ジチタイワークス

宮下 智さんが取り組んできた、「仲間と知恵や工夫を出し合うまちづくり」。

株式会社ホルグ主宰「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2020」で“すごい!地方公務員”の一人として表彰され、さらに本誌を含む複数の特別協賛社賞を獲得した群馬県の宮下さんにインタビュー。

※下記はジチタイワークスVol.12(2020年11月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

群馬県 産業経済部労働政策課 係長
宮下 智 さん

京都大学法学部卒業。大学卒業後、群馬県庁入庁。財政、健康福祉、市町村支援、中小企業支援、まちづくりなど幅広い業務を担当。商政課時代に取り組んだ様々なまちづくり推進事業で、「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2020」の「ジチタイワークス賞」を受賞。令和2年3月に発足した「NPO法人自治経営」では理事を務める。

■ジチタイワークス賞 受賞理由

周囲の職員や市町村・企業を巻き込み実行できる、“情熱とリーダーシップ”。これまで所属した多種多様な部署で成果を出す、畑違いの部署への異動が避けられない公務員に欠かせない“変革力と適応力”。若手職員勉強会の講師としても活躍される“育成力”。まさに公務員のお手本のような存在!

仲間と知恵を出し合い、まず一歩を踏み出す。“何もしないこと” はもはや正解ではない。

Q.取り組んできたまちづくり事業の中で、特に達成感を得た内容を教えてください。

普段使われていない公共空間でナイトマルシェを開催し、小さな地域経済循環を生み出す「base on the greenproject(ベースオンザグリーンプロジェクト)」という取り組みです。これは仕事ではなくプライベートの活動ですが、平成30年から本格的にスタートし、すでに県内各地で30回以上開催しています。補助金などは一切受けず、出店料をいただくことで黒字運営を続けています。

自治体にとっては、お金をかけることなく低利用の公共空間が活用されて賑わいが生まれ、出店した事業者はしっかりと稼ぐことができ、市民は開放的な空間で豊かな時間を過ごすことができる、いわゆる“三方よし”の取り組みです。

Q.宮下さんにとって「まちづくリ」とは?熱心な活動の原動力とは?

まちづくりとは、“自分たちの手で、豊かな暮らしをつくっていくこと”だと考えています。これからの人口減少社会は、生産年齢人口が減り税収も減る反面、介護医療費などが増大していく非常に厳しい局面。今までのように行政からの補助金等が期待できない中で、持続可能なまちづくりが求められることになります。

そんな時代だからこそ、パブリックマインドを持った民間プレイヤーと、これまでの常識に囚われない柔軟な発想を持った自治体職員がタッグを組み(公民連携)、普段使われていない公共空間なども活用しながら、“自分たちが欲しい暮らし”をつくっていくことが必要になるのではないかと思います。これは、自分が仕事として取り組んだ「リノベーションまちづくり」や、プライベートで受講した「都市経営プロフェッショナルスクール」の中で学んだことで、今の自分の全ての活動のベースとなっています。

Q.本業の傍ら理事を務める「NPO法人自治経営」とは?

木下 斉さんがメインの講師を務める「都市経営プロフェッショナルスクール」のOBが中心となり設立した団体です。公民連携のまちづくりを実践する全国各地の仲間をネットワーク化し、そのノウハウを集積・シェアすることで多様な「自治経営」を増やし、社会変革を起こしていくことを目的に創設しました。具体的な活動としては、自治体に経験豊富なメンバーを派遣し、まちづくりをサポートする「伴走型支援」や、全国各地の実践事例を集めた「ケーススタディブック」の出版などがあります。

今年5月には自身が中心となり、コロナにひるむことなく各地で実践を続けるメンバーを集めて「コロナと闘う公務員緊急ミーティング」をオンラインで開催したところ、150名を超える参加がありました。このミーティングを参考に、次々と各地で一歩を踏み出す人が出てきたのは嬉しかったですね。

Q.Withコロナのまちづくりは、どうあるべきと考えますか。

コロナ発生により、地域のお祭りや花火大会、マラソン大会など、毎年恒例のイベントのほとんどが中止に追い込まれました。地域活性化や経済活動の維持よりも、市民の安全確保が優先された結果だと思いますが、行政の“横並び意識”が垣間見えた気もして、自分としては非常に歯がゆい思いでした。Withコロナにおいては、自分がこれまで取り組んできた公園や道路などの公共空間活用をさらに進めるべきだと思います。屋内に比べ“NO密”な公共空間は、まちづくりの中心的なステージとなるポテンシャルがあります。国や自治体もこれまで以上に柔軟に、民間に対して公共空間の使用を認め、地域経済循環を生み出すような取り組みを支援する必要があると思います。

実は、今の自分の取り組みはコロナ前からやってきたことを、“Withコロナ仕様”にカスタマイズしているに過ぎません。地域活性化やまちづくりに一番必要なのは、同じ想いを持つ“仲間”。組織の内外に、暮らしを豊かにするために共に活動してくれる仲間をつくりましょう。自分の興味のあるイベントに積極的に参加したり、自分の考えをSNSで発信したり、また“まちにダイブ”して面白そうなお店を夜な夜なハシゴしてみたり……。そんなことを繰り返していると、ふと、自分の仲間になってくれる人があらわれたりするものです。

加えて、Withコロナのまちづくりで必要なのは“一歩を踏み出す勇気”だと思います。いつまで続くか分からないコロナ禍においては、“何もしないこと”はもはや正解ではありません。地域の経済を止めないためにも知恵と工夫を出し合って、小さくてもいいから一歩を踏み出し、自分がやるべき取り組みを前に進めてほしいですね。

Q.今後取り組みたいことはありますか?

“面白い”自治体職員をもっと増やすことです(笑)。これだけ世の中の変化が激しい時代に前任者と同じことを“真面目”に反すうしていたのでは、地域は後退してしまいます。自分のアタマで考え、正しいと思ったことを事業化し、実践できる“面白い”人材がどんどん出てきて欲しいです。そのためにも自分が率先して地域で実践を繰り返し、それを発信することで、若い人たちが通る道をつくりたい。

また最近、セミナーなどの講師として呼んでいただき、自分の取り組みを皆さんにお伝えする機会も増えてきました。ご要望があれば、どこにでも行きますのでぜひ声をかけてください!

 

宮下さんが公私で取り組む3つのまちづくり

01【仕事】:県庁前キッチンベース

コロナの影響で苦境に立たされた飲食事業者の支援として、4月から毎週金曜に県庁前広場でキッチンカーによるランチの販売を実施。また7〜10月にかけて5回、コロナ対策を講じながらナイトマルシェを開催し、県内のイベント再開の機運を高めつつ、まちなかの飲食店への人の流れをつくっている。

02【プライベート】:伊勢崎駅前ベースオンザグリーン

7〜9月、伊勢崎駅前の広場で毎週金・土曜にナイトマルシェを開催(全12回)。コロナに苦しむ飲食事業者の商いの場や、お祭りなどが中止となった市民の皆さんが集い、交流し、安全に楽しめる機会を多くつくる必要があると考え、回数を昨年の2倍に。また、周辺道路の使用許可をもらうことで面積を広く取り、机や椅子の数を増やして間隔を空け、密を回避。回数を倍増したことは、来場者を分散させる効果に。

03【仕事】:歩道空間オープンテラス

県庁内の部局横断組織である「官民連携まちづくりチーム」のプロジェクトとして、店舗の軒先の県道の歩道空間をオープンテラスとして利用してもらう社会実験を実施。コロナで席数を減らさざるを得ない飲食店に、道路という公共空間を商いに活用してもらいつつ、まちの賑わいもつくろうという取り組み。

 

 

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