ジチタイワークス

公務員の名刺はなぜ自腹なのか?過去の事例や現場の声をまとめました。

社会人だけでなく、今では就職活動中の学生も持つとされる、社会人の必須アイテム「名刺」。民間企業では入社後に会社から支給されるのが一般的ですが、自治体の場合、多くが「自腹でつくっている」と言われています。そこで今回は、その理由や実態について、どこよりも詳しく解説します!

本当に自腹なのか?

ジチタイワークスが行ったアンケートでは、約91%の方が「自腹」と回答されました。
※当アンケートは、2021年4月、ジチタイワークス個人会員145名(自治体職員)を対象に実施されました。

残りの9%を見たところ、部署や役職によって偏りがあるわけではなく、自治体として名刺を支給されているか否かという違いが見られました。つまり、ほとんどの自治体で「名刺は自腹」が通例になっているようです。

実際に数名の方に電話でお話を伺ったところ、むしろ「名刺は自腹が当たり前」といった声が多く聞かれました。その一方で、民間出身の職員の方からは疑問の声も挙がっていました。

そもそもなぜ自腹なのか?

今回、ネット検索や電話ヒアリングによる情報収集を行いました。

旧自治省の通達

最も古い情報として語られているのが「旧自治省による通達」です。詳細は不明ですが、とある時期に「自治体職員の名刺を公費で負担することはなじまない」旨の通達があったとのこと。そこから、慣例として職員の名刺は自己負担としている自治体が多いようです。

名刺は個人で使用するもの

上記通達について考えられる理由として、名刺は個人で使用するものという認識が挙げられます。自治体が公費で名刺を支給する場合、その原資となるのは住民による税金です。そのため「公共の利益に資するもの」であることが求められますが、名刺はその直接的な効果が見えにくいものといえます。加えて、名刺を支給する代わりに「このような時は名刺交換OK」「このような時は名刺交換NG」と細かく規定しても、自治体側は管理できません。

さらに「公務員は個人をPRする必要はない」との考えも背景にあるようです。民間企業であれば、会社の名前を覚えてもらうために名刺を渡すこともありますが、自治体であれば原則その必要もありません。

部署によって必要な枚数の偏りが大きい

また「部署によって必要な枚数に偏りがあるため、一律で配布することができない。一律に配布すれば不平等になってしまう。」との声もありました。確かに、企業誘致や商工観光のような民間企業とのやりとりが多い部署であれば年間100枚以上の利用も珍しくありません。逆に、総務や人事のような庁内向けの業務や、市民窓口の担当部署においては、名刺交換の機会自体がほとんどないとも言われています。そのため全職員に一律で配布すると、全く使われない名刺が大量に発生してしまいます。

名刺が自腹であるデメリット

職員個人の視点からすると、費用負担が発生することや、デザインや印刷に手間がかかるといったデメリットが挙げられます。一方、組織としての観点からも、いくつかデメリットが考えられます。

相手に与える印象の悪化

役所で名刺交換をお願いした際、「名刺を切らしていまして......」とお断りされることがあるのですが、万が一、民間企業でそのようなことがあったとしても、後日郵送で送ることが一般的です。それくらい、名刺交換は社会人にとって大事なマナーの1つ。せっかくの出会いが悪い印象で終わってしまうのは悲しいですよね。

地域をPRする機会の喪失

名刺交換は、地域をPRする手段にもなります。名刺のオモテ面にご当地キャラクターのイラストを載せたり、ウラ面に地域の特産品やSNSアカウントのQRコードを載せたりすることが可能です。一つひとつは小さな効果かもしれませんが、その場で地域を紹介する会話が生まれたり、後日それをきっかけに何かが生まれる可能性もあります。「たかが名刺、されど名刺」ですね。

統一感の欠如

名刺が自己負担であるが故に、デザインは各自の判断に委ねられています。これは、民間企業であればコーポレートアイデンティティ(CI)の観点から問題となってしまう事象です。逆に、職場の仲間が同じものを所有することによって、帰属意識やブランディングといった効果も期待されます。

名刺支給の取り組み

そんな状況を顧みて、まだまだ全国的な広がりには至っていないようですが、一部の首長や議員によって提言や施策も行われています。

三重県

それまで名刺は個人の用途でも使う可能性があるのだから,公費で賄えないという旧自治省の通達があり,役人の名刺はすべてポケットマネーで作っていました。三重県もそれを守っていました。北川知事は「仕事を一生懸命して人とたくさん会う人間ほど,小遣いを減らすことになり,そういうことをやっているから,職員の意識改革が進まないのだ」ということで,県をPRするパンフレットという位置づけで名刺を公費負担にしました。

ですから,名刺には名所などの絵を載せています。屁理屈のようですが,パンフレットであるからにはそこに営業マンの名前が載っているのは当然だということで,名前が書いてあります。北川知事が自治省を押し切った格好で解決しました。 

出典:「三重県の行政経営品質向上活動の取り組み」|中国経営品質協議会 経営品質事例研究会
https://gr.energia.co.jp/cpcenter/koen/no15.pdf#page=3

川崎市

しかし、川崎市の職員が、名刺交換等の機会を通じ、様々な場面で、市の魅力や事業を宣伝することは、市政の発展につながるため、チャンスを逃しているのではないかということで、実際にプロモーションカードを導入している福岡市の事例を参考に昨年6月に質疑を行いました。

市民・こども局長より、「関係局と調整し、検討する」という答弁があり、わずか1年で実現しました。

今回のプロモーションカードの導入により、市民に川崎市の魅力を再発見して頂く機会が増えるばかりでなく、カードの裏面には担当の職員の所属・氏名・連絡先が記されていますので、職員一人一人の意識が高まり、行政サービスの向上につながる可能性があります。

出典:プロモーションカードが実現!|川崎市議会議員(麻生区)月本たくや<無所属>
https://www.tsukimoto.info/blog/entry1331.html

三重県と川崎市の事例をご紹介しましたが、名刺に関して先進的な取り組みを進めている自治体はまだ少数なのが現状です。しかし、このような取り組みが広がっていくことで、名刺は、自治体で働く方々のモチベーションを向上させたり、地域の魅力をPRできる一手となるのではないでしょうか。

おわりに

いかがでしたか?今回この記事を執筆するにあたって色々と調べたところ、自治体職員の名刺が自費負担となっている理由に納得する一方で、職場改善や行政改革に向けたチャンスも潜んでいると感じました。

ジチタイワークスは今後も、「自治体で働く“コトとヒト”を元気に。」をモットーに、「ジチタイワークス無料名刺」を通じて職員の皆様をサポートしていきます!

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