ジチタイワークス

福岡県大野城市

地方公務員アワード2022を受賞した田中雄大さんにインタビュー!

株式会社ホルグ主宰「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022」で表彰され、さらに本誌の特別協賛社賞を獲得した大野城市の田中さんにインタビュー。

※下記はジチタイワークスVol.22(2022年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

福岡県 大野城市 市民生活部 市税課
主任主事 田中 雄大さん

たなか ゆうだい:東海大学政治経済学部卒業。卒業後、商社に勤務。2014年、福岡県大野城市役所入庁。地域創造部コミュニティ文化課、総務部総務課、市民福祉部市民窓口サービス課、地域創造部ふるさとにぎわい課を歴任。2020年にはコロナ給付金対策のため新設された総務部給付金対策室に配属され、様々な支援事業を遂行した。現在の所属は市民生活部市税課だが、給付金事業には引き続き協力している。

受賞の取り組み

コロナ給付金の担当という重責において、市民や事業者に寄り添った施策を矢継ぎ早に実施。特に令和3年度は給付事業の中心的存在として、国の「住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金」のほか、「新生児子育て応援特別給付金」など6つの独自支援事業を完遂した。人口10万人を超える規模でありながら、前述の非課税世帯への給付では支払いの約8割を3週間ほどで完了。事業の迅速性や正確性、そして熱意にもとづく実行力が評価された。


大胆かつ迅速に行動し、未曽有の事態に公務員の真価を示す。

Q.コロナ給付金の担当になったのはいつですか?

国の「特別定額給付金」を給付するため、“総務部給付金対策室”が発足した令和2年5月からです。当初は7人でしたが、特別定額給付金の状況が落ち着くにつれて、対策室は徐々に縮小。最終的に私が残ることになりました。もともとコロナ前から国の給付金事業を任されていたので、それまでの集大成として、“自分が成果を出す。ほかの人に譲りたくない”という強い思いで臨みました。

Q.事業を迅速に進められた秘訣を教えてください。

とにかく早い給付が求められていたので、時間がかかる外部委託をせず、必要なものは自分でつくることを徹底しました。給付金ごとにシステムを新設すると、時間も費用もかかります。“申請書をもらって振り込む”という基本の業務フローはどれも同じなので、それまでのシステムを転用していくことにしたのです。

市民に配布する申請書や案内書もつくりました。デザインに凝る必要はなく、分かりやすければいい。庁内の高速印刷機を使えば印刷までできます。封入・封かん作業は、40~50人の職員が集まって一斉に作業をしてくれました。広い市議会の議場に申請書や封筒などをずらっと並べて。おかげで2日間で終わりましたが、外部に委託していたら2~3週間はかかっていたと思います。委託をしたのは、少額随意契約が可能だった封筒の印刷だけ。

時間がかかる契約事務を省いたことで、独自支援事業6つと国の支援事業1つを実施することができました。

Q.どうやってマルチタスクを可能にしましたか?

業務効率を上げるため、“こだわるところとこだわらないところ”を明確にしました。例えば、専用システムの仕様などは要件が共通しています。給付金ごとに変える必要のない、つまり“型にはめられるもの”は全て定型化していきました。

また、前年度に行った特別定額給付金の振込データを活用し、毎回ゼロベースでデータを入力する手間もなくしました。事前に振込データを用意しておいて、あとは返送された申請書で変更箇所を確認し、修正するだけにしたのです。

可能な範囲で業務を定型化し、システムやデータを転用することで、作業量を大幅に削減。こうして煩雑な作業を同時に進行することができました。

Q.作業の効率化によるリスクをどう考えていましたか?

間違いがないかなど、チェック作業はアナログ照合で入念に行いました。それでも、外部委託をしなかったことによるリスクはあります。当時は世間の注目度が高かったため、全力でやって失敗したら記者会見でも何でも堂々と出て、自分で謝罪しようと考えていました。

多くの市民や事業者が切羽詰まっている状況だったので、こちらも必死になってやらないと相手に伝わります。市民が一番困っているときこそ、リスクを背負ってでも自分たちが汗を流し、スピーディに対応すべきだと。それが、税金をいただいている自治体の責任と思って取り組みました。

Q.田中さんが提案した「新生児子育て応援特別給付金」について教えてください。

未来ある子どもたちにしっかりお金をかけることが大切だと思い、令和2年度に提案しました。国の特別定額給付金はその年の4月27日までに生まれた子どもが対象だったので、それ以降に生まれた子どもの不公平感をなくしたかったのもあります。このときは、「近隣の自治体で支援策に違いが生じすぎないように意見を交換して、一緒に歩めるところは歩みなさい」という市長の柔軟な方針もあり、大野城市を含む筑紫地区(筑紫野市・春日市・太宰府市・那珂川市)全体で取り組むことになりました。

ただ、次年度も引き続き新生児給付金を支給したのは当市だけでした。そのため子育て世帯の転入が見込めると考えたのです。市外に子ども世帯がいる祖父母に向けて広報紙でアピールしたり、出生届を提出した人に知り合いに勧めてもらうよう頼んだり。おかげで“これがあったから転入した”という声を何件もいただきました。コロナ禍による産み控えがニュースになりましたが、当市の出生数は例年と比べても大きな変動はありませんでした。

Q.今回、この事業で受賞した感想を教えてください。

創刊の頃から読んでいるジチタイワークス賞とのダブル受賞は嬉しかったですね。ただ、自分が特別なことをしたとは思っていません。地方公務員の醍醐味は、まちのために頑張れること。利益を度外視して、まちを育てられるのは自治体だけです。ただし、職員は、市民や事業者がいるから市が保たれていることを忘れてはならない。自治体を支えるのは“人”です。当市は、職員と市民の距離が近く、地域活動への市民の参加率も高い。それゆえ職員も地域へ出て、どういう人が地域のために汗水を流しているのか、どういう活動が地域を盛り上げているのかを知ることが大切です。

私にとって、仕事はお金を稼ぐ手段ではなく、自分が生きた形跡を残すものです。コロナ禍という未曽有の事態において、“これまでとこれから、市を支えていく市民と事業者のため”に、自分は何がしたいのか、自分に何ができるのか。そこが明確だったので、給付金事業をきついと思ったことはありませんでした。むしろ自分のやりたいこととして、楽しんで取り組むことができました。

令和3年度に7つの給付金事業を実施!

“税金は支援を要する幅広い人のために使うべき”との考えから、同市の独自支援は国や県が行う給付金事業の隙間をカバーする形で積極的に展開された。

★は大野城市独自支援

【令和3年4月】
1.社会福祉施設等特別支援金★
(市内の保育施設、障がい者施設、高齢者施設に給付)
2.新生児子育て応援特別給付金★

【令和3年6月】
3.家賃支援金★
4.テイクアウト支援金★

【令和3年10月】
5.中小企業事業継続支援金★
6.感染拡大防止補助金★

【令和4年1月】
7.住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金(国事業)←3週間程で約8割の対象世帯に給付完了!
 

大野城市役所

 

 

 

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