近年、様々なドローン活用法が考案されており、災害時の状況確認を目的に導入を検討する自治体も増えているそうだ。そうした中で神石高原町は令和4年4月、ドローンフィールド2カ所を正式オープン。自治体や企業に施設利用を呼びかけている。
※下記はジチタイワークスVol.20(2022年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]神石高原町
豪雨災害を機に検討を開始したドローンによる被災状況確認。
中国地方に甚大な被害をもたらした、平成30年7月豪雨。広島県北東部に位置する同町でも、計1,307カ所の土砂災害が発生して35路線の道路が通行止めとなり、3集落が孤立状態に陥った。
「本町は、約400㎢もの広さに対して、常駐の消防駐在員が10人前後しかいません。そのため、住民からの連絡が次々と入ってくるものの、消防隊は負傷者の救急搬送などへの対応が優先業務となり、一般職員だけで迅速に被害状況を把握するのは困難でした」と、被災当時を振り返る中野さん。その後、NIED(防災科学技術研究所)主催のセミナーで、ドローンによる被災箇所確認手法の情報を入手。「ドローンを活用すれば、職員だけでなく住民と協働で被災状況の情報共有ができると知り、導入に向けた本格的な検討がスタートしました」。
幸い町内には、航空法に抵触することなくドローンを飛ばせる広大な土地があった。そこで令和元年秋、「パーソルプロセス&テクノロジー(以下、パーソルP&T)」ほか民間企業数社と合同で、「神石高原町ドローンコンソーシアム」を設立。ドローンの社会実装と活用推進を目指す取り組みを開始した。
“安心して暮らせるまち”を積極的な住民有志が支える。
最初に取り組んだのが、地域における“活動の担い手”の育成だ。まず、消防団員や自治会役員、地元企業社員らの有志が、ドローンスクールで操縦士の資格を取得。その後、災害時のドローン活用ノウハウをもつパーソルP&Tが、“災害状況下でも安全に運航させる方法”や“被災現場の写真を撮影するための飛行設定”などをカリキュラム化し、座学と飛行演習を組み合わせた災害対応講習を実施した。
現在までに20~60代の住民13人が、同町のスローガンである「安心して幸せに暮らせるまちづくり」を目指す“担い手”メンバーとして参加。「住民の皆さんが、自ら進んで参加してくれている点が重要です。大雨の後に、ドローンを使った状況確認や行方不明者の捜索にもボランティアで参加してもらっています」。
令和2年夏には近隣の福山市や府中市にも声をかけ、ドローン活用の体験会を開催。同町職員を含む約50人が参加し、実際に機体を操作しながら搭載カメラによる画像を確認することで、災害時対応だけでなく様々なドローン活用法が提案されたという。
ドローン活用推進拠点としてフィールド2カ所をオープン。
同町は令和4年4月1日、町内の南北にある2カ所のドローンフィールドを、ドローン事業者や自治体向けの体験および実証実験施設として正式オープンした。1時間当たり1,000円で貸し出し、利用期間は時間単位から1日単位、月単位まで相談可能。いずれのフィールドも、広いだけではなく起伏に富んでいるので、より現実的な実証実験に取り組める。
同社の担当者も「駐車場がフィールドのすぐ近くにあるので、機材などを運ぶ際に便利。充電設備や飲食施設など、長時間滞在に必要な設備が整っている点も、私たち事業者にとってうれしいポイントです」と評価する。
地域を挙げて担い手を育て、ドローン活用を進めている“モデルケース”でもある同町。中野さんは、「体験会では、農地パトロール、有害鳥獣の駆除、“買い物弱者”への食料品宅配など様々な活用アイデアが出ましたが、各自治体がバラバラにやっていては非効率です。それぞれが実現させたいドローン活用法を、まず本町のフィールドで実証実験し、そのノウハウを本町から水平展開する、“ドローン活用推進拠点”として運営する計画です」と、ドローンを通して地域内外が協働する未来を見据えている。
神石高原町 未来創造課 デジタル推進室
主査 中野 達也(なかの たつや)さん
実践的なフィールドだからこそ、ドローン活用の可能性が広がる。
企業による実験や住民・自治体向け体験会の事例
すでに複数の実証実験や体験会を実施。企業2社が防災ドローンを活用した救援物資輸送や、鳥獣による掘り起こしを夜間に撮影する検証などを行った。また、“担い手”として活動する住民への防災教育や、近隣市の職員らを集めた体験会も。実際に機体を飛ばしてみることで、橋脚の老朽化チェックや空き家の管理など、様々な活用アイデアが提案された。
参加実績
●実証実験:スカイシーカー、センチュリーなど
●体験会:福山市、福山地区消防組合、府中市
内容の濃い実証実験が可能な好環境
1.航空法の縛りを受けない自由なフィールド
航空法の定めにより、都市部でドローンを飛ばせるエリアは非常に少ない。同町のドローンフィールド内なら、同法の縛りを受けず自由な高度・コースで飛行させられる。
2.まちを挙げて力を入れるドローン活用の拡大
初心者向けレッスンは町内のドローンスクール講師が担当するほか、ワンストップでフィールド活用申請ができるよう役場内に窓口を設置。まち全体でドローン活用の拡大に取り組んでいる。
3.充電設備から飲食、宿泊まで便利な施設が1カ所に
2カ所のドローンフィールドは、充電設備や駐車場、食事や宿泊施設も備えている。Wi-Fi完備のテレワークスペースもあるため、効率的なフィールド滞在を可能にしている。
ドローンを体験しながらテレワークも!
先着5自治体に、施設内のテレワーク用スペースを3日間無料で貸し出します。ワーケーション利用もできるため、業務と並行しながら集中して開発・実験に取り組んでいただけます。
お問い合わせ
サービス提供元:神石高原町
未来創造課 デジタル推進室
TEL:0847-89-3332
住所:〒720-1522 広島県神石郡神石高原町小畠1701
E-mail:jk-mirai@town.jinsekikogen.lg.jp