ジチタイワークス

第5回「なるほど!公共FM知恵袋」

日本管財(株)の運営するオンラインサロン「公共FMサロン」とのコラボ企画、「なるほど!公共FM知恵袋」。
第5回目は鳥取市・宮谷さんの寄稿第1弾。
鳥取市は、施設包括管理も導入されていますが、今回はそれ以外での公共FMの取り組みについて寄稿をいただきました。
宮谷さんには、ジチタイワークス特別号でもお話を伺っています。是非本寄稿と合わせてご覧ください!
https://jichitai.works/article/details/365


●「なるほど!公共FM知恵袋」とは?

この企画は、部署、まち、官学民の垣根を超えオファーさせていただいた執筆者のみなさまに「公共FM」に関連するテーマで全2~3回程度の寄稿をいただくものです。

サロン運営事務局側から一方的にご依頼するのではなく、執筆者の皆さまが「発信したい」内容や、サロン会員が「聞きたい」内容を都度ご相談しながらテーマを決めていく、「知恵袋」的な双方向性のある企画となっています。

なお、各寄稿の第二回以降はサロン限定公開となります!是非この機会にサロンへの登録もご検討ください。


●「公共FMサロン」とは?

日本管財(株)が運営する、Facebookを用いた自治体職員限定の無料サロンです。公共FM実践のリアルがわかる情報を日々発信しているほか、パートナー専門家にもジョインいただきサロン会員を含めたオンライン交流会などの限定企画も実施しています!

サロン加入のお申し込みはこちらから

FM魂を発信!それが鳥取市流・公共FMのススメ方

鳥取市と聞けば、まず「鳥取砂丘」が頭に浮かぶと思います。平成17年に9市町村が合併し、北は日本海、東は兵庫県、南は岡山県に接する765㎢という広大な面積に約約19万人が暮らしています。市町村合併の効果?で1000施設を超える公共施設を有しており、公共FMのやりがいがある山陰の中核市です。

私は、平成25年に公共FMの担当に任命されましたが、当時、庁内をはじめ、周辺にFMを知る人はおらず、近隣自治体に勉強会をしようと持ち掛けても話が通じず、県外自治体まで意見交換に出向いてFMを学んでいきました。 

どうにかして鳥取市にFMを広めようと、自治体等FM連絡会議の幹事に立候補し、全国大会を誘致し開催しました。その際、トップ(首長)に鳥取市FMの発表をしていただきました。

通常、クローズで開催する会議でしたが、鳥取大会は、職員研修を兼ね、議員やマスコミにも参加を呼びかけました。その場で、自治体トップが、施設総量縮減の目標や具体的な取り組みを語るということで、このインパクトは大きかったと思います。実際、市長レクを行い、市長が数字を含めて、台本なしで話をしてくださいました。担当としても、背中をグッと押された気持ちになったのを覚えています。  

民間と仕事をするなら、考え方も民間目線で

FM担当として、最初に取り組んだのは、年間1,000万円の赤字を生む温泉保養施設の処分でした。有識者を含めた委員会で市による再建は無理と判断された物件で、民間譲渡(要するに売却)する方針を固め、議会や地元への説明、売却方法の検討など、皆さんが想像する手順で取り組みを進めました。

ポイントとなったのは、最低売却価格の設定です。鳥取市において、初めての建物売却であり、土地売却と同じ手法で検討を進めたのですが、どうも違和感がありました。土地は課税標準額で試算するので、建物は取得価格から減価償却し、現存価格を試算すると約4億円…赤字施設がそんな高額で売れるんか?と疑問に思い、不動産鑑定を行う事業者や地元銀行に相談したところ、民間に売却するなら民間相場で価格設定しないと!というアドバイスをもらいました。(今思えば、軽いサウンディング調査です)

ここで導入したのが、「収益還元法」です。要するに「その施設で将来、どれだけ稼げるか」という査定価格です。話を聞けば当たり前ですが、公金で建設した施設は難しいです。収益還元法で査定してもらった結果は、5,600万円。建設に10億円以上かかって、なんでそんなに安いんだ?どこかの事業者とつながっているのでは?といった質問をされる議員もおられました。でもそれが現実なんですよね。

購入者は、建物がほしいわけではなく、建物を使って稼ぐことが目的なので、民間の視点で取り組まないと進まないのです。

ここは、各方面に何度も説明しました。

プロポーザルで事業者を募り、結果として、7,500万円で売却でき、その事業者はこれまでどおり、温泉保養施設を運営してくれています。住民サービスが維持され、赤字補填がなくなり、地域の雇用(食材納品・清掃など施設に関わる業者含む)が守られ、固定資産税も入ってくる。大きな効果があったと思います。

その他、鳥取市では、耐震性が低い地区公民館を保健センターの余剰スペースへ移転(保健センターと公民館との複合化)した事例や、総合支所(元役場)の余剰スペースへ郵便局に入居してもらった事例、統廃合で廃校となった小学校に民間事業者が入居して、植物工場として活用している事例などがあります。

まずは知ってもらう。情報発信がスムーズなFM推進のカギ

複合化や統廃合といったことは、住民・議会にとって大きな関心事です。物事が決まる前、方向性を検討している段階で情報を出すことを心がけています。

決まっていないことを情報提供すると、独り歩きすることが懸念されますが、物事が確定してから公表すると、賛成してくれる立場の人も「ちょっと…」となることがあります。

FMは単発事業で終わりはなく、たくさんの取組(挑戦)をしていく必要があります。総論を発信し続け、事業も企画段階からできるだけ情報提供し、事業が実現したら、その効果を公表することが大事です。

総論賛成各論反対と言われますが、そもそも総論も知られていません。FMに取り組まないといけない背景には、「公共施設の更新問題」があります。FMの歩みを止めると将来に大きな負担を残すことになります。

他事例の知識やテクニックよりも、「ビジョン」が大事

収益還元法を知っている公務員が何人いるでしょうか?公共FMといっても、行政の中だけの取り組みでは限界があります。それであれば、民間の仕組みを知り、適応していくことが大事だと思います。

また、簡単な事業でもビジョンを持つことが大事です。ほとんど使っていない施設を廃止するため、地元に出かける際、事前に相談した感触では「廃止しても仕方ない」ということだったので、担当者に任せました。すると、帰ってきた担当者の口からは「施設を残すことになりました」という言葉が…。聞くと「廃止してもいいけど、その後、このエリアはどうしていくの?」と質問されて返事につまったところ、一転「決まってないなら…」と廃止の話がまとまらなかったそうです。『廃止した後、この施設はこう活用(処分)します。その方が地域にとって〇〇といった効果が…』といった発想が抜けていました。住民目線で考えることが重要なんだと教えられました。

時間軸をもって取り組むことも重要です。せっかくサウンディング型市場調査で有益な情報が得られたのに、その部分はもう変更できなかったこともあります。とにかく想像を膨らませて取り組むことをお勧めします。

塵も積もれば山となる、まずはできる一歩から。

FMは、統廃合や複合化、包括管理委託(鳥取市では、複数施設一括委託&庁舎包括管理で包括管理の一歩手前)、民間提案制度(鳥取市では、随意契約保証型を採用)といった、ニュースになりそうな案件でなくても、お金や手間を少なくできることがたくさんあります。

FM担当職員によるDIY修繕。鳥取市では、保育園の錆びた柱のペンキ塗り、駐車場の白線引き直し、倒れた広場のフェンスを補強など、施設の実態を知りながら、安全性を確保する取り組みを行いました。

耐震新築工事のため、解体予定の旧小学校を活用した消防隊の突入訓練は、大阪府貝塚市の取組を真似したものですが、お金をかけずに、実践的な訓練ができるという点で、歳入確保ではないですが、歳出削減の取組です。

小さな取り組みでも、積み上げていくことで職員や周り(市民・議員・マスコミ…)の意識も変わっていきます。FMに関心が高ければ、大きな事業をするときも進めやすいと思います。自分の自治体では普通のことが、他の自治体では意外と取り組まれていなかったりします。自治体同士、横の連携を密にしてFMを進めていきましょう!

お問い合わせ

日本管財株式会社

担当:営業統括本部マーケティング推進部(恒川・大原)
TEL:03-5299-0851
E-mail:eigyo_market@nkanzai.co.jp

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