ジチタイワークス

東京都狛江市

レベル4自動運転の実現に向けた実証運行。

路線バスの便数減少や赤字路線の廃止が進む中で、各地の自治体が自動運転バスの実証実験に力を入れている。ただ、持続可能な公共交通サービスとなり得る「自動運転レベル4」を公道上で実現するためには、車両のみならず運行経路上にも、高度なセンサーや通信インフラによる支援が期待される。そうした中で東京都狛江市では、「NTT東日本(以下 NTT東)」が構築する「ローカル5G」などの技術を活用した無人自動運転バスの社会実装に向けた検証を開始。社会実装への手応えを掴んだという。同市の佐藤さんに、実証で感じた手応えや今後の計画について聞いた。

※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです。
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東京都狛江市 道路交通課 交通対策係長 佐藤 省吾 (さとう しょうご) さん

 

 


Interviewee

東京都狛江市 道路交通課 交通対策係長
佐藤 省吾 (さとう しょうご) さん

路線バス減便を補う「次のステップ」が必要に。 

東京都狛江市がレベル4の自動運転バス実証運行

実証で使用した遠隔型自動運転車両。株式会社ティアフォー製の中型バス車両「Minibus」。 

住民の生活基盤の1つでもある地域交通手段の確保が、全国の自治体にとって喫緊の課題となっている。「本市でも、バスの運転手不足や燃料費の高騰で、運行事業者の財政状況が厳しくなっていました。その状況をさらに悪化させたのが、コロナ禍によるバス利用者の激減。減便や路線廃止が進む中、当市としても次世代交通について、本腰を入れて取り組む必要性が高まってきたのです」。佐藤さんは、社会実装に向けた本格的な検証を始めることになった背景をこう説明する。

特に同市の場合、高度成長期に建設された都内初のマンモス団地「多摩川住宅」の建て替え事業が令和3年にスタートしており、事業完了予定の令和9年には、地区内人口が現在の1.5~2倍に増えることが予想されていた。「運行事業者への金銭的支援だけでは、持続可能な公共交通を実現するのはもはや困難でしょう。そこで、次のステップとして、NTT東とグリーンスローモビリティの実証を行った流れで、自動運転バスの提案を受けたのです」。

それ以前から同市は、「地域公共交通会議」という会議体を発足させて自動運転バスの検討を行っていた。ただ、構想レベルの検討だったため、地域の交通事業者に協力を要請しても“未来の話ですよね?”といった反応しか得られなかったという。

グリーンスローモビリティの検討段階から、同市や交通事業者と深く関わってきた同社が具体的な検証計画を提案し、また総務省令和5年度補正予算「地域デジタル基盤活用推進事業(自動運転レベル4検証タイプ)」に採択されたことで、通信システムの信頼性に関する本格検証に踏み切った。「本市のことを理解しているNTT東が、長期ビジョンを踏まえた提案をしてくれたことが、最大のポイントですね」。

交差点等における自動運転車両の認知を補助する機能を検証。

東京都狛江市がレベル4の自動運転バス実証運行

自動運転に向けた車両側の進歩はめざましい。各種センサーおよびカメラを搭載し、レベル4認可を受けるのに十分な制御機能を備えた小型・中型バスを、国内外の複数メーカーがリリースしている。車両の物体認識を補助する道路上の情報収集システム、その情報を車両や交通監視拠点と共有する安定的な通信環境、さらには、自車位置を正確に把握するための高精度3次元地図データといった自動運転のインフラというべき環境が、地域住民に受け入れられる持続可能な公共交通サービスの実現を後押しする。

同市がNTT東など複数社とコンソーシアムを構成し、令和6年4月からスタートさせた実証も、同社のマネージド・ローカル5Gサービス「ギガらく5G」を活用した通信システムの検証が主な目的。和泉多摩川駅~田中橋交差点~多摩川住宅地区を周回する約5.1kmの区間で、国産EV(電気自動車)バスを自動走行させ、遠隔監視拠点との映像・音声通信や路車間通信の信頼性、交差点における通信などの検証を行った。

これ以前にも同社は、成田国際空港における旅客ターミナル間連絡バスの、自動運転実証を実施。同社初の公道実証である今回の注目すべき点は、遮蔽物のある交差点などで「スマートポール」を利用したことだという。これは、建柱型あるいは可搬型のポールに5Gアンテナやレーザー測距センサー、AIカメラなどを装備した同社独自の設備。遮蔽物に隠れた人や自転車、交差点を曲がった先の渋滞状況など、車両側からみて死角となる情報を取得する。スマートポールで収集したセンサー情報やカメラ映像を、ローカル5Gで車両や遠隔監視拠点へ配信できることを実証する狙いだ。

例えば、通信が混雑する駅前ロータリーの他車両の検知や、信号がない横断歩道にて見通し外の車両や歩行者の検知、信号のある交差点における車両の検知を支援することで、より安全でスムーズな自動運転が実現する。実証では建柱型および可搬型2基ずつを設置し、安全性を担保するため、セーフティドライバーおよびオペレータが同乗するレベル2相当で走行した。

「地域人口が2,000~3,000人ほど増えると見込まれている多摩川住宅エリアは、高齢者比率が高い地域です。そのため、運行コースの選定にあたっては、病院への移動ルートなども視野に入れました。また、通信速度が安定していなければ、見通し外の状況に対応することも難しくなるため、市が注力すべき交通安全対策の一部を、ローカル5Gやスマートポールなどの技術に支えられることに安心感をもちました」。
東京都狛江市がレベル4の自動運転バス実証運行

ギガらく5G 通信キャリアならではの高品質な5G通信環境を、電波免許の取得からネットワーク設計・構築および運用までワンパッケージで提供する、NTT東のローカル5Gサービス。ユーザー側のニーズや活用シーンに対応する多様なシステムラインナップを、導入しやすい利用料金で提供できる点も、選ばれているポイントの1つ。

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実証を通じ、実装への手応えを得る。 

東京都狛江市がレベル4の自動運転バス実証運行

実際の実証走行の様子。住民見学会の申し込みはわずか数時間で定員に達したという。

レベル4の自動運転バスを地域交通手段として実装するためには、自動運転技術に対する住民の理解を深めることも重要課題の1つだ。そこで、令和6年12月20、21日の2日間、住民見学会を開催した。見学会の告知と参加者募集を同市の広報誌やホームページに掲載したところ、数時間ほどで定員に達したという。

見学会には計100人近くの一般市民が参加した。参加者へのアンケートには、「今後、市内の様々な地域で自動運転車両に走ってほしい」、「自動運転車両が走ることで市のバスサービスが維持され、安心して暮らせる地域になると思う」など、期待の声が多数寄せられた。

「将来もバスが引き続き運行されること」「今はバスが走っていない地域でもバスが走るようになること、便数が減らないこと」など、自動運転バスの実装に対しても期待感が高く、高齢者・非高齢者とも8割以上の見学会参加者が、「自動運転車両の導入後は利用したい」と回答している。

同市の松原 俊雄市長も見学会に参加し、「自動運転バスは、本市における将来の地域公共交通のあり方の1つとして進めていきたい」など、実装への手応えを感じたようだ。

一方で、走行ルート上の道路工事箇所では、一時的に手動運行に切り替えざるを得ない場面もあり、レベル4への完全移行に向けた課題も、実証を通じて明らかになったという。

佐藤さんは「今後、自動運転の技術が、想像以上に早く進歩するのは間違いないでしょう。実装に向けての課題を見つけ解決を繰り返していくことで、先々の進歩に繋がりやすくなるはず」と語る。

「今回の実証実験は、地域の公共交通を停滞させないということがスタートラインです。実装後、車両を含めシステムを運用するのは運行事業者ですから、早い段階から連携を取り合い、運行事業者の課題解決をサポートすることが、行政側の役割だと考えています」。

また、同市は以前から、バス路線が希薄な地域内でコミュニティバスを運行しているが、こちらも、やがて運転手不足が深刻化することが予想されている。「本市のコミュニティバスはシルバーパスが使えるのですが、それが“縛り”となり、思い切った路線変更や運行形態変更に踏み切りにくいのが実情です。とはいえ、昨今の人材不足を考えると、自動運転車両でダイヤをカバーすることも視野に入れながら、取り組まねばならないと考えています」。

<NTT東日本に聞く>
情報通信事業者としてのノウハウを生かし
地域社会のみなさまと循環型社会を共創。

NTT東日本-南関東 東京事業部 東京南支店  第二BI部 まちづくりコーディネート担当 副島 初月 (そえじま はつき) さん

 

 

Interviewee

NTT東日本-南関東 東京事業部 東京南支店 
第二BI部 まちづくりコーディネート担当
副島 初月 (そえじま はつき) さん

 

今回の狛江市における実証実験は、予期しない人や自転車の飛び出しなどがあり得る公道でのレベル4に向けた実証ということもあり、「ローカル5G+スマートポール」の体制を構築した点が最大の特徴です。

遮蔽物の先を映すカーブミラーを、人の目で確認して判断する正確さ・スムーズさを、カメラやセンサー、ローカル5G通信でどこまで再現できるかも、実証のポイントです。現在、複数企業や団体が自動運転バスの実現に向けて、様々な取り組みを進めています。その中でも、スマートポールを活用して道路側から情報を送っていることが、弊社の取り組みの優位点だと言えるでしょう。

自動運転バスを地域社会に実装して商用化するには、住民の理解・認知が重要です。狛江市さんとは、弊社の「NTT e-city Labo(※)」を見学いただいてからのお付き合いになりますが、グリーンスローモビリティの実証段階から、住民の皆さんへの告知など、様々な面でご協力をいただきました。多摩川住宅の建て直し事業が完了する令和9年を目途に商用化を目指していますが、見学会における住民の皆さんの反応なども参考に、今後も連携していきたいと考えます。

これまで、弊社は通信事業者として、ネットワークやソリューションの提供を通じて、地域が抱える課題解決に取り組んできました。そのノウハウを生かし、地域の皆さまとともに持続可能な循環型の地域社会を共創していきたいと考えています。

NTT e-city Labo ローカル5Gや自動運転車両の実証をはじめ、NTT東日本グループが取り組む最新ソリューションを体感できる施設

 

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お問い合わせ

サービス提供元企業:東日本電信電話株式会社

東京事業部 東京南支店
第二ビジネスイノベーション部
まちづくりコーディネート担当

Email:komae_local5G-ml@east.ntt.co.jp

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