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【セミナーレポート】全国PPPセミナー 実践から学ぶ公共施設の包括管理

老朽化が進み、安全確保が叫ばれる公共施設。適切なマネジメントの重要性が高まる中、公共施設の包括管理の導入事例が年々増えてきています。

今回のセミナーでは、包括管理を導入する3つの自治体から担当者が登壇。寺沢 弘樹氏(合同会社まちみらい)も加わり、自治体が抱える現実と包括管理の効果、今後の展望などを語ってもらいました。

概要

□タイトル:全国PPPセミナー 実践から学ぶ公共施設の包括管理
□実施日: 2022年7月8日(金)
□参加対象:自治体職員
□開催形式:デザイン・クリエイティブセンター神戸「KIITO」より、オンライン(Zoom)でライブ配信
□プログラム
Program01:改めて「正しく学ぶ」公共施設の包括管理
Program02:包括管理を実践する自治体職員が語る!
Program03:気になる!包括管理の疑問!


改めて「正しく学ぶ」公共施設の包括管理

包括管理のメリットは様々な場所で語られているが、導入に二の足を踏む自治体も多いだろう。そこにはどんな誤解があり、職員はどのようにマインドセットを行えばいいのか。「合同会社まちみらい」の寺沢さんが、鋭い舌鋒で現実を語りつつ、課題解決に向けた道を提示する。

<講師>

合同会社まちみらい
寺沢 弘樹(てらさわ ひろき)氏

プロフィール

1975年静岡県清水市(現静岡市)生まれ。2001年流山市役所入庁。建築・企画・教育委員会・都市計画部門を経て財産活用課で公共FMを推進。初代FM推進室長・2016年流山市役所退職。同年、日本PFI・PPP協会業務部長。常総市等のアドバイザー、湖西市等の包括施設管理業務の支援など。2021年から現職。徳島市・久米島町等のアドバイザー。主な著書に『PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本』。

 

見た目の数字に惑わされず、包括管理がもたらす真の効果を見極めよう。

私が伝える内容の軸は、「“ザ・公共施設マネジメント”から脱却しよう」です。“ザ・公共施設マネジメント”とは、とにかく量を減らせばいいという考え方で、これではうまくいかない。脱却するために大事なことは以下の3つです。

(1)負債を資産化していく
(2)まちを再編していく
(3)まちの新陳代謝を促していく

ここで職員の皆さんに求められるのは、“覚悟と決断と行動”。テクニカルな要素は必要ありません。そして、今回のテーマである「包括施設管理業務委託(以下、包括管理)」。これが公共施設マネジメント(以下、公共FM)の第一歩になります。この包括管理を真面目に進めたまちは、いずれ「包括ごとき」という言葉で語れるようになります。

今、いろんなまちが包括管理を始めています。しかし大抵は、従来よりも見かけ上の契約額が大きくなります。本来ならスケールメリットを生みそうですが、実際は予算の不合理なシーリングや、地元事業者との破格の契約など、様々な事情がある。それを適正な水準に戻し、さらに職員が行っていた業務の人件費も金額として可視化されるため、“見かけ上は”高くなるのです。この誤解で真のメリットが見えづらくなります。

メリットの例として、私が務めていた千葉県流山市では、施設の月例報告が包括管理事業者からファイルで届けられていました。各施設の問題が写真付の報告書で来るので、状況は手に取るように把握できます。こうしたデータの集約化も大事です。

また、施設でトラブルが発生した際、包括導入以前は何人もの人が関わる複雑な対応フローになっていましたが、包括管理下ではコールセンター経由の連絡でプロのスタッフが現場に急行し、すぐに応急処置がされます。これら一部だけを見ても包括の意義が見える。この事例はプロトタイプで、ほかの地域ではさらに進化しています。

例えば射水市では、先行事例を徹底分析し、自分たちの状況にあわせて再構成しながら包括管理を進めています。さらに、包括事業者を選定する際「仕様書に規定する業務以外で追加があれば記入」と促している。この配点が結構大きく、実際に採用されたのは「公共FM全般の支援をする」というものでした。包括管理だけでなく、公共FMの支援業務まで手に入れたというパターンです。

また、ハコモノ以外に展開する自治体もあらわれています。広島県府中市では、一部エリアの道路の舗装や、街路樹、カーブミラーなど、行政的には複数の分野にまたがるインフラ系の施設をまとめて包括委託しました。今ではさらに拡大し、市全域を3つに区分して包括委託しています。

 

クリエイティブをキーワードに、将来への課題に立ち向かう!

ここで、少し先の世界も見ていきましょう。

上図は山口県山陽小野田市です。同市は商工センターの建て替えをしたいと考えたのですが、財源がない。でも土地・建物は持っている。そこで「土地を出資します。民間は土地の評価額に見合う金額を出資してください。両者で建て替えに加えて色々なプロジェクトをやりましょう」と動いた。これは“LABV (Local Asset Backed Vehicle)”と呼ばれるもので、行政が持つ土地の可能性を示してくれます。

こうしたプロジェクトに共通しているのは、職員のマインドが“クリエイティブ”だということ。包括管理の導入で壁にぶち当たっても、そこで思考停止するのではなく、どうすれば実現できるのかということを自分たちの頭で考えて形にしていく。そこにこそクリエイティブというものがあります。

こうした“覚悟と決断と行動”を伴った職員にとっては、結果として「包括ごとき」になるんです。包括管理で立ち止まっているようでは、将来への課題に立ち向かっていけない。過去から今日まで大人がつくってきた問題は、今の大人がケリをつけていくしかない。公共FMはそのための取り組みだといえます。

包括管理を実践する自治体職員が語る!

包括管理はようやく広がり始めた取り組みだ。前例も決して多くはないが、すでに着手している自治体の担当者は「メリットは大きい」と口を揃える。具体的にどのような効果が得られたのか、また地域による手法の差はあるのか。ここからは3自治体の職員がそれぞれの取り組みの内容を紹介しつつ、包括管理導入へのアドバイスも提供する。

 

神戸市の事例

<講師>

神戸市教育委員会事務局
学校環境整備課長
近藤 仁憲 氏

プロフィール

こども家庭局、区役所などを経て、2019年に教育委員会事務局学校環境整備課に異動。学校園再編を担当し、2021年より学校園施設の管理を担当している。学校園および事務局の負担軽減などを目的とする、約300校園を対象とした学校園施設包括管理業務委託の導入や照明のLED化・自動水栓化などを推進している。


神戸市では、市立学校園の約60%以上が築40年を経過しており、50年以上のものも約25%。昨年度の修繕件数は約1,500件でした。長寿命化改良工事が必要な件数も増えています。

こうした背景により、学校園では日々の点検業務に追われ、先生方は専門知識がない中で修繕対応を迫られていました。負担は大きく、教育活動に専念できません。また、教委事務局でも長寿命化改良などを計画的に行わなければならないのですが、限られたマンパワーの中ではなかなか進まない。

そこで、学校園、教委事務局双方の業務負担を減らしつつ、学校園の安全管理を効果的かつ効率的に進めていく方法を検討し、行き着いたのが民間事業者による包括管理でした。

私たちは、上図の3点を期待する効果として、包括管理の検討を進めました。実際に導入するまでの大まかなスケジュールは以下の通りです。

当市の包括管理は令和4年4月から本格的に開始したので、まだ始まったばかりですが、これまでに感じた効果についてお話しします。

まず学校園では、電話1本で修繕の依頼ができるようになったので、見積もり合わせや申請書の作成業務がなくなり、「負担がとても軽くなった」といった生の声を聞くことができました。私たち学校環境整備課の職員も人員を削減でき、減らした中でも長寿命化改良など本来取り組まなくてはならない計画的な修繕に注力できるようになりました。

また、事業者による安全パトロールなどは、これまで以上にきめ細かな点検ができており、トラブルの未然防止につながっています。各学校園も、建物管理のプロの視点で点検していることから、安心感が高まったと感じています。包括管理事業者の管理センターは24時間365日対応となっており、休日窓口もあるので、以前より対応がはるかに迅速になっています。

今後はさらに学校園の安全に努めていくことを念頭に、修繕の必要性・緊急性に考慮してもらった上で管理センターに連絡するということを働きかけていきたい。また、当市では2社に包括管理を委託しているので、定期的な意見交換会議などを行い品質の均一化も目指します。その上で、学校園へのアンケート調査などを通じて、現場の反応も継続的に把握していきたいと考えています。そうした評価を確認しながら内容を包括管理事業者にもフィードバックし、より良い体制をつくることが目標です。

 

芦屋市の事例

<講師>

兵庫県 芦屋市
企画部 マネジメント推進課長
島津 久夫 氏

プロフィール

建築指導課、施設政策や総合政策担当として課長職を務め、現在はマネジメント推進課で課長を務める。指定管理者制度の総合調整、包括管理業務の導入、施設更新に係るランク付け、廃止施設のリノベーションによるエリアマネジメント等を実践し、市の計画にもとづく公共施設最適化構想やその他、外部講演やふるさと財団の「公民連携アドバイザー」を務めるなど、多くの活動に取り組んでいる。


私は平成29年に今の部署に配属され、大きく2つの方針を立てました。まず、行政規模に見合った施設総量となるよう、公共施設の最適配置を進めること。それと並行して、地域のエリアマネジメントもしながら最適配置を進めること。もう1つが、“官民に捉われない施設の効率的な運営”。包括管理の導入や、指定管理者制度の見直しなどです。それを踏まえ、当市の公共施設のあり方や、維持管理の方法を改めようと考えました。

当市の施設は238あり、包括管理の導入前は指定管理施設が68、残りが直営だったのですが、平成30年5月に所管課を集め、今後は原則として指定管理施設か包括管理施設のどちらかにしてもらうと伝えました。

同時に、施設の更新にかかる査定の方法の変更も伝えました。新しい方法ではA・B・Cの区分として、130万未満の非特定工事、特定工事や建替え等に分類。B区分を対象に施設マネジメント会議を設置し、営繕部局、財政部局、FM部局がヒアリングをして点数をつけ、査定を進めました。A区分で包括管理下に入るものは包括事業者に任せる、C区分は副市長を座長とした戦略会議などで当該施設をどうするか抜本的な議論を元に方向性を決めることにしました。

ちなみに当市では、包括管理に修繕も入れています。また、導入方法にも他都市と異なる点があり、基本的には予算枠の中で包括事業者の判断に委ねる考え方をしています。また、予算のつけ方も1部局にまとめて包括の予算をもつとか、当市のように各課で従来通りの予算をもち、契約だけ1本化するなど、手法は様々。こうしたやり方には、メリットとデメリットの両面がありますので、各地域のローカルルールに合わせていくと良いと思います。

さらに、施設更新の査定に力を入れているので、そうした業務に沿うように、包括管理で実施している巡回点検で使う点検のチェックリストは“すぐに対応が必要”“来年度対応が必要”“それ以降の対応でよい”の3つに分けています。理由としては、すぐに対応が必要なものは包括管理の対象なのでその判断材料とし、予算の査定で、市の営繕部局などが来年やらないといけないものを決める必要があるので、来年の対応が必要かそれ以降でOKかが分かるように、と依頼しています。

私は、「包括管理の導入は行政改革だ」と思っています。包括を導入しようとして上手く進まないのは、縦割りや、既得権益、前例主義などが邪魔していることが多い。その際に「これは行革だ」と考えると、行政改革の定義にある「行政制度、行政組織又は行政運営を時代の要請に応じて適切に改めていく」という必要性が理解できます。単にバラバラなものをまとめて発注するという考えだけでは良いものにならないので、行政改革を進める中で、様々な障壁にぶつかりながら、それらを1つずつ解決していくといった考え方で進めるのが包括管理成功の道だと思います。

 

明石市の事例

<講師>

兵庫県 明石市
総務局財務室財務担当 保全計画担当係長
藤岡 宗隆 氏

プロフィール

下水道事業、建築行政を担当後、営繕部門で保全業務にも携わる。2020年財務担当に異動後、保全計画を担当。建物の長寿命化、安全性の確保および財政負担の平準化に取り組み、施設保全ガイドラインを策定。2022年度は包括管理業務委託第2期の公募に取り組んでいる。


明石市では、平成30年度に学校施設などから開始した包括管理を年度ごとに拡大し、今年は最終年度です。第2期は建て替え計画中の本庁舎も追加し、期間中の対象範囲の変更も見込んでいます。下図が当市の実施体制の概要です。

包括導入後の施設の満足度も年々高まっています。3年目および4年目には、「良くなった」「少し良くなった」を合わせると約9割です。ただし、単に迅速な対応だけで満足度が高まったわけではありません。様々な面で施設の現場を良くするというスタンスを貫いたことが結果につながったと考えています。

上記は、学校のプールに関する事例です。この小学校は明石海峡大橋の見える散歩道に面しているため、目隠しフェンスを設置してもらいたいと依頼がありました。しかし、目隠しフェンスはコストが高い上、強風による倒壊のおそれもあります。そこで、歩行者の目線の高さに防砂ネットを取りつけることを提案、実施しました。

この対応で歩行者の目線を遮る十分な効果があり、強風が予想される際やプール開設期間終了後は学校側でネットを取り外して保管することで、安全性が保たれネットも長持ちします。こうした柔軟な対応を可能にしているのが“内製化”、つまり受託者が行う修繕です。ちなみに、年間の修繕は約1,700件ですが、そのうちの約30%を内製化しています。しかし、支払金額は全体の3%程度です。内製化によって安価に柔軟に対応できていることがお分かりいただけるかと思います。

次に、組織の縦割りを超えて対応した事例を紹介します。

明石市では古くから小学校区単位のまちづくりが進められ、ほぼ全ての小学校の敷地に幼稚園、児童クラブ、コミュニティセンターが集約されています。ただ、以前は施設の所管課がバラバラだったのですが、包括管理で一体管理ができるようになりました。

写真の体育館は、床が老朽化で割れて危険な状況でした。しかし張り替えには1千万円ほど必要です。そこで、130万程度で実施できる部分改修と床研磨を提案しました。それでも小学校の修繕費のみで実施するのは高額でしたが、体育館を共有している小学校とコミセンそれぞれの包括修繕費と、小学校に配当されている修繕予算で実施することができました。包括導入の効果です。

このように、包括管理は仕組みだけを考えるのではなく、いかに工夫して運用していくかが重要です。当市の包括管理が満足度調査で高評価を得ているのは、迅速かつ柔軟な対応と、現場に寄り添う姿勢、所管課・施設所管者・協力会社による連携など、気持ちを込めて実施しているからです。

皆さんもそれぞれの方法で、気持ちが入った包括管理を進めていきましょう。

気になる!包括管理の疑問! トークセッション

ここからは、高砂市公共施設マネジメント室の古賀氏が加わり、5名でのトークセッションを実施。公共FMに関する互いの意見を交換した。



続きは日本管財(株)が運営する「公共FMサロン」にて。加入ご希望の方は下記問い合わせ先よりご登録ください。Facebookページでも公共施設マネジメントの「今」を発信中です。

参加者募集中|全国各地の職員が集まる「公共FMサロン」

日本管財(株)では、2021年2月より自治体職員限定のオンラインサロン「公共FMサロン」を開設しています。会員数は115自治体、延べ141人(令和4年8月1日時点)。公共FMに関わる人が、自らのまちの活動や問題、熱意などを共有し、実践知を学び合うことで、FMの実践へとつなげていくサロンです。複数のパートナー専門家やサロン会員の他自治体職員と気軽に意見交換ができる場となっています。参加は無料です。皆さまのご参加をお待ちしています!

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TEL:03-5299-0851
住所:〒103-0027 東京都中央区日本橋2-1-10 柳屋ビルディング5F
E-mail:eigyo_market@nkanzai.co.jp
担当:営業統轄本部マーケティング推進部 恒川・島田

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