学校教育におけるICTの活用を推進するべく、3つのモデル高校でオンライン教育プラットフォームを導入し、県立高校での実証研究を開始した岩手県。県と大学が協働で取り組むねらいや、展望を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.13(2021年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]Classi株式会社
県を挙げた実証研究で教育現場のICT化を模索。
岩手県では国が打ち出すGIGAスクール構想に先駆けて、県独自の取り組みである「学びの改革プロジェクト」を令和元年4月からスタートさせた。10年計画で、県の未来をリードする人材の育成を目的とし、就学前から高校教育までの質の高い教育環境の構築を目指すプロジェクトだ。県と大学(岩手大学、岩手県立大学)による研究チーム、県と市町村によるICT推進協議会を発足させるなど、まさに県を挙げた取り組みとなる。このプロジェクトにおいて、ICTを活用した授業改善などの充実を図るべく、3年間の実証研究を開始した。
この実証研究の目的は、AIをはじめとするICTの利活用で児童生徒の学習環境や習熟度に応じた教育を推進することだ。しかし「県内の学校ではICTを活用した授業はあまり行われていなかったのが実情でした」と坂本さんは振り返る。特に学習指導におけるICTの活用が課題だったという。
教育プラットフォームを複数の中から検討し導入へ。
実証研究を開始するに当たり複数の教育プラットフォームの導入が検討されたが、すでに県内の高校で実績があったことで選定されたのが「Classi(以下、クラッシー)」だった。クラッシーは、高校・中高一貫校向けのICT教育プラットフォームであり、県が課題としていた学習指導分野に特化していることも選定の決め手となったという。
「ポートフォリオ」「アダプティブラーニング※1」「コミュニケーション」「アクティブラーニング」の4場面で学校のICT化をサポートすることや、高校の学習範囲に強く、約10万問※2というアダプティブラーニングの豊富な問題数が特徴だ。
※1適応学習。個々の進捗状況(学習内容やレベル)に応じて最適なコンテンツを提供すること
※2「AI分析」「問題数10万問」は、オプションの「Classi問題集パック」を採用した場合。基本パッケージの問題数は6万問
アダプティブラーニングで1人1台という教育環境の個別学習を後押し。
3つのモデル校では、いずれも第2学年を対象に実証研究が行われている。「タブレット端末1人1台という学習環境をつくり、個別学習の可能性を検証したい」と坂本さんが話すように、実証研究のカギは、学習進度に合わせて最適な問題を出題するアダプティブラーニングの実現だ。3校では複数のプラットフォームを使い分けているが、将来的にはアダプティブラーニング機能を持つサービスを有効活用することを視野に入れている。
この取り組みの主幹機関である岩手大学の宮川教授も「新学習指導要領の開始により、今後は基礎学力の定着は家庭学習、学校では共同学習という流れが加速するでしょう。教育プラットフォームなどを使ったアダプティブラーニングは、今後の教育の質の向上に向けて取り組むべき手法だといえます」と話す。
GIGAスクール構想は義務教育が対象ではあるが、「高等教育についてもICTの活用が前提の時代が来ている」と宮川教授。
始まったばかりのこの実証研究が、結実することに期待したい。
岩手県教育委員会事務局
左:教育企画室指導主事兼主査
坂本 有希(さかもと ゆうき)さん
右:学校教育情報化担当課長
藤井 茂樹(ふじい しげき)さん
中央:岩手大学教育学部 教授
宮川 洋一(みやがわ よういち)さん
クラッシー活用イメージ
1.ベネッセとの連携
ベネッセコーポレーションの高校向けアセスメントと連動した学習コンテンツで、指導の最適化・効率化を図る。
2.AI分析×10万問
AIにより、生徒一人ひとりの成績や学習履歴に合わせた最適な学習を5教科・約10万問の中から出題。※2
3.生徒の情報蓄積
模擬試験の成績データ、家庭学習時間、進路調査結果など生徒の学びに関する記録を一元管理する「生徒カルテ」や、生徒の様々な活動の振り返りを蓄積する「ポートフォリオ」機能で、多面的・総合的な評価や指導を実現。
導入校の声
岩手県立花巻北高等学校
進路主任 八尾 晃一(やお こういち)さん
Q.学校ではどのようにクラッシーを活用していますか?
主に生徒の学習記録ツールとして活用しています。生徒自身で家庭学習の時間と内容などを記録することで、生徒が自身の学びをマネジメントすることにつながっていると感じます。次年度はAIで生徒ごとに問題を出し分ける「問題集パック」の機能活用を検討し、さらに個別最適化学習を進めていきたいですね。
Q.クラッシー導入後、先生や生徒の変化はありましたか?
生徒や保護者と容易にやりとりできるので、より積極的にコミュニケーションを図るようになりました。今では毎週末、学年主任から学年全体へメッセージを送るなど、コミュニケーションツールとしても定着しています。また、クラッシーで学習記録をする習慣が身についたことで、生徒にも学習マネジメントの意識が感じられるようになりました。
高等学校対象の実証研究を募集
クラッシーでは教育現場におけるさらなるICT化推進を目指し、実証研究にご協力いただける高等学校を募集しています。また、将来的には小・中学校向けのサービスも展開予定です。まずはお気軽にお問い合わせください。