ジチタイワークス

兵庫県明石市

修繕業務まで踏み込み、7名の人員削減を達成! 目に見える効果を追求した明石市の包括管理。

日常修繕を含めた複数施設の包括管理にすることで、契約事務コストの削減効果を具体的な人員削減効果まで昇華させた事例。包括管理も開始から3年目を迎え、今後は施設保全計画との連携を目指している。

※下記はジチタイワークス特別号 June 2020(2020年6月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]兵庫県明石市

日常修繕を含む包括管理で導入から早3年。

明石市は、平成30年から包括管理を導入している。現在3年目となる同市の包括管理の大きな特徴は、日常的に行われる小規模な修繕まで委託業務に含んだことと、職員数の削減を実現したことだ。通常、自治体における包括管理のメリットは、以下のような軸で語られることが多い。

①職員ではなく専門知識をもち、包括的に施設管理を行う業者(以下、包括管理業者)が業務に対応することで、施設の安全性の向上と長寿命化が実現できる。
②各施設を横断的に見ることで、仕様の統一と適切な管理が行われ、長期的に見たコスト削減が可能になる。
③全施設の利用・修繕実績等の各種データを蓄積することができ、これが以後の統廃合や適切な配置を考える上での基礎データとなる。
④施設管理に携わる職員の業務負担を軽減し、庁内のマンパワーが確保できる。

こうした視点に立ち、“包括管理導入後も職員数は維持、管理の対象も点検・清掃のみ”という自治体が多い中、同市はなぜ修繕までを対象とし、人員も削減することができたのだろうか。

“仕事に余裕が生まれる”ではNG!市の方針は“職員数の削減”。

明石市では、平成27年度から包括管理の導入の検討を始め、先進自治体の取り組みを学んだり、事業者へのヒアリングを行ったりしていた。導入に向け、まずは”点検のみ”の実施に狙いを定め、市全体での契約事務コスト削減効果を10%と試算した。この原案を上層部に提出したが、OKは出なかった。理由は、“人員を減らさないとコスト減とはいえない”というものだった。松永さんは詳細をこう説明する。

「包括管理ではマネジメント費(委託費)が発生します。他の先行自治体では、市全体で見た契約事務コストの削減効果がマネジメント費とほぼ同額、もしくは上回る(下図)、と評価しているところが多いようですが、明石市の方針は『人を減らしてこそのコスト削減』というものでした」。

同市は平成30年度からの中核市移行を控えており、財政の健全化や人員削減の気運が高まっている時期でもあった。松永さんは、包括管理導入の原案を一から見直すことにした。

包括マネジメント費を加味しても4,800万円のコストダウン。

原案を作り直すにあたって、まずは包括管理業者へのサウンディング型市場調査を実施した。ここで“日常修繕を含めた委託”の是非を聞いたところ、好意的な反応が多かった。施設の日常修繕は点検業務より件数が多く、コスト圧縮の余地もある。試算の結果、対象施設の所管課から合計で3人減員することが可能だという結果が出た。これをもとに再度協議にかけたところ上層部からのOKが出て、導入準備を進めることになった。修繕を含めた包括管理を導入し、人員を削減することが市の方針となったのだ。

包括管理のマネジメント費は3,500万円。増えたコストに対し、実際の人事異動では3人減員の予定が7人減員という結果になり、トータルでは4,800万円のコスト削減効果を生んだ(下記「課題解決のヒント&アイデア」1)。

現場で即対応の“内製化”で四方良しの修繕業務を実現。

市内132施設を対象に包括管理が始まり、まず実感したのは、迅速さと的確さだった。従来は緊急性の高い修繕以外は書面での受付が基本。また、職員は技術者ではないので、修繕対応に正しい判断ができるとは限らない。しかし現在は全て電話受付になり、庁内に常駐している包括管理業者が現場へ直行し、専門的な判断を下すことができる(下図)。

▼明石市における包括管理実施体制

また、包括管理業者が自ら現場対応にあたる“内製化”のメリットも大きいと松永さんは語る。「従来、『ドアの閉まりが悪い』『設備機器の調子がおかしい』といった安全性と関連の薄い修繕依頼は、年度末に予算に余裕があった場合に対応していたのですが、今では包括管理業者が現場確認時に即対応してくれています。施設側の納得度も高いです」。この内製化では、単発で発注するのに比べて経費が抑えられ、再委託先となる地元の事業者も利益の薄い修繕に出動する手間が省ける。また、包括管理業者には小さな修繕の積み重ねも利益になる。施設・市・地元の事業者・包括管理業者の全てにメリットがある“四方良し”の仕組みだと松永さんは胸を張る(下記「課題解決のヒント&アイデア」2、3)。

包括管理で修繕品質を高めより安心・安全な施設へ。

日常修繕を加えることで、これらの結果を生み出した明石市の包括管理。発端は“職員数を削減する”という市の方針に沿って動いたことだったが、「今では修繕を含めてこそ、包括管理のメリットが最大限に出せると感じています」と松永さん。「最初は先進事例のコピーでいいと思います。ただ、どこをコピーするかという点だけは慎重に考え、選んだ後は集中して取り組みを進めるのがおすすめです」とアドバイスする。

3年目に入った明石市の包括管理。5年委託契約の残り2年について松永さんは、「今後は、蓄積されたデータをもとに施設保全計画とリンクさせた包括管理を推進し、個別施設計画に活かしていく予定です」と語ってくれた。

課題解決のヒント&アイデア

1. 日常修繕業務を加えて7人の減員。

点検・清掃だけでは、目に見えるコスト減は難しい。上層部の首を縦に振らせるためにも、件数が多く契約事務コストもかかる修繕を組み込んで、コスト効果を明確に打ち出した。さらに各所管課の人的工数減(所管8課から各1名減)と、包括管理専門部署の編成(専任技術職1名増)により、差し引き実質7名の減員を実現した。


 

2. 実施後に施設を対象としたアンケートを実施。回答からは高い満足度を実感!

数値化しづらい包括管理の効果をできるだけ可視化しようと、施設に対して満足度調査を実施。初年度は「良くなった・少し良くなった」という回答が約7割を占めたが、2年目は「良くなった」だけで約5割にのぼった。さらに、「良くなった・少し良くなった」で見ると7~8割と、施設側の満足度の高さが伺える。


 

3. 発注先の地元事業者率も従来の割合を維持。

一般的に「包括管理を導入すると、再委託先となる地元の事業者の仕事が減るのでは」という懸念の声もあるが、明石市の場合は包括管理導入前・後の修繕発注金額の合計で比較すると、共に6割程度でほぼ同等。包括管理業者を通じた地元の事業者からの不満の声や特別な意見などもほぼ上がっておらず、問題なく業務を進められていると考えることができる。

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