ジチタイワークス

広島県東広島市,大阪府泉佐野市

LPガスによる空調・発電で、避難所の災害レジリエンス(回復力)を高める。

大規模災害において、エネルギー供給の途絶は大きな問題だ。発災後すぐにエネルギーを確保できるかによって、被災者支援の内容も大きく変わる。激甚化する災害から市民を守るエネルギー選択について、泉佐野市長にその手法を学ぶ。また、被災者への食事提供というシーンでLPガスを活用した例として、東広島市の取り組みをピックアップする。

※下記はジチタイワークスVol.22(2022年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]一般社団法人全国LPガス協会、日本LPガス協会

全小・中学校の体育館に空調を!LPガスで実現した避難所対策。

大阪府泉佐野市

泉佐野市 市長
千代松 大耕(ちよまつ ひろやす)さん

台風被害の経験で痛感した、有事に頼れる動力源の必要性。

―4年前の大規模災害をきっかけに、エネルギー対策を見直されたそうですね。

はい、平成30年の9月4日に当市を襲った台風21号です。このときは電柱がなぎ倒され、長期の停電も生じ、市民生活に大きな支障が出ました。それから1カ月も経たないうちに、同規模の勢力をもつ台風24号に襲われることとなり、約800人の市民が体育館に避難しました。9月のまだ暑い時期という厳しい環境の中で、高齢者も多かったことから、避難所として使う体育館の、空調整備の必要性を強く感じたのです。そこで、災害に強い動力源とされているLPガス仕様のGHP(ガスヒートポンプエアコン)を導入することにしました。

電柱・電線が損壊し、大規模な停電が発生した。

―体育館空調の導入は全国的にあまり進んでいない中、思い切った決断だと感じます。

地域の子どもたちの声を取り入れた面もあります。当市では「みらい泉佐野こども議会」を実施しており、その中で中学生から“体育館がとても暑い”という声が出ていたんです。GHP導入の最大のきっかけは台風ですが、こうした声も後押しになっています。

現在は、授業やクラブ活動のほか、卒業式などの学校行事でも空調を活用中です。また、学校開放事業により地域の方々も体育館を利用しているので、快適な環境で活動できると喜ばれています。

LPガス仕様の空調を急ピッチで市内全ての小・中学校に導入。

―台風の翌年には整備を開始、というスピード感がすごいですね。

令和元年度から、市内に18校ある小・中学校の体育館・武道場にGHPと非常用発電機を設置し、教育環境と避難所機能を向上させることができました。被災経験を踏まえて市議会から早期整備の要望も出ており、一丸となれたのがよかったですね。検討から運用開始までの計画や、補助金の活用については、職員が非常に頑張ってくれたと感じています。3年度にわたって6校ずつ設置しましたが、空調設置済みのエリアが集中しないよう工夫し、地域の方々の理解を得ながら進めてくれました。

―新たなエネルギー源の導入にあたり、コスト面の影響はありましたか。

LPガスは高いのでは、というイメージがあったのですが、試算してみると、電力と比較してランニングコストが安いということが判明しました。機器購入費と設置工事費については「エルピーガス振興センター」の補助金を活用できたので、50%の費用が軽減され、これは非常にありがたいと感じています。

これらのコスト要因に加え、分散型エネルギー(下図参照)なので災害に強く、備蓄しても品質的に劣化しにくいというところも評価ポイントです。

発電もできる!災害時でも復旧が早いLPガスの特徴とは。

「LPガス災害バルク」で“72時間の壁”を乗り越える!

LPガス災害バルクは、耐震性や安全性に優れた、災害対応型のLPガス供給システム。炊き出しやお湯の提供に使えるだけでなく、発電機で空調の利用や照明、スマホの充電などに必要な電気をつくることもできる。

災害対策を総合的に強化し市民の暮らしを支える。

―今後、どのような災害対策、まちづくりを目指していますか。

現時点で小・中学校での空調と非常用発電機の整備を終えたところですが、ほかにも公民館など多くの避難所施設があります。そうした施設の空調機器更新時にも、災害時に備えたBCP対策の一環として、引き続きLPガス導入も検討していく予定です。同時に、新しく公表された想定最大規模の高潮・洪水の浸水想定に対し、地域防災計画および避難計画を改定するとともに、ハザードマップを全戸配布するなど、市民と連携した避難体制の確保に努めていきます。

近代資本主義の父である渋沢栄一は、“できるだけ多くの人に、できるだけ多くの幸福を与えるように行動する。それが我々の義務である”と語りました。私が今年3月に発表した市政方針の中でもこれを引用したのですが、当市の目指すまちづくりの根幹を示しています。市民の皆さんの命を守り、暮らしを支えるため、この言葉を胸に今後も職員と力を合わせ、施策に取り組んでいきます。

給食センターのLPガスへの燃料転換で、被災者に安心感を生む。

広島県東広島市

東広島市 生活環境部 環境先進都市推進課
環境先進都市推進統括監
河原 陽介(かわはら ようすけ)さん

エネルギーの途絶が、被災者支援の途絶にならないために。

西日本を中心に甚大な被害を及ぼした平成30年7月豪雨。同市でも土砂崩れや浸水が市全域で発生し、多くの家屋被害や道路の寸断、停電や断水など、これまで経験のない規模の被害となった。

災害に対する早期回復力の必要性を痛感する中、同市は設備更新を目前に控えていた安芸津地域の学校給食センターに着目した。同施設は災害時に炊き出しを行う施設と位置付けられていたが、当時の状況を河原さんはこう語る。「施設が孤立するなどしてエネルギー供給が絶たれた場合、炊き出しによる被災者支援の目的が果たせなくなる状況でした。更新前は灯油を主燃料としていましたが、これを機に、災害に強いエネルギー源を採用することにしたのです」。

選定にあたっては、コスト減やCO2削減も同時に果たせるものを検討。他エネルギーと比較する中でLPガス災害バルクが浮上した。「補助金が使える上、年間約200万円のランニングコスト削減が見込めました。CO2削減効果が期待できる点も大きなメリットです」。こうした経緯で、停電時にも稼働できるLPガス災害バルクと関連設備の導入を決め、令和3年2月に稼働を開始した。

“提案を受ける力”の醸成でベストミックスを生み出す!

この一連の設備は、同市が出資して設立した地域電力会社「東広島スマートエネルギー」が導入しており、この施設のCO2を年間14%削減という目標に対し、実績は14.07%(約24.75t)と、見込み通りの成果を上げているという。

その後、安芸津中学校体育館、福富支所と相次いでLPガス災害バルクとGHPを導入した同市。河原さんは一連の流れを「今回はLPガスを最適解として、新しい選択をすることができました」と振り返りつつ、以下のように総括する。「もちろんエネルギーには個々の強みがあるので、状況に合ったベストミックスが必要です。市としてエネルギー会社を設立し、ガス事業者をはじめ民間の提案を広く受け入れる体制をつくっておいたことがよかった。“提案を受ける力”を高めるための体制づくりは、エネルギー分野に限らず、様々な事業分野で役立つものだと思います」。


 

経済産業省 政策担当者の声
住民の命をつなぐ最後の砦として、
国も期待を寄せるLPガスの有用性。

経済産業省 資源エネルギー庁
資源・燃料部 石油流通課 課長補佐
吉野 賢一(よしの けんいち)さん

分散型エネルギーとしてマルチな強みをもつLPガス。

わが国のエネルギー基本計画においては、LPガスを“最後の砦(とりで)”の一つとして、平時のみならず緊急時のエネルギー供給に貢献する、重要なエネルギー源と位置付けています。LPガスは“分散型エネルギー”であり、可搬性、貯蔵の容易性に利点があります。そのため国として、各地域の主要な充填所の強靱化を行うほか、備蓄体制も整備することにより、災害時における被災地への供給体制の維持も図っています。

自治体における災害レジリエンス向上の取り組みとしては、“電気をつくる方法”を分散して設置することが、有効な手段の一つです。LPガスはボンベでの長期保存が可能であり、備蓄を行うことで、有事の際には非常用発電機や空調設備のエネルギー源となることを期待しています。

自衛的な燃料備蓄のために補助事業の積極的な活用を。

こうした面から、災害時にライフラインの維持が求められる避難所や医療機関などを対象に、LPガス災害バルクや非常用発電機、GHPなどの設置を支援する補助事業を行っています。令和3年度までに1,100件を超える支援をしており、都市ガスの供給エリアであっても、LPガスの有用性に着目し、本事業を活用して設備を導入した事例もあります。

LPガスは、仮に被災しても1戸単位で点検・修理が可能で、復旧が早いのも特徴です。様々なエネルギーの有用性を比較検討する中で、いざというときに活用できるエネルギー源として、LPガスという選択肢をもっていただけることを期待しています。

LPガス災害バルク等導入補助事業の概要

■補助対象施設

❶避難困難者が生じる施設(医療施設、福祉施設など)
❷公的避難所(自治体庁舎、公立学校、公民館、体育館など)
❸一時避難所(地方公共団体が認知した施設)

■補助対象設備

●LPガス災害バルク貯槽またはシリンダー容器
●LPガス発電機(コジェネレーションを含む)
●空調機器(GHPなど)
●燃焼機器(コジェネレーション、炊き出しセット、コンロ、炊飯器、給湯器※ボイラー含む、ガスストーブ、ファンヒーター)
●簡易スタンドユニット

補助条件や設備の詳細は、エルピーガス振興センター(補助事業者)のWEBサイト

災害対策をサポート!

“発電に使えるとは知らなかった”といった声をいただくこともありますが、LPガスは非常に幅広く活用できるエネルギー源です。地域や施設に合わせて提案いたしますので、設備機器構成や補助金の活用など、検討段階からご相談ください。

お問い合わせ

サービス提供元企業

※下記のいずれかにご連絡ください

一般社団法人 全国LPガス協会

TEL:03-3593-3500
住所:〒105-0004 東京都港区新橋1-18-6 共栄火災ビル7F
E-mail:hoangyoumu@japanlpg.or.jp
URL:https://www.japanlpg.or.jp/

 

日本LPガス協会

TEL:03-3503-5741
住所:〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-14-1 郵政福祉琴平ビル4F
E-mail:info@j-lpgas.gr.jp
URL:https://www.j-lpgas.gr.jp/

メールで問い合わせる

記事タイトル
自治体名
部署・役職名
お名前
電話番号
メールアドレス
ご相談内容

ご入力いただきました個人情報は、ジチタイワークス事務局がお預かりし、サービス提供元企業へ共有いたします。
ジチタイワークス事務局は、プライバシー・ポリシーに則り、個人情報を利用いたします。

上記に同意しました

このページをシェアする
  1. TOP
  2. LPガスによる空調・発電で、避難所の災害レジリエンス(回復力)を高める。