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【後編】給与、退職金はどう変わる?公務員の定年延長、完全解説!

「将来のために資金づくりをしたいけど、何から手を付けていいのかわからない…」「資産運用したいけど、投資はちょっと怖い」…

元公務員で、現在は公務員専門のファイナンシャルプランナーとして活躍している岩崎大さんに、気になる「公務員のお金」について本企画。

今回は、2023年度からいよいよ始まる「公務員の定年延長」について。

定年延長になると、給与は、退職金はどうなる…?気になる話題について、前後編に分けてお届けする。

定年延長で退職手当はどうなる?

定年延長に伴い、退職手当も影響を受けます。ライフプラン上、影響が大きいのは「支給時期」と「金額」です。
 

退職手当の支給時期は後ろ倒しに

現行の制度下では、再任用で働く・働かないにかかわらず、60歳の定年退職後に退職手当が支給されます。一方、定年延長の場合は切れ目なく働くので、延長された定年後まで退職手当は支給されません。

例えば、63歳で定年退職となった場合、60歳では支給されず、63歳の定年退職後に支給されます。支給が後ろ倒しになるということですね。

「60歳くらいで自宅を改築するから、退職手当を使おう」と考えていた場合、定年延長によって計画が数年ズレてしまいます。資金計画にはご注意ください。
 

退職手当の計算方法について

退職手当は「基本額」と「調整額」から構成されます。大部分を占めるのは基本額で、調整額は役職による上乗せのようなイメージです。この記事では基本額について解説します。

現行の基本額の計算式は、「①退職時の給料月額×②支給率×③調整率」です。退職時の給料月額と支給率が高いほど有利なことが分かりますね。なお、③の調整率は官民格差の是正のために用いられ、2022年1月時点では83.7%となっており、職員による差はありません(約5年ごとに見直されます)。

②の支給率が決まる要素はざっくり2つ。「勤続年数」と「退職事由」です。勤続年数が長いほど、支給率も高くなります。また、退職事由は自己都合よりも定年のほうが支給率が高くなります。なお、青天井ではなく上限が設定されています。具体的には「定年退職の場合は35年勤続」で支給率の上限に達します。

ここまでを踏まえて、定年延長後の退職手当についてポイントを2つお伝えします。
 

給料が7割になっても、退職手当へのマイナス影響はない

定年延長後の給料月額は、7割に引き下げられる見込みだとお伝えしました。もしも、7割へ引き下げられた後の給料月額だけを使って退職手当が計算された場合、現行制度よりも損してしまいますよね。

ですが、その心配は無用です。というのも、現在の定年60歳の年度までの期間分(7割になる前)と、61歳の年度以降の期間分(7割になった後)とに分けて計算されるからです。具体的な計算式は割愛しますが、「定年延長に伴う退職手当(基本額)のマイナス影響はない」のでご安心ください。
 

延長された定年前に退職したら減額される?→されません

例えば、64歳定年となった方が61歳に自己都合で退職した場合を考えてみましょう。素直に考えると退職事由が「自己都合」なので、支給率が下がってしまいそうですが…大丈夫です。延長後の定年退職年齢よりも前に自己都合で辞めたとしても、当分の間、退職事由は「定年」扱いとして支給率が算定されます。
 

定年延長が公務員のライフプランに与える影響

定年が延長されることで、公務員世帯のライフプランにも様々な影響があると思われます。
 

生涯賃金が増える

現役期間が延びるので、生涯賃金も増えます。おおまかな試算ですが、年収500万円の場合、その70%は350万円。5年間延長されるとして1,750万円ほど生涯賃金が増えます。ご夫婦で公務員の場合はさらに増え、老後のキャッシュフローの改善が見込めます。

60歳代でお子さんの学費がかかる世帯や、住宅ローンの返済が続く世帯もあるかと思います。そんな場合でも就労収入があれば、貯蓄を取り崩さず、世帯の資産寿命を延ばすことができるかもしれません。
 

年金が増える

「将来もらえる年金額が不安です」というご相談をよくいただきますが、将来の年金を増やす手っ取り早い方法は、厚生年金に加入して長く働くことです。定年延長で長く働けば、納める厚生年金保険料が増え、将来の年金額も増える見込みです。

厚生年金だけでなく、基礎年金にも影響があります。基礎年金は20歳から60歳までの40年間、保険料を納付すれば満額が支給されますが、免除期間などがあり、納付期間が40年に満たない場合は減額されます。

例えば、大卒者で学生時代は特例免除を受けていた場合、大学卒業後60歳の定年まで働いても40年に満たないため、基礎年金は満額もらえません。そんな場合でも、定年延長で厚生年金に加入して働けば、基礎年金を増やすことができます(実際には基礎年金ではなく「経過的加算」という基礎年金相当額が厚生年金にプラスされます)。

このように、定年延長は将来の年金額を増やすことにつながります以前の記事でもお伝えしたように、年金の本質は長生きリスクに備える保険です。長く働くことで、長生きリスクをより手厚くカバーできるようになる、とも言えるでしょう。
 

健康保険(医療費)への影響

公務員の共済組合は、医療費の自己負担軽減メリットが非常に強力です(詳しくは以前の記事をお読みください)。退職後に再就職しなければ、基本的には国民健康保険に加入することになるため、共済組合のメリットが無くなりますが、定年が延長されれば、引き続き共済組合に加入します。つまり、「定年延長=医療費の自己負担軽減メリットも延長される」ということです。
 

資産運用への影響

現役期間が延びることで、資産運用の戦略にも影響が出てくるでしょう。一般的に資産運用で取れるリスクは、残りの現役期間に反比例します(もちろん個人のリスク許容度も大きく影響します)。

入庁したばかりの若い職員の方なら、定年までの現役期間がまだまだ長く残されており、資産運用で多少失敗しても生涯賃金でリカバーできる余白があります。

一方で、定年間際の方の場合、生涯賃金があまり残されていないため、資産運用の失敗をリカバーする金銭的体力が相対的に低くなります。

定年が延長されれば現役期間が延びるので、リスクのコントロール方針も再検討することができるかもしれません。iDeCoの加入可能年齢も拡大が予定されていますし、資産運用の在り方を考える良い機会かと思います。

公務員の資産運用については、「つみたてNISAやiDeCoは後回し!公務員が最優先で取り組むべきお金のハナシ」という記事をお読みください。
 

まとめ

それでは、今回の内容のまとめです。

・定年延長は2023年度から段階的に実施。1963年4月2日以降に生まれた方は影響を受ける。

・定年延長後の給与水準は従前のおよそ7割だが、再任用の場合よりは増える見込み。

・退職手当へのマイナスの影響はない。

・定年延長による影響は、公務員世帯にとっておおむね好ましい。

・詳細は自治体の条例改正を待とう。

 

生涯賃金や年金、健康保険の観点からは、定年延長は歓迎できるものだと思いますが、「そんなに長く働きたくないな」という方もいらっしゃるでしょう。定年延長となった後に自己都合で退職してもペナルティはありませんし、65歳までは再任用として働くこともできます。

延長された定年いっぱいまで働く、少し早めに退職する、完全リタイアはしないで再任用で働くなどなど…選択肢が増えたことを前向きに捉えてみてはいかがでしょうか。実際にどのようなワークスタイルを選択するかについては、ライフプランを立てて検討するのが近道です。定年延長をきっかけに、ぜひご自身やご家族でライフプランを考えてみましょう。
 

「職業等によって掛金等に違いがある」という特徴があるという「iDeCo」。
次回へ続く

【第5回】 公務員がiDeCoを始める前に
知っておくべきポイント

 

 


岩崎 大(いわさき・だい)

公務員専門FP事務所代表。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFP®。

1984年生まれ。熊本県出身。自治体職員として、生活保護・地域おこし・防災・選管・児童福祉などの業務に携わる。在職中にFP資格を取得し、2017年に退職・独立。公務員世帯に特化した独立系FP事務所を運営中。

ブログやメルマガ、YouTubeなど各種メディアで「公務員にとって本当に役立つお金の知識や情報」を発信中。YouTubeチャンネル「公務員専門FP」はチャンネル登録者7,000名(2021年10月時点)。
 

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