近年、男性の育児休業・休暇取得が注目されている。国の少子化対策の一環として取り組まれており、男性の育休取得が女性同様になると、女性側の継続就業にも改善が期待できるだろう。「女性だけが就業を諦めなければいけない社会を変えて行こう」という動きが全国的に生まれ始めている。
国家公務員の育休取得率は年々上がってきている。そこで気になるのが、地方公務員の育休取得状況ではないだろうか。国家公務員は民間企業の模範となるべく、先駆けて育休を取得できるようになっているが、地方公務員の育休取得率はまだ低水準であるといわざるをえない。そこでこの記事では、男性地方公務員の育休制度について詳しく解説するとともに現在の取得状況を紹介する。
【公務員男性の育休】
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(2)【男性育休~仕事編~】仕事の混乱は?取得してどうだった?経験者にアンケート!
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(4)【男性育休】育休取得経験者から実践的アドバイス!
※本記事の情報は令和4年1月8日時点のものです。
国家・地方公務員は性別問わず育休を取る時代に
男性が育児休業・休暇を取ることに対し、数年前から度々メディアでも取り上げられてきた。しかし男性が育休を取るには、職場の文化やキャリアへの不安などが壁となり、普及までは至っていない。ようやく政府が動き出したのが令和2年。この年から国家公務員の男性職員が、育休を取得するよう様々な取り組みをはじめた。
政府主導で動き出した取り組みで、国家公務員の男性職員の育休取得率は、令和2年4月から6月に子どもが生まれた人で99%にも。では地方公務員はというと、令和7年までに育休取得率を30%にすることを目標としており、大きな差があることが分かる。とはいえ、政府が主導し、国家・地方公務員は性別問わずに育休を取る時代に動き出しているのは確かである。
男性地方公務員の育休取得状況を解説
地方公務員の男性職員の育児休業・休暇取得率は近年増加傾向にある。育休は「女性だけの制度」という認識だったものが、国をあげての少子化対策の一環として男性も育休を取ることを推進しているので、少しずつ理解されやすい環境になっている。
ただし、地方公務員の育休取得率は、2019年度のデータで8.0%と対前年比より増加(+2.4ポイント) しているものの、国家公務員の取得率(平成30年12.4%)と比べると、やはりまだ低水準である。 取得期間も1カ月以下が5割以上となっているので、地方公務員は国家公務員と比べて取得率が低いのが現状だ。
育児休業等の取得促進のために大切なこととは
育休等の取得促進のためのハンドブック「イクメンパスポート」が発行されている。発行しているのは内閣人事局で、国家公務員の男性職員に対して作成しているが、WEB上で誰でもダウンロードできる。
国家公務員の間では育児休業・休暇の制度を推進していても、地方公務員の職場となると育休はまだまだ取りづらいことも。しかし、このような職場こそイクメンパスポートが必要だろう。イクメンパスポートの中身は、オムツ替えの方法や抱っこの仕方など、赤ちゃんのお世話のコツに加えて、育休に対する課題と解決法など、育休の取得が定着するよう親目線だけでなく、上司目線や職場の同僚目線でも書かれている。職場でより多くの人がこれを目にすることで、育休への理解は深まるだろう。
地方公務員の男性職員は、地域によってはいまだ育休が取りづらく、取得しても「キャリアに傷がつくのではないか」など不安がある人もいるかもしれない。そのようなマイナスのイメージがあると男性の育休の取得率向上の妨げになると考えられる。イクメンパスポートの活用で、なぜ今男性の育休が必要とされているのか、それがどのように社会問題の解決につながるのかなど、国家が直面している課題について職場の中で話し合う機会になることを期待したい。
育休の取得が当たり前の世の中になるには1人1人の意識が大切だ。イクメンパスポートには、実際に育休を利用した人の声や育休を取得した部下を持つ人からのメッセージなども記載があるので、とても参考になる。
何日取れる?給料はどうなる?地方公務員の育休Q&A
一昔前とちがい、男性が育児休業・休暇を取得し、子育てに参加したいという声が聞かれるようになった。そこで気になるのは男性の育休制度。よくある質問をQ&A形式で解説する。
地方公務員でも育休は取れる?
答え:地方公務員でも育休は取得可能。
育休は何日取れる?
答え:「地方公務員の育児休業等に関する法律」より、子が3歳になる日まで、育休を取得できる。
育休中の給料はどうなる?
答え:育休期間中は、給与はでないが共済組合から育児休業手当金が支給される。ただし、この育児休業手当は民間企業と同じ「子どもが1歳になるまで」しか支給されない。
育児休業手当の支給額は、育休の取得期間によってもらえる金額が変わる。育休の取得開始から180日に達するまでの期間をA、それ以降〜1歳になるまでをBとすると、それぞれ以下の金額が支給される。
A:標準報酬月額の1/22の額の67%
B:標準報酬月額の1/22の額の50%
【支給額の例】
・標準報酬月額が25万円の場合
①A:育休開始から180日間
1日の支給額:(25万円×1/22)×67%=11,360×0.67=7,611円
②B:A期間終了後〜子が1歳になるまで
1日の支給額:(25万円×1/22)×50%=11,360×0.5=5,680円
仮にA期間の1カ月を20日で計算すると、[7,611円×20日]で152,220円/1カ月、
仮にB期間の1カ月を20日で計算すると、[5,680円×20日]で113,600円/1カ月が支給される。
(参考:「地方職員共済組合ホームページ」https://www.chikyosai.or.jp/division/short/scene/works/01.html)
令和4年からはじまる「男性版産休」でパパも育休を取りやすい社会に
令和3年6月に育児・介護休業法が改正され、令和4年4月1日から段階的に施行される。子どもが産まれてから8週間以内に最大4週間の休みを取得できる「男性版産休」が新設となるが、今回の制度は地方公務員は対象外となる。地方公務員に適用されるのは、「育児休業法第2条第1項」及び「職員の育児休業等に関する条例(以下、「育休条例」とする)第2条」だからだ。とはいえ、民間の法令と大きく違うということではなく、地方公務員の育児休業条例も随時見直されているので、今回の育児・介護休業法の改正内容は把握しておくと良いだろう。
雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化
<主な改訂ポイント>
①事業主は、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備を講じなければいけない。
②妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置
今後は育休と男性の育休が円滑に行われるように、事前に研修を行ったり相談窓口を設置したり、より取得しやすくなるよう対策を講じなければいけない。(令和4年4月1日施行)
地方公務員は、この法令には準じないが、国の動きが男性の育休を積極的に取得し、少子化対策や女性の継続就業に貢献する方向で進んでいるので、地方公務員も同じように男性の育休を積極的に取得できるよう取り組みが期待できる。
有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
<主な改訂ポイント>
これまで、育休の場合、以下の①②のときに取得できたが、令和4年4月からは②のみになった。
①「引き続き雇用された期間が1年以上であること」
②「1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでないこと」
公務員は今回の改正に関係なく、育休条例にもとづき、3歳に達しない子どもを持つ一般職の男女職員は、原則として取得できる。
産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
<主な改訂ポイント>
男性の育休取得を目的とした、産後パパ育休が令和4年10月に創設される。これは、子が1歳(最長2歳)まで取得できる育休制度とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで育休を取得できる制度だ。
この点でいうと公務員の男性職員は、すでに3歳に達しない子どもを持つ一般職の男女職員は、原則として育休を取得できるのと、育児参加休暇といって、産後8週間の間に5日以内の特別休暇(有給)が取得できる制度がある。
育休の分割取得
<主な改訂ポイント>
育休の分割取得が可能になる。現行は、育休制度の分割はできないが、令和4年10月からは2回に分割して育休および産後パパ育休を取得できる。
公務員も、令和4年4月から育休を分割取得できるように制度を変更する方向だ。子どもが3歳になるまで原則1回しか取れなかった育休を最大4回に分割して取得できるようになる。
育休取得状況の公表の義務化
<主な改訂ポイント>
従業員が1000人以上の企業は、育休等の取得状況を年1回公表することが義務付けられる。公表内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」だ。インターネットで誰もが閲覧できるホームページなどで公表しなければいけない。
この改正については、すでに国家・地方公務員の育休等の取得状況はデータ化および開示しているので、民間は追って開示していく次第だ。
地方公務員の男性がスムーズに育休を取得するには事前準備がカギ
国家公務員と比較して、地方公務員男性の育休等の取得率は低いのが現状だ。だが政府が一丸となって男性の育休の取得率を上げようとしているので、以前より周囲の理解はあるのではないだろうか。
そうはいってもまだまだ地域によっては「男性が育休取るの?」と懸念顔で見られることもあるだろう。長い歴史の中で培われた、女性は家で家庭を守り、男性は外で働くという固定観念は根強くある。今でこそその考え方は古いといわれ、社会的にも男性女性関係なく活躍する時代といわれている。それでも、今もなお「産休・育休は女性がとるもの」という意識が根づいている職場もあるのが現状だろう。そこで、男性の育休を取得するには、職場での事前の準備がカギになる。以下、男性がスムーズに育休を取得するために必要なポイントを紹介する。
・日頃から職場で良好な関係を築く
・男性が育休を取得することに理解を得る
・育休中の業務をしっかり引き継ぐ
日頃からの職場での良好な関係が重要
男性・女性に限らず、職場で新しいことや何かにチャレンジするときには、周囲の協力があると成功しやすい。今回の男性の育休にしても、「男性で初めて育休を取った人」というポジションになるかもしれない。そうなると、初めての体験を周囲もすることになるので、応援してもらえるかどうかで、その後の風通しの良さや復帰後の業務のやりやすさが違うだろう。そのため育休を考えている人は、日頃からの職場でのコミュニケーションをしっかりと取り、良好な関係を気づいておくことが大切である。
男性が育休を取得することに理解を得る
男性が育休を取得することに理解を得られない場合もあるだろう。それは誰が悪いわけではなく、これまでの社会全体の雰囲気がそうさせているのかもしれない。しかし、現在は国をあげて男性の育休取得率をあげようとしている。国家公務員の育休取得率が取り上げられている中で、次に注目されるのは地方公務員であると考えられる。少なからず職場でも育休などについて話題がでたこともあったのではないだろうか。
男性の育休取得について、賛成意見もあれば反対意見もあるだろう。賛成意見が多ければ育休は取得しやすいが、逆の場合もありえる。それでも、いつか育休を取得したいと考えている場合は、周囲の意見に流されず理解を得られるよう少しずつ行動しておくと良いだろう。
育休中の業務をしっかり引き継ぐ
育休の取得が決まったら、休業に入るまでの期間でしっかり引き継ぎをしよう。なんとなく引き継ぎをして、万が一業務が滞るようなことがあれば、職場に迷惑がかかるだけではなく、育休明けの自分の立場や後に続いて「育休を取ろう」とする人たちにも影響が出る。そんなことにならないよう、しっかり引き継ぎをして、気持ちよく育休に入るのが良いだろう。
「大変そうだ」「業務がまわらなくなるのでは」…などの不安にお答え。
次回へ続く