近年、男性の育児休業・休暇取得が注目されている。国の少子化対策の一環として取り組まれており、男性の育休取得が女性同様になると、女性側の継続就業にも改善が期待できるだろう。「女性だけが就業を諦めなければいけない社会を変えて行こう」という動きが全国的に生まれ始めている。
国家公務員の育休取得率は年々上がってきている。そこで気になるのが、地方公務員男性の育休事情ではないだろうか。
今回の記事では全国の育休取得経験のある地方公務員男性にアンケートを行った。
仕事での混乱はあったのか、家庭及び仕事上での工夫は何か、結果として今、何を感じるのか…リアルな声を紹介していく。
【公務員男性の育休】
(1)【完全解説】公務員男性の育休、もらえる手当や取得のコツまで
(2)【男性育休~仕事編~】仕事の混乱は?取得してどうだった?経験者にアンケート!←今回はココ!
(3)【男性育休~家庭編~】育児は大変?家事の分担は?経験者にアンケート!
【仕事編】育休の取得にあたり、仕事上で困ったこと・大変だったことはありますか?
男性公務員が育休を取得するとなると、「大変そうだ」、「業務がまわらなくなるのでは」…などとぼんやりとした不安があるかもしれない。
しかし、実際にアンケートで聞いたところ、「特に困ったことはなく、順調だった」という声が半数を上回った。
一方で引き継ぎがなかなかうまくいかず、大変な思いをした人も。以下に紹介していく。
※カッコ内プロフィールは(本人年齢/育休取得時の子どもの年齢/育休取得期間)
特に困ったことはなく、順調だった
・2011年当時はまだ霞ヶ関でも育児休暇取得率が1%未満(日本全体でも1%台)とかなり低く、育児休業を取る風潮がなかった。ただ、上司が事情を理解してくれたことと、自分が後輩たちのロールモデルになってほしいと後押ししてくれたこともあり、取得できた。当時は東日本大震災直後の大混乱の時期だったこともあり、人事の配慮など調整に苦労されたと思う。(1回目:30歳/長男0歳/3カ月、2回目:32歳/長男2歳、次男0歳/育児休暇1カ月)
・私は保健師で、しかも母子担当でした。その係長から、母子担当は是非育休をとった方が今後にも繋がるとの事で、職場の理解が大きかったです!(29歳/長男4歳、長女3、次女0歳/1.5カ月程度、有休含む)
・短期だったのと、連絡も個人携帯でしていたのであまり不便は感じなかった。(33歳/長女6歳、次女3歳、三女0歳/約2週間)
・全休ではなく週休4日にし(※1)、2日に1回出勤できたので大きな混乱はありませんでした。職場のみんなも後押ししてくれてありがたかったです。しかし、同時にそれは道路課であったから出来たとも感じました。道路課以外で自身の経験した中では、生活保護や児童福祉、市民税では時期によっては難しいかもとも感じました。(33歳/長女0歳/約3カ月)
・育休取得の環境を整えてもらったこともあり、休業中に仕事の問い合わせが来ることは1度もなかった。引き継いだメンバーが優秀だった結果だと思う。(38歳/長女3歳、次女1歳/約1年間)
・実際に困ったことはほとんどありませんでしたが、職場の同僚、上司の理解が得られるかが一番不安でした。法令上の決まりのあるため、育児休業を取ること自体には立場上OKしてもらえたとしても、現場レベルではなかなか歓迎してあげられるだけの余裕がない、という職場も多い印象があったので、本当にとって大丈夫なのかという不安がずっとありました。
その不安は自分で解決したというよりは、職場の同僚・上司の方から、「職場のことを心配しなくて大丈夫だ」と常に声をかけてもらえたことが一番の安心材料になりました。また、育児休業を終えて復帰してからも、子どもの急な体調不良などがあった際には、休暇の相談にも前向きに乗ってもらえているのがとてもありがたいと思っています。(31歳/長男0歳/約4カ月)
引き継ぎがうまくいかず、大変だった
・正規の資格を持った代替要員が見つからなかった。属人化していた業務について、職場に出向いてサポートしなければならないことがあった。(37歳/長女0歳/1年間)
・なかなか上司が表立って、仕事の割り振りをしてくれなかった。(36歳/長女9歳、次女6歳、三女0歳/4カ月※現在進行中)
・約1カ月のうち、実際は頭2週間を産前産後休暇、後ろ2週間を育休として間に1週間出勤する週を作ったものの、その1週間が激務で、とてもまわっているとは言えない状態を作ってしまいました……(29歳/長男0歳/約1カ月)
・引継書を作成したが、抜け漏れがあり、度々職場から電話がかかってきた。また、育休取得にあたり人事からは「異動はしないよ」ということを事前に聞いていたため、私自身も復帰後は元の職場で一緒に頑張る気持ちでいた。しかし、実際は異動となったため、後任者は大変だったと思う。(34歳/長女2歳、長男0歳/4カ月)
【仕事編】育休の取得前に、仕事上で心がけたことや工夫した点はありますか?
育休取得期間は人によって様々だが、中にはこれまでにないくらい長期間の休暇となることもある。当然、残してきたメンバーや仕事が気になるだろう。
ここでは、育休取得にあたって、仕事上での工夫や心がけたことを紹介する。
早めのコミュニケーションでじっくり準備
・取得予定の約1年半前に取得希望を上司に伝達、課内異動し、育休取得がスムーズにいくように単独の担当業務を減らしてもらえた。(38歳/長女3歳、次女1歳/約1年間)
・関係者に対して育休取得を早めに周知し、打ち合わせ等は後任と一緒に参加するようにした。(34歳/長女2歳、長男0歳/4カ月)
・取得予定の1年前から休業を意識して業務の定型化を行った。(37歳/長男1歳/1年間)
・妻の妊娠安定期時に補佐、課長に報告。家族優先でいきたいため、時間休を使っていくため、仕事の割り振りをお願い。周りには、出産予定から4カ月前くらいに発表し、手伝ってもらうようにお願い。(36歳/長女9歳、次女6歳、三女0歳/4カ月※現在進行中)
負担が少ないよう引き継ぎを工夫
・いつ、妻が産気づくかわからなかったので、予定日付近は常に他のメンバーに引き継げるように、仕事をまとめてました。(29歳/長男4歳、長女3、次女0歳/1.5カ月程度※有休含む)
・関係者に育児休業取得を周知。重要な会議などは期間前後に実施。部下職員に期間中の仕事ができるよう十分に相談し、不在でも仕事が回るように調整。定期的に連絡。(40歳/長女0歳/約1カ月)
・農家の経営相談や栽培指導をする仕事なので、なかなか代役で対応できないため、仕事で付き合いのある人(農家)に、育休を取るので即時対応できないことがあるが、手が空いたときに対応する旨伝えていた。チームで対応できる仕事は引き継ぎを行った。(33歳/長女6歳、次女3歳、三女0歳/約2週間)
・引継資料を四半期ごとに更新するクセを付けていたのと、スタッフ制の職場だったので、1カ月くらい前から徐々に自分のウエイトを減らしてもらい、ソフトランディング。(1回目:30歳/長男0歳/3カ月、2回目:32歳/長男2歳、次男0歳/育児休暇1カ月)
出勤日をつくることで混乱を少なく
全休ではなく週休4日にする(出勤を月・水・金にする)という働き方が選択できたのでそれを選びました(※1)。当時は道路管理の課にいましたが、2日に1回出勤できるので大きな混乱もなく、普段のメモによる連絡と休む日は電話に出られるようにしておくことで大きな混乱なく3カ月を過ごすことができました。(33歳/長女0歳/約3カ月)
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育休を取ると仕事にどう影響するのか、実際の経験者の声から見えてきた。次回はいよいよ、「育休中、家庭内はどうだったか」について、声を紹介していく。
※ アンケートは公務員限定のオンラインプラットフォーム「オンライン市役所」の協力を得て実施
※1 「週休4日」は「地方公務員の育児休業等に関する法律」第10条にて定めらた「育児短時間勤務の承認」によるもの