公開日:

地域活性化起業人制度とは?仕組みから活用分野・自治体事例まで紹介

企画・政策
読了まで:5
地域活性化起業人制度とは?仕組みから活用分野・自治体事例まで紹介

人口減少やDX対応など地域課題が複雑化する中、専門的な知識やノウハウを持つ人材の確保に課題を抱える自治体もある。その解決策の一つとして活用されているのが、民間企業のプロ人材を即戦力として受け入れる「地域活性化起業人制度」だ。本記事では、制度の仕組みやメリット、地域おこし協力隊との違い、自治体の活用事例を紹介する。

※掲載情報は公開日時点のものです。

地域活性化起業人制度とは

都市部の企業などで働く人材を自治体が一定期間受け入れ、その専門知識やノウハウを地域課題の解決に活かす制度。自治体が企業や個人と協定を結び、民間で培われた知見や経験を地域活性化につなげることを目的としている。

基本的な仕組み

受け入れ期間や活用形態など、制度の主な特徴は以下の通り。

  • 受け入れ期間:原則6カ月~3年
  • 活用形態:企業派遣型、副業型、シニア型

従来の企業派遣型に加え、副業型やシニア型が創設され、より柔軟な形で民間人材を活用できるようになった。令和7年度の地域活性化起業人は、企業派遣型904人、副業型299人、シニア型12人の計1,215人となり、過去最高を記録した。※

総務省「地域活性化起業人 ~企業の社員を自治体に派遣し、地域貢献する活動を支援します!」より

企業派遣型・副業型・シニア型の違い

地域活性化起業人には、企業派遣型・副業型・シニア型の3つがある。それぞれ対象となる人材や勤務要件、支援内容などが異なる。

主な違いは以下の通り。

項目
企業派遣型
副業型
シニア型
対象
都市部企業の社員
企業に所属する個人
都市部企業を退職したシニア人材
協定
企業と自治体
個人と自治体
個人と自治体
勤務要件
自治体区域内で月の半分以上
月4日以上かつ月20時間以上、自治体に月1日以上滞在
副業型におおむね準じる
国の支援
給与などに係る経費を支援(年間上限610万円/人)
報償費などの経費・旅費を支援(合計上限200万円/人)
副業型におおむね準じる

「地域活性化起業人」と「地域おこし協力隊」の違い

地域活性化起業人制度と比較されやすい施策として、地域おこし協力隊があげられる。どちらも地域活性化を支える制度だが、対象となる人材や居住要件、期待される役割などが異なる。

主な違いは以下の通り。

項目
地域活性化起業人
地域おこし協力隊
対象となる人材
都市部企業の現役社員(出向・副業)、退職シニア人材
都市部などから地方へ移住する個人
契約形態
自治体と企業による協定締結(または個人との契約)
自治体から個人への直接委嘱(または雇用)
移住
移住を前提としない
原則として住民票を異動
主な役割
民間の専門知識やノウハウを活かした地域課題への取り組み
地域に密着した地域おこし・生活支援活動
期間
原則6カ月~3年
原則1~3年(一定の要件を満たす場合は最長5年)

地域活性化起業人制度を活用するメリット

自治体側の主なメリット

民間企業で培われた専門知識やノウハウを、地域課題の解決に活かせることが自治体側のメリット。

  • 専門人材を活用できる :観光振興や地域DXなど、専門的な知見が求められる分野で、民間企業での経験やノウハウを活かした取り組みを進められる。
  • 職員への知識やノウハウの共有につながる:起業人と職員がともに業務に取り組むことで、民間企業が持つ知識やノウハウを庁内に共有できる。

外部人材に業務を任せるだけでなく、起業人の知見を庁内に蓄積することで、任期終了後の取り組みに活かすことも期待できる。

企業側の主なメリット

社員の人材育成や地域への社会貢献につながることが、企業側のメリット。

  • 人材育成やキャリア形成につながる:自治体という異なる環境で地域課題の解決に取り組むことで、社員が自社では得にくい経験や知見を得る機会となる。
  • 地域への社会貢献につながる:自社が持つ専門知識やノウハウを地域課題の解決に活かすことで、企業としても地域活性化に貢献できる。

地域活性化起業人制度を活用した自治体事例

この制度は、活用形態や地域課題に応じて様々な取り組みに活かされている。ここでは、企業派遣型・副業型・シニア型それぞれの自治体事例を紹介する。

総務省「地域活性化起業人-令和7年度活用事例集(企業派遣型)」より
総務省「地域活性化起業人-令和7年度活用事例集(副業型・シニア型)」より

福岡県福智町|行政手続きのオンライン化で“行かない窓口”へ(企業派遣型)

福智町では、企業派遣型の地域活性化起業人を受け入れ、行政手続きのオンライン化や業務効率化に取り組んでいる。

各課へのヒアリングや事業者との打ち合わせを通じて、オンライン化できる業務を洗い出し、公式LINEを活用した仕組みを提案。高校生の通学定期券購入助成金では、申請をLINEから24時間受け付けられる仕組みを構築した。

また、同町のイベントではデジタルスタンプラリーを導入し、紙からデジタルへ切り替えることで経費削減と参加者の利便性向上を実現。スマートフォンから申請や予約ができる行政手続きのオンライン化の実現に向けて、取り組みを進めている。

島根県隠岐の島町|マーケティングの知見を地域の魅力発信に活用(副業型)

隠岐の島町では、不動産広告やデジタルマーケティングの知見を持つ地域活性化起業人を受け入れ、シティプロモーションや行政業務の効率化に取り組んでいる。

ふるさと納税では、寄附額1億円突破に向けた戦略立案やオンライン販売ページの改善などを提案。地域おこし協力隊の募集では、イベント企画やランディングページの制作、SNS広告運用などを通じて、採用課題の洗い出しと地域の魅力発信を進めた。

さらに、生成AIを活用した広報文作成にも取り組み、業務時間を大幅に短縮。職員向けのプロンプトやマニュアルの整備、研修も実施し、日常的な活用・定着を支援している。

香川県高松市|シニア人材の経験を関係人口の創出に活用(シニア型)

高松市では、企業で長年勤務した経験を持つシニア人材を受け入れ、関係人口の創出や地域内外の交流促進に取り組んでいる。

首都圏などから地域に関心を持つ人材を募り、地域住民や事業者と交流しながら、地域の魅力や課題を体験するワークショップを実施。地域の木材を活用した商品開発などにもつながっている。

また、企業や大学と地域をつなぐ取り組みも進めており、東京都内で地域PRイベントを開催するなど、地域と企業との新たな連携の可能性を探っている。

まとめ

地域課題が複雑化する中、必要な専門人材を庁内だけで確保することが難しいケースもある。地域活性化起業人制度は、そうした課題に対して、民間人材の知見や経験を取り入れる選択肢の一つだ。

企業派遣型だけでなく、副業型やシニア型も加わり、民間人材との関わり方は広がっている。今後、地域課題の解決に外部人材の力を活かす方法の一つとして、さらなる活用が期待される。