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山形県川西町

公開日:2021-04-09

特性を活かした適切なエネルギーミックスで、災害に負けない庁舎をつくる。

環境・エネルギー
読了まで:4分
特性を活かした適切なエネルギーミックスで、災害に負けない庁舎をつくる。

自然災害が相次ぐ中、自治体共通の課題は住民の安全・安心の確保だ。しかし、災害支援の本丸になる庁舎も、発災時にはライフラインが絶たれる可能性がある。BCP(事業継続計画)に沿って、住民の支援を行うにはどうすればいいのか、川西町の庁舎建て替えの事例を通してヒントを探る。

※下記はジチタイワークスVol.13(2021年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]石油連盟

住民の安全・安心を最優先し、同町が出した答えとは。

現庁舎が建設されたのは昭和34年。老朽化が進み、築60年を前に耐震診断をしたところ、震度6強レベルの地震には耐えられないという結果が出た。同町は、このままでは発災時に支援拠点としての機能を果たせないと判断。早期の建て替えを目標に、事業費の積立を開始した。

ちょうどその頃、総務省から「市町村役場機能緊急保全事業」の通知が届いた。これは熊本地震の教訓をもとに、一定の基準を満たした庁舎の建て替えについて、自治体の負担を軽減するというもの。基準を満たしていた同町は即座に申請。同事業の条件である“令和2年度中の完成”に向け、急ピッチで準備を進めたのだった。

計画遂行期間は4年。その中でも充実した庁舎をつくろうと職員たちは知恵を絞った。特に議論になったのがエネルギーの問題だ。地震に限らず、大雪や風害などで送電が止まる可能性もある。電気依存からの脱却を図りながら、コスト面も考慮し、災害時に庁舎の機能を維持するにはどうすればいいか。そこで出した答えは、再生可能エネルギーも含めたエネルギーミックスだった。

コストとBCPのバランスの中、“灯油”を選択した理由とは?

理想的なエネルギーミックスを求めて庁内外で議論を重ねた結果、電気・灯油・LPガスをメインに据え、太陽光・地下水を加えて採用することを決定。「本来なら再生可能エネルギーをメインにしたいところですが、例えば、太陽光の場合、冬季の日照時間などの問題で安定した供給は難しいのです」と遠藤さんは振り返る。また、「様々な可能性を探る中で、『石油連盟』から提案された“灯油”が有効だと判断しました。備蓄性や調達のしやすさ、安全性、熱カロリーなどが総合的に優れていたのです」。

ただし、灯油には“劣化”という問題があり長期保存には向かない。その点も、常用と非常用のタンクを分けず、使用した分を随時補給・使用することで解決している。これらの工夫は、別の効果も生んでいる。「庁舎全体の電気消費量を抑制し、最大需要値を下げています。灯油も大量購入することで単価を抑えられるので、トータルでコスト減になるとみています」。

また、議場などの空調設備は、使用頻度を考慮した設備保全の観点からLPガスによるものを採用。結果、暖房時のエネルギー出力構成比で、灯油が約50%、電気が約35%、LPガスが約15%というエネルギーミックスが完成した。

独自のエネルギーミックスで庁舎は安心のシンボルになる。

同町の新庁舎は、令和3年5月に開庁予定。庁舎とは別にエネルギー棟を設け、ここで灯油やLPガスからのエネルギー変換を行っている。灯油自体は地下に12キロリットルの貯蔵タンクを埋設し、LPガスもバルクタンクで貯蔵している。

再生可能エネルギーの活用も忘れてはいない。庁舎の東・南側壁面には太陽光パネルを設け、平時は庁舎に電力を供給。非常時には蓄電分がバックアップ電力となる。さらには、地下水を庁舎まわりの融雪設備に活用するといった工夫も加えているそうだ。

令和3年2月現在、建物は完成し、開庁に向けた準備を進めている。「エネルギー活用の工夫は、目に見えるものではありません。しかし、実際に来庁されることでその気配を感じ、エネルギーについて考えていただくきっかけになれば」と有坂さん。町民の暮らしを守るためにつくられた新庁舎が、今後どのように地域に浸透し、安全・安心のシンボルとなっていくのか楽しみだ。

川西町 政策推進課
左:課長 遠藤 準一(えんどう じゅんいち)さん
右:政策推進主幹 有坂 強志(ありさか つよし)さん

災害時にも庁舎の機能を維持するエネルギーミックスの秘密とは?

複数のエネルギーを適宜配置することが、発災時の供給途絶への柔軟な対応力に。川西町が新庁舎に採用した内容を具体例とともに紹介する。

各エネルギーの強みを活かす

同町が選んだのは、上記5種類のエネルギーだ。平時はこれらを適材適所で活用。非常時に電気が止まったら、用途や供給先を変えて庁内の電力、冷暖房機能を確保し、BCPに沿った“自助”を可能にする。

熱源ミックスの一例(空調設備)

以下のように空調設備の熱源を分けることで、災害などによって、いずれかのエネルギーの供給が停止しても、空調機能を維持することが可能になる。

災害時に発揮される地域の絆

防災訓練などを通じて、地元の石油組合など“危険物安全協会”と接点を持っておくことで、災害時における配送トラブルなどを防ぐことが可能です。

お問い合わせ

サービス提供元石油連盟

TEL:03-5218-2303
住所:〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館ビル17F
E-mail:j.taniguchi@sekiren.gr.jp(担当:谷口)

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