ジチタイワークス

埼玉県川口市

危機管理で素早い初動を実現するSNS×AIの情報活用とは?

災害が激甚化・局地化する中、SNS情報の収集・活用は、「国土強靭化年次計画」でも言及されている。しかし、情報の正確性などの課題から、調達に迷う自治体も多いだろう。そんな中、いち早くクラウド型のリスク情報配信サービスを導入した川口市に話を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.14(2021年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]株式会社JX通信社

災害発生時に迅速かつ正確な初動を起こす際の課題。

同市では従来、突発的な災害の発生情報を、職員によるパトロールや、地域住民からの電話通報で得ていた。安村さんは、「通報内容の“正確性”と、それにまつわる“優先度”の設定が課題だった」と語る。「市民の皆さんは一刻も早く目前の状況を伝えようと、懸命に話してくださいます。しかし、同じタイミングで別の地域から通報が入ることもあり、伝え方も人によって異なる。そのため、“市民の安全を守るためにどう優先順位を設定するか”が非常に難しい問題でした」。

この課題は消防局でも同様に抱えていた。そこで注目したのが、SNS情報の活用だ。SNSの投稿であれば、リアルタイムでの情報収集が可能になるだけでなく、写真付きの投稿なら実際の現場の様子を目視確認することもできる。ただし、情報の信ぴょう性を担保しなければ活用は難しかった。

そこで同市では、SNSを活用した、緊急情報提供サービスをいくつかトライアル。その後、見積もり合わせを経て、最終的に導入したのが「FASTALERT(以下、ファストアラート)」だったという。

現状の体制+SNS活用でスピード感ある対応を実現!

「JX通信社」が手がけるファストアラートは、SNS上を行き交う膨大なビックデータから災害・事件・事故など緊急性のある投稿を集め、AIが解析し、信ぴょう性の高い情報だけを抽出・配信するサービス。高度な自然言語処理によって、例えば、火災の様子を投稿者が慌てて「家事だ」などと誤入力しても、「火事だ」として認識することができる。

また、累計400万人にダウンロードされた、同社運営のニュース速報アプリ「NewsDigest」のユーザーから寄せられる位置情報付きの投稿も活用されている。さらに、Twitter社公認の“商用利用可能なTwitterデータを利用しているサービス”であることを証明する「認定サービスバッジ」を取得している点も安心だ。

同市では、令和2年6月に消防局警防課と同時にこのサービスを導入。相互に連携しながら、従来の通報・パトロールで得た情報を補完するツールとして運用している。

「SNSを用いた情報収集には、スピードの速さや、市から問い合わせを行わなくても自然と情報が入ってくる、といったメリットがある一方で、信ぴょう性が課題となります。ファストアラートの導入により、その課題をある程度クリアし、SNSを情報収集手段の1つとして用いることができるようになりました」。

災害以外もSNS×AI活用で市民の安全・安心を守る!

同サービスが活躍する場面は、導入後すぐにやってきた。

令和2年8月、ゲリラ豪雨のため東川口駅周辺の地域で浸水被害が発生したが、その際にはSNSの情報を見ながら職員が対応に当たった。また、災害以外でも市民から、「野生動物を目撃した」「ヘリコプターが自宅近くの上空でホバリングしている」などの問い合わせが寄せられた際に、それらにまつわる情報を収集する手段として活用したという。

「災害対応においては、正確かつスピード感のある情報収集が求められます。その手段の1つとして、ファストアラートのようなシステムの活用を研究しているところです」と安村さんは力を込める。

今後も、SNSを含む膨大なビックデータを活用する動きは活発になっていくだろう。そうした中で、地域住民や消防と連携しつつ、さらなる安心を生み出そうとする同市の取り組みは、ビッグデータ活用事例のお手本だといえるのではなかろうか。

川口市 危機管理部 危機管理課 主事
安村 瑠宇人(やすむら りゅうと)さん

SNSなどによる防災情報収集のメリット

SNSとAIを活用した防災情報の収集には、“迅速・大量”以外にも様々な利点がある。
月額制サービスでコストも抑えられるので、平時からの活用を目指したい。

1.初動対応の迅速・正確化

発災時、大量に寄せられる被災情報も、SNSに投稿された現場写真や動画を活用することで、被害状況や対応に必要な資材、安全な到着方法などを検討できる。緊急度の識別になるほか、派遣する車両の計画などにも活用可能だ。

2.情報収集の省力化

見るべき情報をAIが集約するため、人手不足の解消が期待できる。さらに、緊急参集の判断に役立つほか、消防や分庁舎にも同一サービスを導入することで、部署横断的に同様の情報を共有できる。

3.潜在的なリスクの可視化

防災カメラだけでは目に見えない、テロ・異臭騒ぎ・不審物・不審者などの情報もテキスト情報からキャッチ。これまで後手にまわっていたような場面でも、先手を打つことが可能となる。

移動系防災行政無線や、防災カメラと並んで設置されている川口市の「FASTALERT」確認画面。

CHECK

ビッグデータを用いたサービスの検討では、情報の出自を確認することが欠かせません。特に、Twitter情報を用いた商用サービスにはライセンスが必須です。正規サービスにはこの認証マークがついているので、留意する必要があります。

新機能も続々追加

▶LG-WAN ASPに接続

LG-WAN環境から直接サービスを閲覧できるようになり、多忙を極める発災時の情報収集・分析業務も、より迅速に対応可能に。

▶新型コロナ関連情報も提供

COVID-19関連情報も同社の得意分野。感染者数速報はもとより、感染者の発生した、事業所の全国マップも搭載している。

▶発災情報をマップ上で確認

避難所などを「発災マップ」機能に登録すれば、施設の維持管理や、避難所の統廃合の判断に必要な情報が直感的に確認できる。(左写真の赤ピンが実際にマッピングしたもの)。

お問い合わせ

サービス提供元企業:株式会社JX通信社

TEL:03-6380-9860
住所:〒101-0003 東京都千代田区一ツ橋2-6-3 一ツ橋ビル8F
E-mail:biz@jxpress.net

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