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【セミナーレポート】組織力を最大化する「適材適所の配置」×「自律的な育成」〜働きがいを高め、若手が定着する組織へ〜

人事
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【セミナーレポート】組織力を最大化する「適材適所の配置」×「自律的な育成」〜働きがいを高め、若手が定着する組織へ〜

ワーク・ライフ・バランスの確保や少子高齢化に伴う人材確保の難しさ、画一的な人事異動によるミスマッチ、そして高まる若手職員の離職——多くの自治体人事担当者が、こうした課題に日々向き合っている。属人的な経験や勘に頼った配置、やりっ放しになりがちな研修など、人材にまつわる情報が庁内で分断されているケースも少なくない。そこで本セミナーでは、スキル情報を可視化する「適材適所の配置」と、学習履歴を活かす「自律的な育成」という二つのアプローチを軸に、総務省、民間企業3社、そして先進自治体である愛知県豊田市の実践を通じて、職員の納得感を高め、若手の定着につなげるための人事戦略を紐解いていく。


概要

■テーマ:組織力を最大化する「適材適所の配置」×「自律的な育成」〜働きがいを高め、若手が定着する組織へ〜
■実施日:2026年7月14日(火)13:30〜15:30
■参加対象:自治体職員(自治体職員限定)
■申込者数:197名

【総務省】地方公共団体における人材育成について

総務省の西山和男さんに、地方公共団体における人材育成についてお話しいただいた。職員数の推移や競争率、若手職員の離職率といったデータをもとに人材確保をめぐる厳しい現状を示したうえで、令和5年に策定された「人材育成・確保基本方針策定指針」のポイントと、富山県の職員キャリア開発支援センターなど各地の実践事例をご紹介いただいた。

【講師】
西山 和男 さん
総務省自治行政局公務員部
給与能率推進室 課長補佐

平成13年度に兵庫県庁入庁。
平成20年度より財政課へ配属。
令和7年4月より現職。

本日は、地方公共団体における人材育成についてというテーマで、大きく二点、人材育成・確保をめぐる状況と、総務省における人材育成・確保支援の取り組みについてお話しいたします。

人手不足の実態を数字から読み解く

まず、地方公共団体の職員数についてです。かつては地方公共団体の行財政改革等の取組により、職員数は減少傾向が続いておりましたが、平成29年以降は微増から横ばいという傾向に転じています。


将来の人口推計を見ますと、2025年の出生数(概数)は約67.1万人で、統計開始以降の過去最少を更新しました。一方、現在40歳の世代の出生数は138.3万人であることから、約半数となります。限られた人材を全体で取り合う状況が今後も続くと見込まれます。

こうした状況は、すでに採用の現場にも影響が出ています。令和6年度の地方公共団体の採用試験の競争率は全体で4.1倍となっており、調査開始以降、最も高かった平成11年の14.9倍と比べると、およそ三分の一の水準まで落ち込んでいます。こうした厳しさを受け、各団体では採用手続のデジタル化や、教養試験に代わる適性検査の導入、試験日程の早期化、採用試験の共同実施など、多様な試験方式の工夫がすでに進められています。中途採用試験についても、都道府県・指定都市では全団体が実施しており、市区町村でも実施団体数が増加傾向にあります。

一方で気になるのが、若手職員の離職率です。地方公務員の離職率は、令和6年度で2.9%と、やや高止まりの傾向が見られます。この背景については、我々の研究会でも学識者から様々な指摘をいただいており、今後さらに理解を深めていきたいと考えています。

改正後の指針に込められた視点

人材育成・確保の重要性が高まっていることなどを踏まえ、総務省では令和5年12月、平成9年に策定した指針を全面的に改正し、「人材育成・確保基本方針策定指針」を策定しました。「人材育成」に加え、「人材確保」、「職場環境の整備」、「デジタル人材の育成・確保」に関する検討事項や留意点を盛り込んでいます。改正にあたっての基本的な考え方の一つに、首長等が積極的に関与すること、そして人事担当部局と関係部局が連携することがあります。研修や試験方式の工夫、エンゲージメント調査などの取組には、首長をはじめとしたトップ層の関与のもと全庁的な体制を構築し、対応することが重要であると考えております。

昨年度の人材育成研究会では、茨城県那珂市の事例として、政策形成研修を受けた職員が市長・副市長などのトップ層の前で政策課題と対応策を発表する機会を設けている取り組みをご紹介いただきました。発表する職員のプレゼンテーション能力の向上にもつながり、聞く側のトップ層にとっても、研修を受けると職員がこれだけ成長するのだと実感できる、トップ層の意識を高める上で非常に効果的な取り組みだと考えています。また、北海道ニセコ町では人材育成アクションプランを策定し、人事課だけでなく他部局も含めた横断的な組織を昨年11月に発足させたと伺っています。人事担当部局は体制的に余裕がない中で業務にあたられていることが多いと思いますので、他部局と連携しながら進めていくことが重要ではないかと考えています。

その他指針に記載されている内容、地方交付税措置及び事例

指針の中では、人事関連業務をより効率的かつ高度に行う観点から、HR(Human Resource)テクノロジーといったデジタル技術の活用も有効であるとお示ししています。また、小規模な自治体では自前の研修実施が難しいとの声も多く、都道府県による研修への市町村職員の受け入れや、近隣市町村との連携による広域的な研修実施の検討も促しています。

財政的な支援としては、令和6年度から、都道府県・市町村が「人材育成・確保基本方針」において、特に重点的に取り組むとして明示した新たな政策課題に関し実施する研修を対象として、地方交付税措置を創設しています。実際に、ある都道府県では歳入確保、いわゆるファンドレイジングに関する広域的な研修を県と市町村が合同で実施しているという例もあり、こうした取組は地方交付税措置の対象になり得ますので、ぜひご活用をご検討いただければと思います。

事例として、富山県の「職員キャリア開発支援センター」の取り組みをご紹介します。外部の民間専門家と県内部局、二種類のキャリア相談窓口を設置し、職員が希望する窓口で自身のキャリアについて相談できる仕組みを整えています。また、目指すキャリアの方向性を記載する「キャリアビジョンシート」を導入し、これをもとに上司と本人が面談を行う機会も設けています。キャリア開発は若手職員が定着する上で重視するポイントであり、本日のテーマである適材適所の配置や自律的な育成にもつながる、まさにモデルとなる取り組みだと考えています。

次の研究テーマへとつながる広がり

今年度実施している人材育成に関する研究会では、採用の多様化を踏まえた人材育成のあり方と、職場内での人材育成のあり方という二つのテーマに取り組んでいます。中途採用者の増加など、採用方法が多様化する中でそれに合わせてどのように育成を図るか、また今の時代に合ったOJTを含めた職場内での人材育成のあり方について、年度内に報告書として取りまとめ、公表する予定です。

限られた人材の中で複雑・多様化する行政課題に対応していくためには、各自治体で人材育成・確保に向けた取り組みを一段と進めていくことが求められます。ぜひ本日ご紹介した指針や事例集、地方交付税措置なども踏まえながら、それぞれの組織にあった取り組みを進めていただければと思います。

【株式会社プラスアルファ・コンサルティング】データとAIで変わる、自治体人事の未来~若手職員の定着、自律的成長、最適配置の実践~

株式会社プラスアルファ・コンサルティングの望月一矢さんに、データとAIで変わる自治体人事の未来について解説いただいた。属人的人事の限界を指摘したうえで、タレントマネジメントシステム「タレントパレット」を活用した秋田県庁の事例や、AIによる配置案の自動生成、キャリア支援の仕組みを紹介いただいた。

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【講師】

望月 一矢 さん
株式会社プラスアルファ・コンサルティング
タレントパレット事業本部 執行役員
セールスコンサルティング部 部長

法政大学社会学部を卒業後、音楽業界でのアーティスト活動を経て、2018年プラスアルファ・コンサルティングに入社。 顧客分析への関心から、マーケティングソリューション事業の新規営業に従事。2020年からはタレントマネジメント事業に参画し、全国での講演活動や、大手・エンタープライズ企業に対するシステム・コンサルテーションの提案を通して、「科学的人事」の普及・啓蒙に貢献する。

その後、営業マネージャー、副事業部長の役割を経て、2025年に執行役員に就任。現在はセールスコンサルティング部の部長として、タレントマネジメントの新たな可能性を探求すると共に、組織の成長と顧客課題の解決に情熱を注いでいる

本日は「データとAIで変わる、自治体人事の未来」と題しまして、当社が提供するタレントマネジメントシステム「タレントパレット」や、コンサルティングを通じたご支援の事例を交えながらお話しさせていただきます。

当社プラスアルファ・コンサルティングは、人事領域に限らず世の中に溢れるビッグデータを自社開発のクラウドサービスで見える化し、お客様の業務に役立てていただくことを主な事業としています。官民問わず今注目されているのが、人材の育成や抜擢といった人事戦略において、いかにデータを活用してその質を高めるかというテーマです。当社は10年前に「タレントパレット」をリリースし、多くの地方自治体様をご支援してまいりました。

本日大きくお伝えしたいのは三点です。今、組織に求められる科学的人事戦略とは何か、先進事例に見る科学的人事の実践、そしてAIが導く科学的人事の未来です。

属人的人事の限界を環境変化から見つめる

まず、なぜ今、科学的人事戦略が必要なのかについてです。少子高齢化による職員不足、デジタル・AIの台頭による求められるスキルセットの急変、テレワークなど働き方の多様化、官民での人材獲得競争の激化と、行政を取り巻く環境は大きく変わってきています。こうした中で、経験や勘、慣習といった、いわゆる属人的人事はすでに限界を迎えていると考えています。データが庁内に点在し意思決定に活用できていないこと、根拠のない配置・登用によるミスマッチや不公平感、優秀な職員の早期離職やエンゲージメントの低下、こうした課題を解決するには、データが意思決定者に届く仕組みをつくり、データを根拠とした戦略的な配置・登用や、職員一人ひとりの自律的なキャリア形成を支援していく、科学的人事へのパラダイムシフトが必要だと考えています。

秋田県庁の事例から学ぶ活用の広がり

先進事例として、実際にタレントパレットをご活用いただいている秋田県庁様の例をご紹介します。もともとは、人事評価をエクセルで運用し、職員番号をもとに複数のファイルを突合する作業に多くの労力がかかっており、情報が庁内に散在して管理自体が追いつかない状態にありました。業務効率化の重要性は認識されていたものの、人事施策の拡充に伴いデータは増え続け、人事に特化したシステムの導入を検討されるに至りました。プロポーザルを経てタレントパレットを採用いただいた背景には、職員の経歴・評価を一元管理できること、散在していた情報をCSV形式で一括取り込みし効率的に整理できること、追加費用なく柔軟に対応でき、専任のコンシェルジュが伴走してくれることへの評価がありました。

実際には人事評価や自己申告書の運用による集計工数の削減にとどまらず、庁内マルチワーク制度の求人と応募のマッチング、感謝のメッセージを送り合う「サンクスポイント」機能など、幅広く活用いただいています。人事評価だけの利用だと年に数回のログインにとどまってしまいますが、日常的に触れていただけるシーンをつくることが、システムを組織に根付かせる上で重要だと考えています。

ただし、システム導入をデータの一元化や業務効率化だけの目的にとどめてしまうと、人材育成やマッチングの成功にはつながりません。重要なのは、蓄積した情報を最適配置や離職防止、エンゲージメント向上にどう活かすかです。

データが導く配置とキャリア形成の姿

たとえば、組織図と役職を組み合わせて職員を一覧表示したり、残業時間と評価の関係を可視化することで、無理なく成果を上げているハイパフォーマーを見出したりすることができます。さらに近年は、組織データや評価履歴、異動履歴、自己申告、面談記録といった蓄積データをもとに、AIが職員一人ひとりの職務経歴書を自動生成し、強みや特徴をスキルタグとして可視化する仕組みも登場しています。こうしたデータをもとに、組織が求める要件と職員の持つスキルをマッチングさせ、最もマッチ度の高い配置案を自動で作成する機能も実用化が進んでいます。

もちろん最終的な異動案には様々な制約条件が加味されますが、各課がどのような人材をどれだけ必要としているかという条件をもとに、人を割り当てる作業を自動化できる段階に来ています。

自律的な成長を促す仕組みとしては、「キャリアボード」という機能があります。職員がこれまで歩んできたキャリアを踏まえ、これから目指せる選択肢を提示するもので、AIが前任者や歴任者の経歴からジョブディスクリプションを自動整理し、今の自分に足りないスキルや必要な研修、すでにそのキャリアを実現している先輩職員とのつながりまで確認できます。自分自身でキャリアの伸ばし方を把握できることが、自律的な成長を後押しします。

AIエージェントが拓く次の段階

最後に、AIエージェントによるさらなる進化についてお伝えします。対話形式でシステムに指示を出すことで、分析や操作を簡単に行える仕組みが実用化されつつあります。たとえば、庁内の人的資本分析をしたいと伝えると、AIが必要な指標をヒアリングしながら分析を進めてくれます。離職の傾向を分析すると、特定の職種で昇進後に離職する傾向がある、といった具体的な要因まで示してくれるため、どこに手を打つべきかをデータに基づいて判断できるようになります。

AIは人の判断を奪うのではなく、人の判断のレベルを引き上げるものだと考えています。これからの自治体人事の役割は、AIを使うことそのものよりも、データ基盤をしっかりと握り、その活用を推進していく立場へと変わっていくのではないでしょうか。

【パブリックタレントモビリティ株式会社】最新の自治体人事トピックス:エンゲージメント・タレントマネジメントから戦略人事へ

パブリックタレントモビリティ株式会社の川人伸さんに、エンゲージメント・タレントマネジメントから戦略人事への展開について語っていただいた。熊本市におけるエンゲージメント調査の実践と継続の難しさを示したうえで、キャリアと配置をめぐる構造的な課題、その突破口となる評価制度の見直しについて共有いただいた。

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【講師】

川人 伸 さん
パブリックタレントモビリティ株式会社
代表取締役

採用・育成・組織開発領域で様々な規模の企業を支援後、グラビス・アーキテクツに入社。年150名超の行政人材の選考を通じ課題を直視し、自治体専門の組織人事課題解決のための当社を創業。

続きまして、私からは「最新の自治体人事トピックス」と題し、エンゲージメントからタレントマネジメント、戦略人事へという流れでお話しします。本日は内容を詰め込んでおりますので駆け足になりますが、皆様にとって何かのヒントになる部分があれば幸いです。

私はパブリックタレントモビリティという会社を経営しており、グループ会社のグラビス・アーキテクツにも所属しています。グラビス・アーキテクツはITコンサルティングが中心の会社ですが、我々は組織人事領域に特化して自治体を支援しています。もともと民間向けの組織人事コンサルティングに携わっており、2020年にグラビス・アーキテクツの管理部門に加わりました。自社の採用活動を通じて年間約150名の行政機関勤務者を選考する中で、意欲ある人材の流出、その背景にある行政機関の人事施策のあり方に問題意識を持ち、グループ内でパブリックタレントモビリティを立ち上げるに至りました。現在はエンゲージメント調査、タレントマネジメントシステム導入支援、人材戦略・人的資本経営に関するご支援を行っています。兵庫県伊丹市様での人事戦略策定支援など直接受託させていただいている案件のほか、タレントマネジメントシステムの調達支援などにも携わっています。

エンゲージメントという言葉の自治体における位置づけ

まず、エンゲージメントについてです。令和3年の総務省の研究会で「職員のエンゲージメント向上」が重要キーワードとして取り上げられて以降、令和5年の指針公表を機に、調査に取り組む団体は増えています。ただし現時点では都道府県・政令市・特別区など、一定規模以上の団体が中心という特徴があります。

エンゲージメントは行政ではまだ馴染みの薄い言葉ですが、組織人事領域では「組織とそこに所属する個人との信頼関係や愛着」として捉えられることが一般的です。学術的に測定方法が定義されているのは「ワークエンゲージメント」のみで、エンゲージメントそのものは事業者ごとに独自の定義で測定されているのが実情です。当社では、職員満足度・組織エンゲージメント・ワークエンゲージメントに関する質問項目を五段階で回答いただき、平均値をスコアとして集計しています。当社の支援先データでは、スコア3.5前後が一つの目安となっており、それより高いか低いかで組織の状態がある程度見えてきます。

熊本市の実践に見る成果と継続の壁

事例として、熊本市様の取り組みをご紹介します。2023年度から調査を開始し、初年度は現状満足3.56、継続就業意向3.83と、悪くない水準でした。

ただし年代別に見ると35〜40歳前後で最もスコアが下がる傾向が見られ、これはほぼどの団体でも共通する傾向です。この年代は係長級などにあたり、負担感が強くなりやすいと考えられます。課題として浮かび上がったのは「キャリア・職務適応感」「職場の安心感」「人事制度の納得感」で、これも多くの団体に共通するキーワードです。

分析結果を踏まえて改善策を提案し、2年目には現状満足度のスコアが向上、人事制度の納得感やキャリア選択への希望の勘案といった項目も改善が見られました。背景には、人材育成基本方針の見直しにあたり全庁を巻き込んで意見を拾う取り組みがあったことも影響していると考えています。また、2023〜2025年度のデータをもとに退職率との関連を調べたところ、エンゲージメントスコアが低い部局ほど退職率が高く、スコアが一定の水準を下回ると退職率が急激に悪化する傾向も見えています。

一方で、エンゲージメント調査に令和5年度から取り組んできた団体は3年が経過し、事業としての継続性の難しさという課題も見えてきています。費用が相応にかかる一方で効果が見えにくいこと、人材育成部門と人事部門の連携が難しいこと、そして現場の管理職にエンゲージメントという言葉自体があまり浸透しておらず「人事の仕事」と捉えられがちで、現場を巻き込めずスコアが上がりにくいことなどが要因です。エンゲージメント調査は組織の健康診断であり、本来は毎年実施することが望ましいと考えています。

キャリアと配置をめぐる課題の所在

続いて、タレントマネジメントというテーマです。自治体において職員の満足度が特に低く、エンゲージメントスコアとの関連が強いのが「キャリア」の項目です。地方自治体ほど多様な業務をローテーションする組織は民間にはなく、職員からするとスキルの積み上がりを実感しにくいこと、管理職になることがほぼ唯一のキャリアパスであること、なぜこの部署に配置されたという説明が全庁的な仕組みとしてなされている団体がほとんどないことが、構造的な要因として挙げられます。

この突破口になるのが評価です。

評価を育成や配置に活かすと方針に書いている団体は一定数あるものの、実際にそこまで実現できている団体はまだ少ないのが実情です。評価制度の項目そのものを見直し、人事としての戦略性と現場上司の支援というサイクルを回していく必要があると考えています。配置についても、個人の希望を優先した配置は進んでいる団体が増えている一方、職員の育成・キャリアをもとにした配置や組織にとって最適な配置については後回しになりがちです。

最適配置の実現に向けたデータ管理システムの導入の前提として、そもそも人事異動のルールが明文化されていない団体が多く、そこから整備していく必要があります。

人事部門は、こうした「攻めの人事」に加えて、ハラスメント対応やメンタル対応といった「守りの人事」も同時に担っており、業務量に対して人員が追いついていないのが実情です。業務の断捨離やITの活用、ルールの見える化から着手していくことが重要だと考えています。

戦略人事という、その先にある視野

最後に、我々が取り組んでいる次のフェーズについて触れます。エンゲージメントを起点に、キャリアや配置というテーマに取り組んでいくと、最終的には組織全体の人材構成や、限られた財政・人員の中でどこに事業を投じるかという議論にまで踏み込む必要が出てきます。実際に首長・副首長を交えたプロジェクトでこうした議論をさせていただく機会も増えてきています。

【愛知県豊田市】職員の"挑戦"を促す人事制度―20年の実践とこれから―

愛知県豊田市の松田彩世さんに、職員の"挑戦"を促す人事制度、20年の実践とこれからについてお話しいただいた。「豊田市トータル人事システム」のもと、チャレンジポイントを組み込んだ人事考課制度や、経歴管理システム、ジョブ・リクエスト制度の運用実態と職員の声を交えながら、今後の展望を語っていただいた。

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【講師】
松田 彩世 さん
愛知県豊田市 人事課
担当長

民間企業から転職し、平成26年度に豊田市入庁。平成30年度より人事課へ配属、令和7年度から担当長に着任。

本日はこのような機会をいただきありがとうございます。私自身は人事課に配属されて9年目となり、普段は人事異動や人事評価、定年延長関係、任期付職員の任用などを担当しております。本日は「職員の挑戦を促す人事制度―20年の実践とこれから―」と題し、本市の取り組みをご紹介しますが、実のところ、私たちも日々葛藤やジレンマを感じながら仕事をしておりますので、試行錯誤の実態や、実践したからこそ分かったことも交えてお話ししますので、皆様のお役に立てば幸いです。

豊田市とトータル人事システムの全体像を掴む

まず豊田市の紹介です。

本市は「クルマのまち」との印象が強いかと思いますが、、市域の約7割が森林など、実りの多い緑豊かな一面も持つ、表情豊かなまちです。人口は約41万人、職員数は3,584人となっており、中核市幸福度ランキングや共働き子育てしやすい街ランキングの評価もいただいています。令和7年3月には第9次総合計画を策定し、「チェンジ・チャレンジ」を合言葉に取り組んでいます。
続いて、「豊田市トータル人事システム」について説明します。これは、平成11年度に策定した人材育成基本方針の実践計画として、平成14年度に策定した、各人事制度を体系的に整理したシステムです。20年の実践と申し上げましたが、実際には20年以上が経過しています。能力・成果主義の徹底、組織マネジメント体質の強化、チャレンジ精神の高揚という3つの基本方針を軸に、評価、採用・配置、能力開発、報酬という4つのフィールドで各種制度を構築しています。

体系的に整理することで、人事制度の首尾一貫性や、部分最適ではなく全体最適の視点での制度構築のしやすさといったメリットが生まれています。

各フィールドの制度を簡単にご紹介します。評価については人事考課制度が代表的なもので、こちらは後ほど詳しくお話しします。昇任試験は平成11年度から導入していますが受験率は横ばいから微減傾向で、上司診断は360度評価とは異なり人事評価には紐づけず、上司自身の自己啓発を目的として導入しています。採用・配置では、公務員試験によらない多様な採用枠を早い段階から導入しており、令和元年度には公務員試験を完全廃止しました。カムバック採用や山村地域在住職員採用など地域の広さを踏まえた採用策を講じているほか、ジョブ・リクエスト制度、経歴管理システムについては後ほどご説明します。能力開発では、階層別研修・特別研修を年間約40種類実施しているほか、若手職員が半年かけて政策提案を行う次世代リーダー養成研修があり、実際に予算化された提案もあります。報酬では、昇任試験制度等を活用した能力に基づく昇給や、人事考課結果の公平な反映に努めています。

20年の運用の中で見直してきたもの

これらの制度は平成14年度から続く20年間の実践の中で多くが継続していますが、時代やニーズに合わせて見直した取組もあります。ワーク・ライフ・バランスの確保などを踏まえ、令和5年度から昇任試験の一部を廃止したほか、庁内チャレンジ公募制度をジョブ・リクエスト制度に一本化するなど類似制度の整理も行い、本当に必要なものに絞り込みながらアップデートを続けています。

続いて、「挑戦」を促す各種制度の運用と実際について、もう少し詳しくお話しします。

挑戦を後押しする制度の中身を覗く

まずトータル人事システムの要、人事考課制度です。

平成11年度の導入当初は個人目標管理型でしたが、令和2年度に組織目標貢献型へと見直しました。旧制度では個人主義の傾向が強まり、事業進捗管理に終始してしまい人材育成に力が入りにくいという課題がありました。そこで、一般職の個人目標設定を廃止し、組織目標への貢献度を評価する形に変更するとともに、1on1機能を強化しました。

職員の挑戦を促す仕掛けが「チャレンジポイント」で、工程改善や生産性向上など成果向上につながる取り組みを部下職員自らが上司に提案・相談しながら設定します。達成すれば加点されますが、達成できなくても減点はしません。思い切って挑戦してよいという仕組みです。最終的には、担当目標の達成に向けた部下職員の貢献度を、年3回の1on1でコメントとともに評価しており、進捗が思わしくない業務があっても早期に軌道修正しやすくなっています。職員からは「作業量が減った」「組織目標と自分の分担業務のつながりを意識しやすくなった」という声がある一方、「評価視点のばらつきをなくしてほしい」といった声もあります。令和6年度の職員アンケートでは、制度への評価が「良い」「どちらでもない」「良くない」でおよそ3分の1ずつに分かれています。運用面の課題として引き続きフォローしていきたいと考えています。

続いて経歴管理システムです。

「異動が思い通りにいかない」という職員のニーズに応えるための仕組みで、若手のうちはジョブ・ローテーションで様々な部署を経験し、35歳以上になると複線型人事に切り替わります。組織横断的に経験を積むゼネラリストか、得意分野を極めるエキスパートかを自ら選択でき、エキスパート分野は17分野を設定しています。職員からは「若手のうちに偏らず幅広く経験できるのは良い」という声がある一方、「適性が分かれば、ローテーションによらず早期に異動させてほしい」という声もあります。

最後にジョブ・リクエスト制度です。

やりたい仕事に職員自らが希望して異動できる仕組みで、所属側が求人情報を出し、職員がエントリー、希望先の所属と本人が直接面接を行い、その結果に基づいて人事異動を決定します。面接に人事課職員は介入しません。この制度に関するよくあるご質問として「異動が叶わなかった職員へのフォローは」と言われます。所属長へのフォローの依頼や、本人のキャリア志向を見極めた代替部署の検討などを工夫しています。

これからの20年に向けて視野を広げる

20年の実践で形成された「豊田市職員らしさ」を可視化すると、令和6年度の職員アンケートでは、仕事へのやりがいを80%の職員が、挑戦ができる職場だと60%超の職員が感じており、「市民・現場」「チームワーク」「仕事を楽しむ」を大切な価値観・行動規範として仕事をする、となっています。

人事制度を検討・構築するとき、他自治体や民間企業の事例も参考にしますが、最終的には自分たちの組織にフィットするかどうかが重要で、職員の声を大切にする一方、一部の声に影響されすぎない冷静さも必要だと考えています。

今後は、多角的な分析による戦略的な人事施策の構築、人事課主導から現場が自走できる体制へのシフト、そして「辞めたくないのに辞めざるを得なかった」という残念な離職をいかに防ぐか、官民問わず選ばれ続ける魅力的な職場を目指して取組をアップデートしていきたいと考えています。

そのために、トータル人事システムの見直し、タレントマネジメントシステムの導入(現在構築中)、人事考課制度の適正運用の推進に取り組んでいきます。

【参加者とのQ&A】(※一部抜粋)

Q:複線型人事について、給与体系の整合はどうされていますか。エキスパートを選んだ場合、いわゆる管理職・マネジメントにはならないと思いますが、貢献に見合う処遇があるでしょうか。
A:エキスパートとゼネラリストで給与体系は特に差を設けておらず、職位に応じた管理職手当が設定されています。


【株式会社HRBrain】職員が活きる、定着する!強い自治体になるためのタレントマネジメント実践術

株式会社HRBrainの中野太朗さんに、職員が活きる、定着する、強い自治体になるためのタレントマネジメント実践術についてご紹介いただいた。属人的な人事異動とエンゲージメントの見えなさという二つの課題を示したうえで、データ収集からAI活用までの実践ステップと、自治体での導入事例を解説いただいた。

プロフィール画像

【講師】
中野 太朗さん
株式会社HRBrain
執行役員 エンタープライズセールス部 部長

大手総合人材サービス会社にて新卒採用のコンサルティング営業に従事。スタートアップからナショナルクライアントまで数百社を担当し、最終的にはエンタープライズチームでマネージャーを務めた。HRBrainではエンタープライズセールスとして上場企業を中心にタレントマネジメント、組織診断サーベイ等を提案。2023年9月にISO30414リードコンサルタント/アセッサー認定を取得。
2025年8月に執行役員就任。

HRBrainからは「職員が活きる、定着する!強い自治体になるためのタレントマネジメント実践術」というテーマでお話しします。本日は、配置と離職という部分に触れながら、まず自治体人事の皆様が直面する構造的な課題を整理し、その解決策、最後に導入事例という順でお伝えします。

当社は2016年3月創業で、先日ちょうど10周年を迎えました。人事領域のサービスを一貫して提供しており、現在では採用から定着まで人事領域の範囲をほぼ網羅しています。特徴的なのは、BPaaSという設計・運用代行サービスと、AIの活用です。あらゆる人事データを一つのプラットフォームで収集・管理できることが前提となりますが、これを継続的に収集し最新化し続ける運用がなければ意味がありません。当社ではカスタマーサクセスによる運用のご支援に加え、BPaaSチームによる運用代行対応も行っています。累計導入社数は4,000社を超え、業種・規模を問わずご利用いただいており、ITreviewでは「タレントマネジメントシステム部門」、「人事評価システム部門」、「エンゲージメントサーベイツール部門」などで顧客満足度ナンバーワンの評価をいただいています。

※ITreviewカテゴリーレポート「タレントマネジメントシステム部門」(2026 Summer)、ITreviewカテゴリーレポート「人事評価システム部門」(2026 Summer)、ITreviewカテゴリーレポート「エンゲージメントサーベイツール部門(大企業・中堅企業・中小企業)」(2025 Summer)

自治体を取り巻く環境変化から捉え直す

なぜ今、自治体にタレントマネジメントが必要なのでしょうか。理由は大きく三つあります。一つ目は採用競争の激化です。民間企業もキャリア採用に力を入れる中、自治体も職員に選ばれる組織であり続けなければ、人材が流出してしまいます。

地方公務員採用試験の受験者数は、この10年間で30%以上低下しています。

二つ目はキャリア観の変化です。この職場で成長できるか、目指すキャリアを実現できるかを職員自身が考えるようになっており、必要に応じて転職するという選択肢はもはや当たり前になっています。20代の転職者数は増加トレンドにあり、25〜34歳の転職希望者数も大きく増加しています。三つ目は行政サービスの高度化です。専門性の高い業務が増える中で、画一的なジョブローテーションや定期異動だけでは配置が満たしきれなくなっています。専門性を満たす人材を内部で育成する、あるいは外部から採用する取り組みが同時に必要になってきています。

現場で起きている課題を二つに整理する

こうした環境の中で、自治体人事が直面している具体的な課題は二つあると考えています。一つ目は、属人的な人事異動とデータ未活用です。

人事データを一つのプラットフォームで管理できていないため、あるスキルや経験を持つ職員がどこにいるのか分からない、本人の希望や適性が配置に反映されにくいといった状況が起こりやすくなります。二つ目は、若手離職の増加とエンゲージメントの見えなさです。

配属のミスマッチ、評価への不透明感、成長実感の欠如といった理由が挙げられますが、これは本人からの申告を待つだけでは見えてきません。感覚ではなくデータとして定点観測する必要があります。

この二つの課題に向き合う方法は、「配置」と「エンゲージメント」を一つのサイクルとして回すことです。データに基づいて配置を行い、配置後の状態をサーベイで計測し、そこで見えた課題をまた配置や育成に反映する。この循環をつくることで、初めて職員が活きて定着する状態が実現します。

実践のステップから活用の姿を描く

実践方法として、まずステップ1ではキャリア志向、過去評価結果、資格・スキル、研修履歴、勤怠データ、360度評価など、必要な人事データを幅広く収集し、常に最新化し続けます。

データ収集の効率化に加え、カスタマーサクセスやBPaaSチームがデータ最新化の運用を伴走支援します。
ステップ2・3では、組織診断サーベイを通じて職員のエンゲージメントを計測し、課題を早期発見します。

当社のサーベイは、単なる満足度調査ではなく、職場に対する「期待値」と「実感値」のギャップを可視化する点が特徴です。ギャップが大きい領域を特定した上で、より詳細な設問で状態を細かく把握し、次のアクションに落とし込みやすくします。
ステップ4では、収集・最新化されたデータをもとに、社内版生成AI「Brain」が戦略の実行を支援します。

たとえば「新しく営業職に2名異動させたいので適した人材をピックアップして」とチャットで指示するだけで在籍年数や推薦理由とともに候補者を提示してくれます。人事の知見が少ない担当者でも、データに基づく迅速な意思決定が可能になり、人事部門が組織力向上に貢献しやすくなります。

導入事例から運用のヒントを得る

自治体での導入事例として、神奈川県のある町役場様(人口約4.9万人、職員309名)をご紹介します。もともと導入していたシステムが人事評価制度の柔軟な変更に対応できず、8年間見直しがされていなかったという課題がありました。HRBrain導入後は、自分たちで柔軟に設計・変更できる運用へと切り替わり、3ヶ月でスムーズに移行、問い合わせもほぼゼロで済んだとのことです。同町役場様では、1on1面談記録の蓄積・活用や職員プロフィールの登録、組織図のシステム連携など、まずは柔軟に運用できるデータ基盤があってこそ、AIによる配置提案やエンゲージメントサーベイの活用も実現できると考えています。今後、自治体の人事にはますますスピード感が求められると思いますので、DXを進め、いかに効率的に業務を行えるようにするかが重要になってきます。