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がんばりではなく、楽しさを生む工夫が大事

公務員応援企画 INTERVIEW
公務員を応援するインタビュー企画、第4回はプロランナー川内優輝さん。“挑戦と継続”をテーマにお話しいただきました。

川内 優輝 氏
プロランナー(元・公務員)
1987年生まれ、東京都出身。学習院大学卒業後、埼玉県庁職員として県立高校に勤務。県庁職員として働きながら国内外のレースに参戦し、“市民ランナーの星”として注目される。2019年に退職しプロランナーへ転向。2025年4月、全47都道府県のレース出場を達成。現在も国内外で精力的にレースに挑み続けている。
©あいおいニッセイ同和損保
公務員時代は、いろんな業務を並行して進める毎日
── 県庁職員として10年間勤務されていたそうですね。当時はどのようなお仕事をされていたのでしょうか。
入庁して教育局に配属され、夜間定時制高校の事務職員として学校運営に必要な庶務全般を幅広く担当していました。
── 印象に残っている業務はありますか。
授業料や給食費の徴収は、特に記憶に残っています。なんとか未納をなくすために、クリスマスでもお正月でも督促状を送ったり、家まで徴収に伺ったりすることもありました。正直つらい瞬間もありましたね。
その他、高校の創立記念誌の制作という徴収業務とは違う向き合い方が求められる仕事もありました。資料を探し、構成を考え、学校の歴史を整理する。時間はかかりますが、ひとつの形にまとめ上げていく面白さがありました。公務員時代は、本当にいろんな業務を並行して進める毎日でした。
東京マラソンの翌日でも13時間勤務
── 2019年にプロランナーへ。生活はどう変わりましたか。
プロになって、ずっと憧れていた“出張族の生活”をついに手に入れました。公務員として働いていた頃は、どうしても動ける範囲に制約がありました。出張といってもほとんど県内、せいぜい東京に行くくらいだったのですが、いまは日本全国はもちろん、世界のどこにでも遠征ができるようになりました。目標だった、47都道府県走破を達成できたのは嬉しかったですね。
── 公務員の仕事とマラソン、当時はどのように両立されていたのでしょうか。
基本的に「マラソンは“趣味”」でした。大会の遠征についても、年間のレース予定はだいたいわかるので、4月の段階で有休の予定をすべて提出。繁忙期に重なれば調整し、年末年始やお盆など、みんなが休みたい時期は積極的に出勤していました。人間関係がよくなければ両立はできないので、そこはとても大事にしていましたね。
2011年の東京マラソンで日本代表を決めた走りをした翌日でも、13時間勤務です。願書受付の時期で特に忙しくて。それは、さすがにきつかったんですけど(笑)。
どれだけ走ってもマラソンは“趣味”。日本代表だとしても、本業が最優先という線引きを崩さなかったからこそ、10年間うまく両立できたのだと思います。
がんばりではなく、楽しさを生む工夫が大事
──とてもストイックに見えますが、挑戦を続けるためのコツはなんでしょうか。
挑戦というと「がんばる」「根性」というイメージがあると思いますが、僕はむしろ“メリハリをつけてがんばること”を大事にしてきました。
高校時代は、「やればやるほど強くなる」と思い込んで、しっかり休まずに怪我を悪化させたことがあります。それでも「やめる」選択肢はなく、強豪校に行かなければ楽しく走れるのではないかと思いました。あの経験で、初めて“努力が間違った方向だと、楽しさまで奪われる”ことを痛感しました。
大学に入ってからは、練習方法を根本的に変えました。週2回のポイント練習だけは必ずやる。それ以外の5日間は、自分で考えて調整する。強豪校のように量を積むやり方ではなく、自分が楽しく続けられる練習法を知ったんです。結果として、学連選抜として箱根駅伝にも出場することができました。
今でも怪我でスピードが出せない時期は、あえて最後尾からスタートしてみます。沿道の声援をじっくり味わったり、エイドステーションで普段なら手を伸ばさないものを食べてみたり。そうすると、同じレースでもまったく違う景色が見えるんです。「走れない自分」ではなく、「どう走れば楽しいか」に視点を移すだけで、気持ちが軽くなります。
ずっとストイックでいるのは、誰にとっても難しい。だからこそ大事なのは、「楽しさを取り戻すための小さな工夫」を積み重ねること。がんばりではなく、楽しさを生む工夫。それこそが、僕が挑戦を続けられた理由なんです。
楽しさを見つける工夫こそが、毎日を豊かにしてくれる
── 最後に、公務員の皆さんへ応援メッセージをお願いします。
僕自身、公務員時代の上司に「残業しているうちは一人前じゃない」と教えられてきました。もちろん、本当に忙しいときはどうやっても無理なんですけど(笑)。
だけど、その言葉を受けて業務フローを見直した結果、3時間かかっていた作業を1時間で終えられるように。この余白で、100周年記念誌づくりのような、普段の業務ではなかなか味わえない“挑戦”もできました。歴史好きという自分の興味も活かせて、とても楽しい仕事でした。これは、がんばりではなく、工夫がもたらした新しい挑戦だと思っています。
そして、公務員にはもうひとつの特権があります。それは、異動があることです。もし新しい挑戦をしてうまくいかなかったとしても、数年で環境は変わる。民間ではなかなか得られない、この“リセットできる仕組み”は大きな強みです。迷ったら、ぜひ挑戦してみてほしいと思っています。「楽しくする工夫」を前提にすれば、自分をつぶすことなく前に進めます。
挑戦は、がんばることじゃない。楽しさを見つける工夫をすること。その工夫こそが、毎日を豊かにしてくれると信じています。
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