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【セミナーレポート】学校の働き方改革はここがポイント! 教育現場に“安心・迅速・確実”をもたらす連絡手段のデジタル化。

教育現場の労働環境改善が叫ばれる昨今。特にコロナ禍では、アナログ対応にまつわる課題が露わになりました。対策には何から着手すればいいのでしょうか。

このセミナーでは、文科省、ベンダー、自治体から知見を有する担当者が登壇。教育へのICT導入について語っていただきました。働き方改革のヒントが満載です!

概要

□タイトル:デジタル化で叶える教育現場の働き方改革 ~学校・保護者間の円滑な連携が業務効率化の鍵を握る~
□実施日:2022年6月27日(月)
□参加対象:自治体職員
□開催形式:オンライン(Zoom)
□申込者数:91人
□プログラム:
 第1部:連絡手段のデジタル化と働き方改革について
 第2部:導入事例に学ぶ連絡手段のデジタル化の効果
 第3部:教育現場の業務負担削減に繋がる保護者との効率的な連絡方法


連絡手段のデジタル化と働き方改革について

教育の領域で働き方改革を推進するには、行政全体での意思統一が不可欠だ。セミナーの第1部では、文部科学省の初等中等教育担当者が、国としての方針を改めて解説しつつ、デジタル活用のヒントを共有してくれた。

<講師>

窪田 徹 氏
文部科学省 初等中等教育局 財務課 校務調整係長

プロフィール

平成21年4月 文部科学省入省
平成28年4月 生涯学習政策局情報教育課
平成30年10月 初等中等教育局情報教育・外国語教育課
令和4年4月 初等中等教育局財務課 校務調整係長


長時間勤務を削減するために示された“3つの分類”

まず公立学校における働き方改革の概要について簡単に説明します。

文科省では、平成28年度に教師の勤務実態調査を実施しました。その結果を10年前と比較したところ、副校長・教頭、教諭の両職種で、小・中学校問わず学内勤務時間が増加していることが明らかになりました。同時に、教師たちの授業時間も増えているという結果が出ています。

こうした状況に対して文科省は、勤務時間の上限を定めるガイドラインの策定や、変形労働時間制に関する法令の改正などを行いました。また、個別の取り組みでは、少人数学級や教科担任制の推進、支援スタッフの配置支援などを実施しています。これらの活動においては、“自治体や学校における改革サイクルの確立”がポイントです。そのため、調査などを通じて、各教育委員会や学校の取り組み状況を可視化し、改革推進を促しています。

上記は、前述の取り組み状況調査の概要です。平成30年度以降、月に45時間以上の時間外勤務をしている教師の割合は改善傾向にありますが、依然として長時間勤務が多いというのも事実。この対策をする上で、文科省では学校業務を下図の3つに分類し、学校や教育委員会にはこれらを踏まえて業務分担、取り組みを推進していただいている状況です。

まずはあらゆる手立てを講じる!その中で“鍵”となるICTの活用

ここからは、連絡手段のデジタル化について説明します。

学校における働き方改革は、何か1つのことをやれば良いというものではありません。文科省では、令和4年1月に学校の働き方改革で取り組むべき事項として通知を出した際、以下の7項目を挙げています。

①勤務時間管理の徹底等について
②働き方改革に係る取組状況の公表等について
③学校及び教師が担う業務の役割分担・適正化について
④学校行事の精選や見直し等について
⑤ICTを活用した校務効率化について
⑥教員業務支援員(スクール・サポート・スタッフ)について
⑦部活動について

つまり、これらの手立てを講じて、教師が“教師でないとできない業務”に全力投球できる環境を整備することが必要なのです。連絡手段のデジタル化も、その中の1つという位置付けになります。

この連絡手段のデジタル化推進については、令和2年10月に文科省から通知を出しています。以下がその抜粋です。

赤文字の箇所が特に重要な部分ですが、ほかにも“効率的な情報伝達手段を検討”とあるのは、活用できるシステム・ツールを最大限使っていただくという趣旨です。とはいえ、学校の環境などの違いで、できること・できないことがあります。そこで、環境が整うまでは、各学校の整備状況に応じて可能な部分から順次進めていただきたいと考えています。また、最後に記していますが、デジタル環境への対応が難しい家庭もあります。こういう場合は書面による手続きの余地を残すなどの配慮をお願いしています。

続いて、連絡手段のデジタル化におけるビフォー・アフターのイメージです。

現場で“目的の共有”を行いより充実した教育の実現へ!

例えば宿泊体験学習の周知をする場合、ビフォー図1~8のような手順になるかと思います。このプロセスをたどる中で、時に紙の紛失や伝達ミスが起きます。加えて、最後には教師による手集計・手入力が必要です。

これがアフターになると、標準的なソフトで簡易にアンケートフォームを作成でき、それを二次元コードなどで配信。家庭ではスマホ・PCで回答し、その結果は自動集計されて先生の手間が軽減される、ということが想定されます。

また、欠席・遅刻連絡のオンライン化というものもあります。現在でも連絡帳の手渡しや、職員室への電話連絡といった方法で対応している所もありますが、アンケートフォームに移行すると、教師は電話番などの負担から解放され、欠席・遅刻などの確認がより簡単になります。

ほか、お便りもメールなどで配信できれば、印刷・配布の手間が省け、保護者もじかに受け取れる上、月間予定表などを端末から簡単に閲覧することができると考えられます。

こうした校務のICT活用や連絡手段のデジタル化を進める際には、ICTがはやりだから・効率的らしいから、というような感覚ではなく、何をするためにデジタルで効率化を図るのかについて議論し、関係者で共有することが大切です。より早く授業研究を始めたい・今までよりも早く帰宅して心身リフレッシュし、翌日以降の子どもたちとの関わりを充実させたい、など、目的を共有しておくことがポイントだといえます。

ちなみに、文科省のホームページには、学校の皆さんの協力の上でまとめた、働き方改革に関する事例集があります。Web上では非常に見やすいものになっており、連絡手段のデジタル化に関する取り組みも含まれているので、ぜひご覧いただければと思います。

導入事例に学ぶ連絡手段のデジタル化の効果

学校におけるデジタル化推進は今や必須事項だが、教育委員会、教職員、保護者、児童生徒の全てに関わるものだけに、ツールの選定も難しい。全国で広く支持されるツールにはどんなポイントがあるのか。バイザーの藤田氏が事例をもとに語る。

<講師>

藤田 和利 氏
バイザー株式会社 営業部

プロフィール

2020年7月「すぐーる」のリリース以降、全国の自治体営業を担当


学校、家庭、部活動、地域…と関係先を1システムでカバー。

窪田さんが話された通り、教育分野での働き方改革は何か1つやればいいという訳ではなく、様々な取り組みを通して結果を生み出す必要があります。そこで当社からは、ICTを活用した情報配信の観点でお話ししたいと思います。

まずバイザー株式会社について。当社は15年以上、情報配信に特化して自治体と向き合ってきた会社です。住民向けや職員参集、学校などを対象に情報配信システムを提供しています。中でも、教育委員会では学校向けの双方向連絡システム「すぐーる」とメール配信システムを合わせて約300件の導入実績があります。

上図がすぐーるの全体像です。一昨年、文科省から出された通知文の内容を踏襲し、学校や部活動、地域の協力者を一元化した仕組みになっています。学校ごとに様々な配信グループ(チャネル)を作成すれば、保護者はそちらに登録をして情報の配信を受け取ることが可能。受信方法も、メールもしくはアプリのどちらかを選択できる仕様です。

次に教育委員会における活用イメージです。

本サービスは、教育委員会で一元化して入れて頂くことが前提です。教育委員会では、運用状況の確認や、管轄する保護者に対する一斉配信ができます。また、地域の協力者へ向けた情報配信や、協力者から保護者への情報配信も可能です。文科省の資料でも言及されている“教職員でなくてもできる仕事”は、このシステムによって該当者に権限を与え、必要な部分を担っていただけるようになっています。

以下が、すぐーるの主な特徴です。

教育現場では、日々情報配信や保護者アンケートなどを行っていますが、それらの業務ごとにシステムやツールを導入すると、おのずと管理作業が増え、教職員の負担も確実に増えます。それに対し、当社では情報配信だけでなく、アンケートや欠席連絡などを1つにまとめた方が有益だと考えています。以下、事例を含めて紹介します。

教育委員会による一括導入で学校の規模による格差をなくす。

学校から保護者への連絡に学校独自のメールを使用する場合、迷惑メール扱いになって保護者に届かないことがあります。また、コロナ禍で学校閉鎖になった際、連絡が全員に届かないと困るということで全保護者に架電したというケースや、緊急連絡に関しては学校で印刷して手配布を行った、というところもありました。

こうした場合、すぐーるであればメールとアプリの両方で受け取れるので、仮に迷惑メール扱いになってもアプリで受信でき、素早く確実な伝達を実現します。既読の確認機能もあり、未読になっている保護者だけをピックアップして架電することも可能。さらに一斉配信の機能も備えています。

アンケート機能に関しても、システムが自動集計するので作業時間が激減します。また、直接配信ができることで既読の確率アップや、より多くの情報収集に貢献。こうして集めたリアルな情報が学校の発展に寄与する、という効果が期待できるのです。

こうしたシステムの導入は「各学校に任せている」というケースもあります。しかしその場合、生徒数が多い学校はPTA会費も多いので相応のシステムが入れられますが、そうでない学校だと経費が限られるため、やむを得ず無料のメールサービスを使って、欠席連絡は電話で…といったように、システムが増えたり対応が煩雑になったりする事例もあります。これに対し、教育委員会が窓口になり一括での導入を進めると、公平性を保つことができます。教職員が異動した際にも同じシステムなので安心です。

ちなみに、すぐーるでは教職員間の情報共有も可能です。グループを“職員”で作成すると、校長・教頭が情報を配信し、教職員が情報を受け取る流れが構築できます。さらに保護者に送る情報もこのグループに同時配信できます。

では、本サービスを導入した場合どういった効果が期待できるのか、事例をまじえて説明します。まず、お便りのデジタル化をしたケースですが、最も実感されているのが“紙の削減”です。また、すぐーるのアンケート機能については、“集計作業の効率化”では96%が向上、“配布・回収の効率化”、“回収率”においても以下のような結果で、非常に高い効果を感じていただいています。


 
なお、キャッシュレス・ペーパーレス化という面で、ECサイトと連携するサービスも拡張機能としてシステムの中に備えています。例えば、学校での学用品の封筒販売、写真の展示販売、制服の採寸会など現金の授受が発生するようなシーンで、紛失などのリスクを避け、手間を削減するものです。これも学校現場での働き方改革に資するものだと考えております。

以上、連絡手段のデジタル化について、開発元の視点から事例や効果をお伝えしました。紹介しきれなかった機能もありますので、興味をもたれた方はぜひお問い合わせください。

教育現場の業務負担削減に繋がる保護者との効率的な連絡方法

第3部は教育委員会での導入事例紹介。令和3年度から連絡手段をデジタル化した三原市ではどのような導入効果が生まれたのか。学校教育課指導主事の松本氏が、4つの事例にわけてそのメリットを語ってくれた。

<講師>

松本 大裕 氏
三原市 教育委員会 学校教育課 指導主事

プロフィール

平成19年4月 広島県尾道市立公立中学校に採用
平成31年4月 三原市教育委員会へ異動
令和2年4月より情報教育担当


学校の配布物も、保護者の連絡も双方向システムでスムーズ化!

当市では、すぐーるを令和3年4月より導入しています。導入当初は、学校や保護者への周知や、登録の仕方をどう説明するか、多様な機能をどう活用するのかなど、多くの課題がありました。しかし、導入して約1年が経過した今では、すぐーるがない状況は考えられないというほど、どの学校でも頻繁に活用されています。

そこで、具体的にどのような活用をしているのか、4つの事例から説明していきます。

1つ目は“配布物のデジタル化”です。これによる学校側のメリットは、まず“印刷や配布の時間を削減できた”という点。学校からの配布物は多岐にわたり、印刷や配布の作業には相応の時間がかかります。これがなくなることで業務改善につながりました。具体的には、帰りの会での時間に余裕ができ、子どもたちと1日の振り返りや簡単なレクリエーションを行うことが可能になった。というようなもので、かつ用紙やトナーの削減につながり、費用面でも貢献しています。

また、“情報を保護者へ確実に、即座に届けることができる”というメリットも大きいです。1つの配布物を全家庭に確実に届けるのは労力が必要ですが、すぐーるを利用することでそれが可能になり、学校と家庭との信頼関係にも繋がっています。また、即時性という面では、不審者情報などを速やかに知らせることもできます。コロナ禍において突発的な対応を迫られた場面でも、すぐーるを活用することでスムーズな連携や情報の共有ができました。

ちなみに当市では、学校教育課だけでなく子育て支援課もすぐーるを利用できるので、放課後児童クラブからの情報を発信することも可能になっています。

2つ目の事例は、“欠席・遅刻連絡のデジタル化”です。三原市では、すぐーるの導入当初はこの機能は使っていませんでしたが、コロナ禍で欠席が急増したことや、学校の働き方改革推進などを勘案し、欠席や遅刻の連絡をすぐーるで行うことにしました。これにより、毎朝7時半から8時過ぎまで鳴り続けていた学校の電話はピタリと鳴らなくなり、教員は始業前の授業準備などに集中できるようになっています。

また、電話でのやりとりでは、その後の伝達や記録に時間がかかったり、ミスが起きたりしていたのですが、欠席者や遅刻者の情報を一括でダウンロードできるので、確実な情報を残すことができ、共有も簡単になりました。

教員経験者だから分かる「すぐーる」の高い利便性。

3つ目の事例は“健康連絡帳”の機能。これはコロナ禍で非常に有用です。現在学校では、発熱・風邪症状のある子どもや、同居人に体調不良がある子どもは登校できません。それを把握するため、従来は子ども一人ひとりに健康観察カードを配布し、朝の体温、咳、鼻水、同居人の体調などを記入の上、提出させていました。

もし体調が悪い子どもがいたら、すぐに発見し下校させるため、この観察カードを校門や靴箱の前で確認・回収し、帰りの会で返却するという作業を学校では毎日実施。そのため多くの学校では、登校時に校門の前で列をつくっている子どもの姿がありました。これでは密になり、感染リスクが高い状況です。しかし、すぐーるの健康連絡帳機能を活用することで、この業務はなくなりました。

保護者は子どもが登校する前にスマホで健康連絡をするだけです。体温を入力し、いくつかの項目をクリックするだけなので1分もかかりません。学校は保護者が送信したデータをすぐに確認でき、早期の発見や経過観察が可能になりました。また、記録を蓄積でき、いつでも確認できるので、何かあったときの対応も確実にできるようになりました。今では、校門の前で整列している子どもの姿はありません。

4つ目は“アンケート機能”です。この半年にすぐーるで配信されたアンケートは、ワクチン接種の希望・PTA草刈り作業への参加・タブレットのパスワードの確認などで、内容も多岐にわたっています。

私は4年前まで中学校で教員をしていましたが、アンケートは非常に大変な業務です。全員から回答を回収するために、何度も子どもへ声をかけ、保護者に電話をし、欠席者の家に通い…と、大変だった記憶しかありません。しかも回収後には手間のかかる集約・分析作業が待っていました。

こうした悩みを解決するのがアンケート機能で、保護者はスマホさえあれば、いつでもどこでも回答可能。後で見直して修正することもできます。学校側はアンケートの作成が簡単になり、集計作業もすぐに完了。業務はかなり軽減されています。

以上、4つの事例について話しましたが、当市においてすぐーるは、学校の業務改善や、保護者とのスムーズで確実な連携の一助となっています。これからもさらに効果的な活用などを考え、教員の業務改善につなげていきたいと考えています。

最後に、このすぐーるに対する感想として、「私が中学校にいるときに、あればよかったな」という言葉で締めさせていただきます。

 

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