地球環境における課題解決に向けた動きが世界中で加速する中、平成30年に「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を行った亀岡市。“世界に誇れる環境先進都市”に変貌すべく、使い捨てプラスチックごみの排出量を令和12年までにゼロにする計画だ。実現に向けた施策の1つ、令和3年1月施行の「プラ製レジ袋提供禁止条例」について話を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.16(2021年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
川に散乱したごみ問題をきっかけにプラスチックごみをゼロにすると宣言。
京都府の中西部に位置し、市内を流れる保津川が観光地として有名な同市。プラごみゼロへの取り組みは、川下りの船頭の行動から始まったという。「大雨などでいったん水位が上がると、川岸にペットボトルやレジ袋などが散乱し、ひどい光景でした。見かねた船頭さんたちがごみ拾いを始めたけれど、追いつかなかったそうです」と同市の山内さん。
平成20年には「NPO法人プロジェクト保津川」が誕生し、住民や企業で清掃活動を開始。その動きを受けて、同市は内陸部の自治体で初の「海ごみサミット」を開催した。その後、市長が環境先進都市を目指すビジョンを示し、平成30年のかめおかプラスチックごみゼロ宣言に至ったという。
「市が思いつきで脱プラをやっていると勘違いされることもありますが、実は14年以上にわたる市民の活動が礎にあるのです。ただ、ボランティアだけでは解決しない問題だと実感し、宣言とルールづくりに踏み切りました」。
プラ製レジ袋提供禁止条例の施行にあたり市民や事業者との対話を重ねた。
令和3年1月には全国で初めて、小売店でプラスチック製レジ袋の提供を禁止する条例を施行。すでにレジ袋は有料化していたが、条例により有償無償を問わず禁止とした。「身近なレジ袋の問題に切り込むことで、使い捨て文化に対する意識を変えたかったのです。しかし、関係者の理解を得るために大変苦労しました」と明かす。条例の制定に向け、産官学30以上の団体で構成する協議会を設置。当初は、事業者から「お客さまが来なくなったら困る」「そんなのは無理だ」など厳しい意見が多数を占めた。だが、対話を重ねるうちに事業者から「消費者の理解があればレジ袋を禁止できるだろう」という声が上がり始め、「先に市民のコンセンサス(同意)を取ることが肝だと気づいた」という。
そこで地域の自治会を中心に説明会を28回開催し、総勢800人を超える住民に直接説明を行った。少なからず厳しい言葉も飛んできたが、丁寧に説明を続け、最後に条例に関してアンケートを実施したところ、賛成が7割以上という結果に。「反対の声が大きく聞こえがちですが、実際は多くの人に理解してもらえていたと実感しました。全てにおいて最初は逆風しか感じなかったのですが、だんだん追い風に変わっていきました」。
また、「100人会議」と題して住民とともにプラごみについて考える機会を設け、シンボルになる独自のロゴマークを制作するなど、環境への意識を広く浸透させていったという。
エコバッグ、マイボトルなど身近な活動を楽しく推進。
同市では、気負わず環境への取り組みに参加できるプロジェクトも広く展開している。特に、廃棄するパラグライダーの生地を再利用したエコバッグ「HOZUBAG」(写真下)の制作・販売は好評で、地域経済の活性化につながっている。ほかにも、マイボトルの持参を促すために、公共施設や小中学校を中心に給水サーバーを設置したり、学内外で子どもへの環境教育を行ったりするなど、様々な企業と連携した取り組みも進んでいる。
住民の意識の高まりによって、同市のマイバッグ持参率は令和元年4月の53.8%から、プラ製レジ袋提供禁止後の令和3年2月には98%に達した。「“令和12年までにプラごみゼロ”という目標に向かって、これからも皆さんが気軽に参加できる事業を色々と展開していきたい」と意気込んでいる。
課題解決のヒントとアイデア
1.事業者との連携を進めるためには最初に住民の理解を得ることが重要
事業者は、参加に反対しているのではなく、お客さまが離れることを懸念している。まずはお客さまである住民に賛同してもらうことが重要。事業者の心配を払拭できればプロジェクトは加速する。
2.“環境保全”を押し出しすぎずきっかけの輪を広げていく
環境保全を前面に出すとハードルが上がるので、気軽に参加しやすい取り組みにすることがポイント。エコバッグのプロジェクトは、オシャレなデザインにしたため世代を問わず人気を集めた。
3.出発点から議会と意識を共有しともに施策の実行スピードを上げる
かめおかプラスチックごみゼロ宣言は、市長と市議会議長の連名で出したことが特徴だ。最初の段階で議会の同意を得て、一緒にやっていくという意識を持つことでスムーズに進められた。
亀岡市
環境先進都市推進部 部長
山内 剛(やまうち つよし)さん
職員自身が“絶対にやる”という強い信念と覚悟を持って進めていくことが大事です。当市は人口8万7,000人程度の中規模都市ですが、覚悟があれば、どんな自治体でもこのような取り組みが実現できると思います。