
認定審査会の負担を軽減するシステム
東温市では介護や障害支援区分の認定審査会にかかる事務作業やコスト面での負担軽減のため、新たなシステムを導入した。その結果、負担軽減だけでなく、職員や審査員の働き方改革にもつながったという。その効果を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.37(2025年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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東温市
市民福祉部
左:長寿介護課
向成 洋平(むかいなり ようへい)さん
右:社会福祉課
伊藤 芽衣(いとう めい)さん
担当者の声
介護と障害認定の審査会にかかる準備の負担が軽減。ペーパーレスやコスト削減につながりました。
書類準備に丸1日かかるだけでなく、コスト面にも大きな課題があった。
高齢化が進み、介護認定にかかる膨大な業務に頭を悩ませている自治体は多いという。同市も例に漏れず、紙ベースでの事務処理負担が課題だった。「当市の介護認定対象者は月平均200人弱で、審査会は月3回開催しています。以前は必要書類の印刷や製本など、審査会準備に丸1日を費やしていました。それだけでなく、資料の管理や保管期限を過ぎた資料の破棄にも手間がかかります。加えて、印刷費や郵送費、職員の時間外勤務などコスト面でも大きな負担になっていました」と向成さんは振り返る。同様の課題は、障害の認定を行う障害支援区分認定審査会でも抱えていたという。
「対象者は月平均10人程度で開催も月1回ですが、審査会で使用する書類の種類が多く、準備に費やす労力やコストについて負担が大きいと感じていました」と伊藤さんは話す。「以前は審査会を対面で行っていたので、会場の設営や片付けも必要でした。仕事が終わった後に審査会に出席する審査員の移動時間を考慮して、開始時間は遅めです。当然ながら終了時間も遅くなり、審査員にも大きな負担をかけていました」。
そこで同市は「富士ソフト」が提供するペーパーレス会議システム「moreNOTE(モアノート)」を導入。認定審査会の業務負担を軽減し、デジタル化にもつながったという。
容易な操作性と機能性の高さが決め手になり、導入することに。
同製品は様々な文書をタブレットなどの端末で、セキュアに共有・閲覧できるペーパーレス会議システムだ。介護認定審査会に特化したパッケージもあり、これには審査資料の自動分割や事前判定入力などができる機能を搭載している。同市では約7割の審査員が介護と障害を兼任しており、委員の負担軽減のためにも両課で同じシステムを使うことを念頭に置いて検討したという。
「3社を比較検討し、機能性と操作性から総合的に使いやすい同サービスに決定しました。契約前に1カ月ほどトライアル期間を設けてもらい、機能面や操作性を確認できたのもよかったです」。庁内の情報化推進委員会で協議を経て導入を決め、デジタル田園都市国家構想交付金の活用により予算を確保。令和6年8月から本格運用を開始した。
運用開始前には審査員への説明会も行い、導入後は職員や同社の相談窓口にて使い方をサポート。「大きな反発もなくスムーズに導入できました。審査会はオンラインでの開催になり、審査員は集合が不要になるだけでなく、各自の都合に合わせた環境で会議に参加できるのも好評のようです。数週間とはいえ、個人情報が記載された紙を預かるより、クラウドにデータが保管されている方が、個人情報の漏えい防止という観点からも安心感があるのではないでしょうか」。
審査員の負担軽減につながり、委員のなり手不足解消にも期待。
導入から半年以上が経過し、向成さんは「30人近くの資料が自動で振り分けられるので助かっています。また介護では、事前判定入力で判定結果が割れた人に注力して話し合えるため、当日の審査も効率的になりました」と話す。伊藤さんも「障害認定では追加の審査依頼が時々あります。以前はその都度、書類を郵送するなどしていたのが、今はWEB上の操作だけになりました」と説明する。また、オンライン化により、開始が30分ほど早まったそうだ。「会議の進行もスムーズで会場の片付けもないので、終了も早くなりました。印刷や郵送費の削減だけでなく、関係者の働き方改革にもつながっています」。
同市でも審査員の高齢化が進んでいるという。「審査会にかかる負担を軽減することで若い世代の審査員も増えるかもしれません。環境を整えて、審査員のなり手不足解消につなげていきたいです」。