店するきっかけをつくるためのスタンプラリーのような企画だ。

シンプルな機能だからこそ様々な発想に応用ができ、各地域がもつ課題の改善につなげられるだろう。

横浜市 経済局 市民経済労働部
商業振興課 担当係長
髙橋 健太郎(たかはし けんたろう)さん

自治体や参加者の手間を最小限にしたニュートラルで始めやすい仕組み。

「ONE」が自治体に選ばれるポイント

1.レシートデータから動向分析が可能

投稿されたレシートのデータはアプリのシステム内で自動的に集計。利用者の動向を曜日・時間帯・店別などで分析し、今後のキャンペーンや新たな施策に活用できる。

2.累計500万人※が利用するアプリの規模

アプリのダウンロード数は500万※を突破した。ユーザー数の増加に伴い、消費促進キャンペーンなどの効果も自然と大きくなる。レシート買取総数5億枚以上※という収集データの量も精度の高い分析につながる。

※令和4年9月時点、WED調べ

3.事前準備が軽く短期間で始められる

加盟店募集や商品券搬送と販売など、一般的な消費促進キャンペーンの事前準備が不要。自治体は、事業内容の周知だけ行えばいいので、短期間で始められる。

“レシ活”で期待できる経済効果

自治体が直接行うのは消費者へのインセンティブ付与のみだが、それを起点として、地域全体の経済に対して波及効果をねらえる。

開発企業の声
“あたりまえを超える”地域課題の解決を目指します。

ほとんどの人が捨ててしまう“レシート”を活用し、人々の生活をより良くできるのではないか……という発想で生まれたのがこのサービスです。もともとは自治体での展開は想定していなかったのですが、データを軸にして様々な課題が改善できるという点がニーズに合致したと思います。コロナ禍や物価上昇の時勢に、世の中を明るくできるソリューションでありたいです。

開発のきっかけとなった“レシート(購買データ)を有効活用する”という発想は、地域を活性化させるための自治体のキャンペーンにも応用できます。令和3年、札幌市と連携してマイクロツーリズム促進モデルを構築したのを皮切りに、導入実績が伸びていきました。例えば、札幌市や兵庫県新温泉町(しんおんせんちょう)では観光客誘致、横浜市では小売店支援と、自治体の課題に応じてサービス内容をカスタマイズすることが可能です。写真を撮って投稿するという機能を活かし、利用者は気軽にゲーム感覚でキャンペーンに参加できる取り組みです。

弊社の掲げる事業目標は、“あたりまえを超える”こと。これからも、アプリを使った人がワクワクするような仕組みを、各地の自治体と力を合わせてつくり上げたいと考えています。

観光促進キャンペーンでの事例

CASE1:札幌市

札幌市は令和3年11月から翌年2月まで、観光促進策「さっぽろ圏 巡って買って応援キャンペーン」を実施した。10カ所の指定スポット内および圏域3市町村以上の店舗のレシート画像をアップロードすることで、特産品やご当地グッズなどの詰め合わせが当たる、抽選付きフォトラリーだ。レシートに加え、投稿者のオススメスポットの写真もアップすると、プレゼント当選確率が上がる特典を付けた。

CASE2:新温泉町

新温泉町は令和3年8月から同年末まで、「新温泉町おんせん天国フォトラリー~巡って、食べて、豪華賞品を当てよう~produced by ONE」を実施。兵庫県有数の温泉地である同町だが、新型コロナの影響で観光客数が減少し、町内の消費全体が落ち込んでいた。そこで、同町が指定する10カ所のスポットや画像・レシートを撮影することで、特産品が抽選で当たる観光誘致策を行った。

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E-mail:info@wed.company
住所:〒151-0051 東京都渋谷区 千駄ヶ谷4-12-8 SSUビル101
 

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