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年度末ファイリング作業ですっきり&新年度の業務書類・管理をスムーズに

身の回りの片づけは心の片づけ。職場や家庭をスッキリすることで、効率アップ・自己成長・人間関係の改善など。片付けがもたらす効果は心理的にも効果がある。そんな職場や家庭の「日々を整える片づけ術」をテーマに、元・自治体職員で、現在はオフィス業務効率化コンサルタントとして活躍している長野ゆかさんに連載の執筆をいただいた。

第4回目は「年度末から新年度へ向けての整理術」について。新年度よいスタートを切るために、いまからやっておくべき整理、片づけ術をご紹介いただく。

スムーズに新年度を迎えるためには?

もうすぐ年度末。この時期は、進行中の業務と翌年度の準備が並行し書類の量が増えるうえに年度が交じるため、探すというムダな時間が特に増加しやすいですね。あえて交じらないように「翌年度の書類はここ」と、ちょっといつもとは違う別の場所に置いたら、その場所ごと忘れて「どこに行ったっけ?」なんていうこともよくある話。
今ファイリングを整えておくと、本年度の業務はもちろん、来年度の作業もスムーズに進みますし、今後、業務書類として検索する際も必要です。もちろん気持ち新たに新年度をすっきりと迎えたい方も参考にご覧ください。

年度末に書類管理の作業がしやすい理由

メリットはいろいろありますが1つは、一通りの業務が完結した後に見返すため、整理の基準が明確で作業が早いことです。日々の業務を行う上では「あれもこれも…また使うかもしれない」と要・不要の整理が進みにくい内容でも、この時期は、業務完了後に見返すことになるため「もう使わない→不要」と判断しやすくなります。年度内に何か「コト」を決定するために集めた資料たちも、この時期ならその「コト」自身が決定し終了しているため、見返せば即不要と判断できる書類も多いです。「これに関しては決定書類だけでいい」、「これは過程が3つ程度残っていればいい」、「経過1枚にまとめよう、その資料があればここにある書類の束を全部処分できる」等、見た瞬間に結論が出やすいです。また「来年度以降で『振り返る目的で』この情報が必要か」という、具体的な判断基準ができることも、作業が進む理由の1つです。

お勧めは、個別フォルダを利用すること

手作業・収納のコツとして誰でも簡単にできることは、書類を「個別フォルダ」を使ってまとめていくことです。個別フォルダとは、見出しのついた紙の収納形式で、書類をはさみ立てて管理します。背表紙の分厚い簿冊式と違い、穴をあけずにとじるため作業効率がいい、収納効率が良い、また用品費が安い・軽い・大体同じ紙の量なので探しやすい、等様々なメリットがあり、自治体ではキャビネットとともに古くから利用されています。1つの収納用品として見たときにも、大変優れています。
また、公文書管理法の適正管理のための実務指針「行政文書の管理に関するガイドライン(以下、ガイドラインという。)」でも、個別フォルダによる管理が勧められています。

(画像=オフィスミカサ様提供 / 奈良県三宅町役場 政策推進課様 管理状況)

さらに、個別フォルダの隠れたメリットの一つとして、数多くある個別フォルダ(業務)を、自分の思う順番に随時並び替えができることです。1つの個別フォルダに入れる書類量が約80枚(1cm程度の厚み幅)になるように、先ほど整理した書類を1まとめに分類していきます。そして、計画順・実施順・部署順・業務の進行順等「後で探しやすいように」個別フォルダを並び替えます。業務進行中は、手元にきた順や使用頻度の高い書類を手前に置く方が効率が良いこともあり分類に迷いが出ますが、要・不要と同じく、年度末だと、後に検索することを目的とし、配列を組むことができます。
もちろん今後ほかの書類のファイリングを進めていく中で「入れ忘れていた書類が出てきた…!」というケースでも、該当のフォルダにポンと挟むだけ。分厚い簿冊のように該当場所まで前後の書類を外してから、とじなくともよいのも、実務上での個別フォルダ管理の大きなメリット。やはり、簿冊は穴をあけるため時系列順にとじることが多く、それをわざわざいったん外して、後日探しやすいように業務順等の順番にとじかえるという作業はとても面倒です。こうした業務上のメリットからも、普段から個別フォルダで管理をすることをお薦めしています。

次年度のための準備

今年と同じ業務が、来年度も発生する予定であれば、個別フォルダに、先にタイトルだけを書いておくと良いでしょう。来年度その書類が発生したときには、そこに入れるだけで、机の上に書類だけを放置することがなくなります。先に収納場所を確保し、翌年の書類の戻す場所を作成しておくことで、翌年の散らかりを防止します。これも簿冊ならば、書類発生前でも、背幅数センチ×冊数分のスペースの確保が必要になりますが、個別フォルダなら、10冊準備しても10cm程度なので、収納スペースを気にせず準備しておくことが可能です。「次年度の準備」という概念がないと、手間に感じられるかもしれませんが、一度実践し、その効果を知ると、毎年の次年度準備の作業として定着していきます。

上記のように、前年度・本年度と分けて書類の管理を行えば、当然書類が年度を混じることはなくシンプルになる、これはファイリングの考え方の基本です。予算のように、書類もきちんと年度管理で締めを行うことで、毎年の書類をリセット。そして「新年度の書類量はここから/これだけ」と明確にすることで、新年度の書類スペースはゼロからスタートします。量が少なければ業務進行中に書類を探すシーンは格段に減りますし、さらに前年の書類を探すには先ほどきちんと分類ごとにつくった前年の書類の個別フォルダのまとまりの中から、探し出せることになります。

人事異動等に伴う業務の引き継ぎが楽に

上記のように「1つの業務に関する一連の流れが、フォルダの順番どおり管理されている状態」になっていれば、まるごと次の担当者に引き継ぐだけで喜ばれます。手前から順にフォルダを見ていけば、大体どの時期に何をすべきかの見当をつけることができます。同じ紙でも、ただ山積みにしているだけではなく、目的をもって管理すれば、説明がなくても業務引き継ぎの資料として活用(マネジメント)できるようにもなります。

データ管理も同じ

この業務の締めと作業をきちんと整えておくことで、これから先の仕事が効率的に運ぶのはデータの管理も全く同じです。モノの片づけが得意な方でも、書類となるとうまくいかないのは、書類をモノと同じように「紙」として扱っているから。書類とデータに共通することは「情報」であること。その情報を「いつ使うか・どう使うか」という目的意識をもつことで、ただの業務分類ではなく「活用を前提とした分類」となるため探しやすくなります。この基準が明確になる年度末がやはりデータの整えるタイミングとしてもベストでしょう。

書類もデータも、上記のような管理方法がファイリングの仕組みとして組織的に導入されているのが理想的。本来、ガイドラインに沿って、行政書類の管理を行うことが当然ではあるのですが、実際は仕組みがない、あるけど形骸化、文書管理システムもリスト管理だけで、実際に書類がどこにあるかまでは管理できていない、文書管理規定の存在も職員は知らない…等、多くの自治体で問題になっているのが実情です。個人で書類を持たざるを得ない事情や原因の解決からアプローチしたいところではありますが、まずは個別フォルダを活用して、自分の書類だけでもすべて管理できている状態になるよう整えてみましょう。


プロフィール

株式会社オフィスミカサ 代表取締役

長野 ゆか(ながの・ゆか)

大阪府生まれ、大阪府内中核市にて情報システム部門所属、15年勤続を経て独立。
現在は、文書(書類・データ)ファイリングを中心に、オフィスの環境改善・効率化などを指導。1か月で5.2トンの削減の実施。各社企業理念に沿った環境改善→業務改善(モノからコトへ)を促し、全体の業務効率アップを行う。
研修講師としては、オフィス向け(環境改善、接遇、ビジネスメール)から、家庭向け(ホームファイリング®・子育て・シニア片づけ講座)まで様々なテーマで登壇。大手企業、大学、弁護士会、自治体まで多数。述べ受講生は5,000名以上。プライベートでは、小学1年生から高校生までの3児の母。

保有資格
一般社団法人日本経営協会 情報資産管理指導者
一般社団法人ハウスキーピング協会認定  整理収納アドバイザー1・2・3級講師(全国24名) 他

著書

実践! オフィスの効率化ファイリング』(DOBOOKS / 同文舘出版)

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