ジチタイワークス

鹿児島県大崎町

“リサイクル率日本一”のまちの住民が選択した、持続可能な未来。

自治体が環境問題に取り組むにあたっては、住民の理解と協力を得ることが最も重要といえるだろう。大崎町では家庭ごみを27品目に分別しており、資源リサイクル率は8割を超えて13回の全国トップに輝いている。取り組みのきっかけやプロセス、住民と一体となって進めるためのポイントなどについて、大崎町の松元さんに話を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.16(2021年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

埋立処分場のひっ迫をきっかけに、検討した3つの選択肢。

「このままでは計画より早く埋立処分場が埋まってしまう、その現状を住民と共有することから始めました」と松元さん。かつての同町は、焼却炉がないといった事情もあり、排出される全てのごみを最終埋立処分場に埋めていた。この処分場は当初、平成16年まで使用できるはずだったが、排出されるごみの量が計画時の想定をオーバー。同年までもたないことが判明したことから、至急対策を打つ必要に迫られた。

まず挙がったのは、焼却炉をつくる案。建設費は国からの補助でなんとかなるが、維持費が年間1億5,000万円ほどという試算だった。当時の埋立処分経費は年間9,000万円弱。大幅なコスト増となり、次世代に負担をかけ続けることになる。

次に検討したのは、新たに埋立処分場をつくる方法だ。「当時は黒い袋に生ごみやプラスチックなど何でも入れて捨てていたため、処分場には強烈な腐敗臭が漂い、無数のカラスが群がる劣悪な環境でした。迷惑施設と呼ばれる処分場を新たにつくらせてもらえる場所はありませんでした」。

住民と分別リサイクルの道を選択し、450回もの説明会を開催。

最後に残された道は、既存の埋立処分場の“延命化”だ。それは、ごみを分別してリサイクルすることで、埋め立て量を減らす方法だった。しかしこの方法は“住民の賛同と協力”が必要不可欠。そこで同町は、既存の住民団体である衛生自治会を、ごみの分別・リサイクルの取り組みを主とする組織にリニューアル。その際、地域の取り組みに熱心な住民たちに同会の理事への就任を依頼し、中心的な役割を担ってもらった。「地域を代表する皆さんに、自分たちの問題として受け止めてもらい“分別回収をしよう”と決意してもらえたことがポイントでした」と振り返る。その後も同会と協力し、すでに分別リサイクルを行っていた自治体や、リサイクル企業へ研修に出向くなど、意欲的に学びながらシステムを整備していったという。

また、150グループ存在する集落を対象に各3回、計450回の住民説明会を3カ月間に集中して開催。多くの人に出席してもらわねば意味がないと、日程は住民に都合を聞きながら調整。「一部の住民から不満が出ると、同席していた理事が説得してくださる場面もあり、徐々に理解が広まりました。いくら行政が計画を立てても、住民の皆さんに賛同して動いてもらわないと分別は始まりませんから」。

一方、役場内でも全職員が研修を受講し、分別開始から1人1カ所の衛生自治会を担当。資源ごみ回収日には朝から現場に行って「これは何ごみ?」といった住民の質問に答えたという。さらに同会では年4回独自の広報紙を発行し、詳しい分別方法などを紹介することで周知を徹底した。

リサイクルのまちから、世界の未来をつくるまちへ。

平成10年に缶・ビン・ペットボトルの分別から始めて、今では27品目を分別。ごみステーションごとに衛生自治会が出し方や時間を決めるなど、住民主導で進めている。リサイクル事業においては雇用や収益も生まれており、懸念されていた埋立処分場は今後40年ほど使える見込みだ。

また、インドネシアのごみ問題解決のために技術協力を実施。企業や研究機関と協働し、紙おむつの再生など、さらなるリサイクル率アップにも取り組んでいる。「当町への視察は年間80件を超え、メディアでも度々紹介されており、住民のモチベーション向上にもつながっていると思います」。

令和3年4月には「大崎町SDGs推進協議会」が発足。循環型の社会を目指す「サーキュラーヴィレッジ構想」を始動するなど、進化を続ける同町に、今後も注目したい。

■大崎町のごみ量の推移(単位:トン/年)

■リサイクル率・コスト比較平成10年に4,382トンだった埋立ごみが平成29年には708トンまで減少。約84%の削減に成功し、1人当たりごみ処理事業経費は全国平均を大幅に下まわっている。
※大崎町「ごみ分別の手引き」をもとに作成
 

大崎町
住民環境課
課長補佐
松元 昭二(まつもと しょうじ)さん

資源ごとにきれいにごみを分けることは誰でもできることです。SDGs未来都市に選ばれた大崎町の取り組みを、国内の他のエリアや世界へ広げていきたいと考えています。

課題解決のヒントとアイデア

1.“行政主導”ではなく、衛生自治会を軸にした“住民主導”のスタイルを徹底

分別を行う主体は衛生自治会という住民組織。地域の自治会とは別組織で、ごみステーションを利用する住民は同会への登録が必須だ。また、分別品目を増やすといった話があれば、行政はまず同会に意見を聞く。

2.行政の危機感とコスト意識を具体化し、当初からしっかり住民と共有

焼却炉や新しい埋立処分場をつくる場合のコストやデメリットを具体的に住民に説明。分別リサイクルの必要性を実感し、自分事に捉えてもらった。取り組みの内容や成果も随時、広報紙などで伝えている。

3.埋立処分場の延命化”という目的をぶらさずに継続する

目的は埋立処分場を長く使うことで、分別リサイクルはそのための手段。“地球に優しい”“リサイクル率を上げる”などではなく、“処分場の延命化”という目的を一貫して明確にすることで、住民が納得して継続できる。

行政が決定事項を上からおろすことはしない。分別の主体である住民と一つひとつ丁寧に協議しながら進めることで、信頼関係を保ち続けている。

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