身の回りの片づけは心の片づけ。職場や家庭をスッキリすることで、効率アップ・自己成長・人間関係の改善など。片付けがもたらす効果は心理的にも効果がある。そんな職場や家庭の「日々を整える片づけ術」をテーマに、元・自治体職員で、現在はオフィス業務効率化コンサルタントとして活躍している長野ゆかさんに連載の執筆をいただいた。
第1回目は「年末の大掃除と片づけのコツ」について。目の前の散らかったコトやモノを片づけて新しい1年を迎えていただきたい。
年末、掃除するだけではもったいない?
今年ももう終わりですね。この時期1年の汚れを落とし、すっきりと新年を迎えるため、大掃除に取り組まれる職場も多いのではないでしょうか。また大掃除というほど時間をとれない部署も増加傾向にありますが、それでも自分の机周りをいつもよりも整える方が多いと思います。
そこで今回は大掃除の作業を効率よく行う方法、さらにその際一緒にした方が圧倒的に作業効率良くメリットも大きい「片づけ作業のコツ」の両方をご紹介いたします。
掃除と片づけを別ととらえるとうまくいく
そもそもですが、年末大掃除といいながら、多くの方が片づけをしていることはご存じでしょうか。この話をすると「え、掃除と片づけは違うの?」といわれるのですが、まずはここを抑えることが、効率よく作業を行うための第1のポイントです。「美化活動」としてひとまとめにされがちですが、簡単にいうと掃除は「ほこりや油など、汚れを落とすこと」で、片づけは「どこに何を置けば使いやすいかのために、モノを動かすこと」です。そのためすべき作業は、全く別物です。
例えば、紙ごみである有価物を括り運んだり、乱雑に積みあがった書類や散らかったモノを整えたりしている作業は、片づけ。運んだ後のスペースを、掃いたり拭いたりと汚れを落とす作業が掃除です。年末大掃除「めんどくさいなぁ」と考えるだけでおっくうになるのは、これらすべての作業を一つ=膨大な作業とイメージでとらえていることも原因の一つです。別と考えれば「最終日の2日前に片づけをして、最終日は掃除をする」こんな風にステップに分けて、スケジュールを組み、余裕をもって進めることができます。
片づかない職場は年間500万の損失
掃除で清潔な状態になるときに、一緒に片づけを進めると、探し物の時間を減らしたり、モノの出し入れがスムーズになったりするため、業務効率が上がります。ちなみに探し物の時間は1日一人平均20分といわれています(2017年コクヨ株式会社調べ)。
ちなみに職場全体で、一人1日5分の探し物をしたと考えたときでも、5分×100人(職員数)×約200日(年間)で、約1666時間の損失。ここに時給を3,000円と仮定した場合、組織全体では500万円の損失となります。(澤一良著:1番わかりやすい整理入門より)
実はほかにも、不要なモノを置いているスペースにかかる維持費、モノの管理が行き届かないがゆえに発生する消耗品の2度買いなど、片づいていないことで職場に与える損失は、経済的効果も非常に大きいのです。私はこれらを改善するための職場の環境改善コンサルタントであり、研修では、単にすっきり気持ちよいためだけの美化活動ではなく、業務の一つと認識いただくようお伝えをしています。こうして見えない損失を数値で可視化すると、掃除と一緒に片づけも進めたくなりますよね。
作業時間10分…ほとんど時間が取れない方の作業のコツ
ただ「では、片づけから徹底的にしましょう!」というのには、時間がない。そこでまず、10分も時間が取れないかも…という方にお勧めの方法をご紹介します。最低限かつ優先的にしていただきたいこと、それは「明らかに不要なモノを、手放す」ことです。捨てる、まだ使えるなら共通消耗品置き場に戻す、私物なら持って帰るもよいでしょう。身の周りからモノを減らすことを意識してください。処分や手放すだけなら数分もあればできますよね。シンプルな作業ですが、モノは一つ減れば一つ分管理が容易に、そして掃除もしやすくなるなど効果があらわれます。
作業時間10分以上、確保できる方へ
次に、10分以上は確保できるかも…という方は、「1カ所のものを一気に全部出す(よける)→その場所を掃除(拭く)→戻す」に、チャレンジしてみてください。
例えば、いつも使っている机の上なら、奥に置きっぱなしの書類やかごを、全部一気に移動させます。隣の机、椅子の上、いったん紙袋の中でもOK。机の引き出しなら1段分を、全部出します。何もない広い状態・空っぽの状態にしましょう。その際、1つ1つただ動かすのではなく、両手を使いてきぱきと、数分以内によけることもコツ。短時間で結果が出る方が面白くやりがいがあるからです。もちろん、これも業務の一つと考えるなら、時間を意識して動くのは当然ですね。
そしてここからが掃除です。何もない状態なら、拭き作業は数分もあれば完了します。奥や隅の細かなごみやほこりまで、全部取り除きましょう。掃除は奥から手前へ、上から下へが2度手間にならない鉄則です。このとき雑巾などの道具は、事前に準備も行っておくと効率がいいですね。使い捨てのお手拭きやおしぼりなど、机やカバンの隙間にあったら、それを使ってください。そのお手拭きも使用して手放せるので一石二鳥です。
掃除が終わったら、よけたものをもとの場所に戻します。このときに「使用済みの付箋・おやつのごみ、出なくなったペン」などは、ゴミ箱へ。「職場では使わない私物のキーホルダー」も不要なので机に戻さない。これが片付けでいう「整理=分ける」作業です。この作業が苦手な方は、1度「次いつ使うかを想定する、1年間使わなさそうなら机に戻さない(持ち帰る・共有物として共有スペースへ)」を仮基準の1つとして、考えてみてください。もし、何1つ処分がなかったとしても、掃除は隅々まで完了するのですっきりしますし、不要なものが1つ、1割でもでれば、見た目にも変化が現れるので、達成感もあるでしょう。全部出すということは、モノの停滞を防ぐ効果もあります。停滞ということは利用シーンがなく、その場所から全く動かない状態であり、期間が長引くほど、ほこりや汚れがたまる原因になります。同じ場所に戻してもよい前提で良いので、たとえ年1回でも取り出して汚れを落とす。これだけで効果は絶大です。
以上で1ヵ所の、掃除も片付けも完成です。机の引き出し1段なら、全だし3分、掃除3分、戻すのに3分と、てきぱき動き10分以内で終えるようイメージしてみてください。スケジュールに余裕があるなら、1日目は机の引き出し上段、2日目は中段、最終日に机の上。こんな風にお昼休み10分を使いながら、年末1週間スペースごとに片づけと掃除をセットで進めていかれると、1週間で5か所50分、1時間かけずに机の作業完了です。
年末だからこそみんなで作業、職場全体の作業効率もUP
年末作業の良いところは、他の職員も一緒に作業時間がとりやすいため、職場全体の作業効率が非常に良いことです。各々が自分の机だけを個別に作業すれば、当然、雑巾作業×4回(人)。だけど同じ島のメンバー全員が、一斉に自分の机の上のものをよければ、机を拭く作業は一回(人)で完了します。他にも、処分を悩むモノの相談がその場でできたり、重いモノも協力して運べたり、倍以上のスピードで作業は終了します。また、役職や年齢関係なく短時間で同じゴールに向かって取りかかれるので、普段あまり接しない人たちとのコミュニケーションがはかれるというメリットもあります。
年始の気持ちよさのために、今の気持ちの持ち方をプラスに
掃除や片付けには技術やノウハウも存在しますが、やはり大事なのはとらえ方、気持ちの持ち方です。「めんどくさいけど、年末だからしなければならない」「完璧にやり切らなければならない」と思うよりも、来年1年仕事をスムーズに進めるための準備ととらえる・元の場所に戻すのは次使う人への思いやりだと考える。無理なくできる範囲で人間関係よく余裕を持って進めることも、成功の秘訣です。前向きな気持ちとすっきりした環境で、来年を迎えられるように、掃除・片付けに取り組んでみてください。
プロフィール
株式会社オフィスミカサ 代表取締役
長野 ゆか(ながの・ゆか)
大阪府生まれ、大阪府内中核市にて情報システム部門所属、15年勤続を経て独立。
現在は、文書(書類・データ)ファイリングを中心に、オフィスの環境改善・効率化などを指導。1か月で5.2トンの削減の実施。各社企業理念に沿った環境改善→業務改善(モノからコトへ)を促し、全体の業務効率アップを行う。
研修講師としては、オフィス向け(環境改善、接遇、ビジネスメール)から、家庭向け(ホームファイリング®・子育て・シニア片づけ講座)まで様々なテーマで登壇。大手企業、大学、弁護士会、自治体まで多数。述べ受講生は5,000名以上。プライベートでは、小学1年生から高校生までの3児の母。
保有資格
一般社団法人日本経営協会 情報資産管理指導者
一般社団法人ハウスキーピング協会認定 整理収納アドバイザー1・2・3級講師(全国24名) 他
著書
『実践! オフィスの効率化ファイリング』(DOBOOKS / 同文舘出版)