
人生100年時代、公務員という比較的安定した職業に就いていても、将来の安心を確保するために、資産形成に関心をもつ人は増えているようだ。
本記事では、現役公務員である林 誠さんの実体験を通じて、初心者が資産形成を始めるための第一歩を分かりやすく解説。前回に続き、公務員ならではの視点を活かした注意点や、投資を楽しみながら計画的に進めるコツをお届けする。
※本記事は、資産形成に対する理解を深めるための情報提供を目的としており、いかなる投資の推奨・勧誘を行うものではありません。
解説するのはこの方
林 誠(はやし まこと)さん
埼玉県所沢市 産業経済部長
1990年に所沢市入庁。総務部では議会対応、財務部では予算編成などを担当した後、埼玉県地方分権推進室へ出向。2002年から財政部門、商業振興部門、政策企画部門等に所属し、現職。中小企業診断士、通訳案内士。
著書に「お役所の潰れない会計学」(自由国民社)、「財政課のシゴト」(ぎょうせい)、「イチから分かる!“議会答弁書”作成のコツ」(ぎょうせい)、「9割の公務員が知らない お金の貯め方・増やし方」(学陽書房)、「公務員の読み書きそろばん」(学陽書房)など。
“難しそう”を克服する!最初の一歩を踏み出すコツ。
「投資をしてみたい」という気持ちになったとしても、まだ投資をしたことがないという人にとっては、最初の一歩を踏み出すことがためらわれるでしょう。投資については、どうしてもやらなければならないことではないし……、なんだか難しそうだし……、ぶっちゃけ面倒くさそうだし……などと、先送りにできる要素が次々に思い浮かびます。損したくない、という気持ちにもなるでしょう。
よく分かりますが、投資を始めるハードルは以前と比べると格段に低くなっていると感じます。ネットにつながる環境さえあれば、手続きはスイスイ進みますし、少額から始められる投資商品もあります。投資は誰にでもできるごく身近なものになっているのです。時間とお金がある人がやること、というイメージは過去のものです。
しかし、ハードルが低いゆえ、選択肢が様々あり、逆に迷ってしまうこともあるでしょう。私が始めた頃は、投資といえば“証券会社に口座を開いて個別株を売買すること”が一般的でしたが、今はNISAやiDeCoといった仕組みがあるほか、FXや仮想通貨といった商品もあります。このように入口が多すぎると、何から始めたらいいか混乱してしまう要素にもなりかねません。
ファイナンシャルプランナー風にいえば、まずはライフプランをつくり、いつまでに何のためにいくらの金額が必要かを割り出し、そのためにはどうするかを考え、最適な投資先を選ぶ、となるでしょう。それが王道ですし、長期的に見て正しい方法なのだと思いますが、時間がない場合や、当面のお金に困っているわけではない場合、ライフプランをつくること自体が先送りになって、ズルズルと時間が経ってしまうといったことになりかねません。
身近な企業や商品が投資の入口になる。
皆さんは、気になる企業や、いいなと思っている会社はありますか?ひいきにしているお店や、お気に入りの商品はどうでしょう?よく利用するレストランやカフェ、新作が気になるブランドはいかがでしょう。アプリやゲームもありです。
もし思い当たるものがあり、「そこを応援したい」「そこの商品を買い続けたい」と思うものがあるなら、株式市場に上場しているかどうか確認してみましょう。【会社名 株価】で検索すればすぐに分かりますし、【商品名 株価】での検索でも大丈夫です。
上場している企業が見つかったら、まずはそこの株を買ってみてはいかがでしょう。好きな会社を応援するつもりで、最初の一歩を踏み出すのです。もちろん、いきなり大金を入れるのはNGです。少額の余裕資金で始めましょう。
株を1銘柄でも実際に持ってみると、世の中の見え方が変わります。漠然と眺めていた政治経済に関するニュースが、一気に自分事になるのです。国内外の政策変更や為替市場の推移が自身の持っている銘柄の株価に大きな影響を与えるので、自然とそうなります。見えている風景が変わるのは、なかなかに新鮮な体験です。
公務員が投資を始めるべき理由とは。
公務員に限らず、仕事をしている人にとって最優先すべきは本業です。投資のことばかり考えてしまい、本来の業務がおろそかになってしまうようでは本末転倒です。そうなってしまう人は、投資から距離を取った方がいいと思います。投資は気持ちに余裕を持ってできる範囲に抑えるべきです。
業績によって給料が変動せず、仕事のかなりの部分が法令で決められている公務員は、どうしても経済情勢に疎くなりがちです。
しかし、行政が行う全ての事業は、実際には経済と密接につながっています。そのため、安定した立場にいる公務員こそ、経済への関心を高めなければならないと思います。投資を始めることで、経済の動きに敏感になることは、きっと仕事にもプラスになるはずです。
お金は誰にとっても大切です。投資を通じて経済をより深く知り、その経験を仕事に活かしていくとともに、100年に及ぶかもしれない長い生涯、お金と上手に付き合っていきたいものです。まずは最初の一歩を踏み出し、心豊かな投資生活を始めませんか。
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