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「アニメの聖地」とは、アニメ・漫画に出てくる地域やスポット、もしくは作家ゆかりの場所をファンが「聖地」と呼ぶところから生まれた言葉である。アニメの聖地は多くの人から注目され、国内外から観光客が集まる人気スポットとなっている場所もあるほどだ。
アニメの聖地を訪れる行為を「聖地巡礼」といい、地域を挙げてアピールする動きが盛んになっている。これからのまちおこしに欠かせないアニメの聖地について知り、地域活性化につなげるにはどうすればいいのかを考えてみよう。
【目次】
• アニメの聖地とは?
• 日本のアニメの経済効果を確認しよう
• アニメの聖地を活用した自治体の成功例
• 「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」とは
• アニメでまちおこしの際に気をつけておきたいポイントとは
• 国内外の観光客を呼び込むため、官民が連携して効果的な取り組みを
※掲載情報は公開日時点のものです。
アニメの聖地とは?
「アニメの聖地」と呼ばれるのはアニメなどの作品に登場する場所や、出身地などの作家に関係がある場所のことだ。そのような場所を実際に訪れる行為を「聖地巡礼」と呼ぶ。多くのファンが作品の世界観を感じようとその作品の聖地を訪れ、地元の自治体もこれを地域振興の手段として活用している。
聖地と呼ばれる場所を確認しよう。
アニメなどの舞台やモデルになった地域や場所
人気漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の舞台となった東京都葛飾区のJR亀有駅周辺には、登場人物の銅像が15ヵ所に建てられている。
また、地域内には作品に登場する神社や和菓子店、市場もあり、こちらもファンが訪れる人気のスポットとなっている。
作家ゆかりのまちや生家、記念館
鳥取県東伯郡北栄町は『名探偵コナン』の原作者・青山剛昌氏の出身地である。
北栄町には青山氏の足跡や再現された仕事部屋、複製原画などの資料が見学できる「青山剛昌ふるさと館」を始め、登場人物の住む家やまちが再現されているスポット、キャラクターの像が点在しており、ファンならばぜひ訪れたい場所となっている。
作品などに関連する博物館、建造物、施設
▲こちらは「トトロの木」として知られる山形県鮭川村にある天然杉
東京都三鷹市には『となりのトトロ』などでおなじみのスタジオジブリの作品を集めた美術館「三鷹の森ジブリ美術館」がある。原画や作品構想に関する資料が多く展示されていることから、ジブリ作品のファンだけでなく、アニメファン、美術ファンも満足できる内容となっている。
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▶ 新潟県三条市ではアニメ聖地の座を自ら獲得して、アニメファンを地域のファンへ。
日本のアニメの経済効果を確認しよう
「海外でも日本のアニメが人気を集めている」「人気アニメ映画の興行収入が非常に高い」などとよく聞かれるが、実際のところはどうなのだろうか。日本のアニメの経済効果について、一般社団法人 日本動画協会のレポートを見ていこう。
2023年に史上最高額となる3兆円を突破
レポートによると、日本のアニメ産業市場はコロナ禍で一時期落ち込んだものの、平成22年から成長を続けており、令和5年は前年比114.3%、4,188億円増の3兆3,465円という史上最高値を記録した。なお、令和5年は増加額、伸び率も過去最高となっている(※1)。
アニメ市場拡大の理由は「海外市場」と「配信」
好調なアニメ産業市場を牽引しているのは「海外市場」だ。令和5年は前年比118%、2,630億円増の1兆7,222円となった。この数字は国内市場を上回っており、11年連続で史上最高値を更新し続けている。また、「配信」の伸びも著しく、前年比151.39%の2,501億円となっている(※2)。
※1・2出典:一般社団法人 日本動画協会「アニメ産業レポート2024(サマリー版)」
海外からの音楽著作権収入はアニメが上位を独占
音楽関連の権利を管理する団体「JASRAC」の発表によると、海外からの著作権収入はアニメの楽曲が上位を占めている。令和6年、海外の著作権管理団体からの分配額が最も多かった国内作品は『NARUTO-ナルト-疾風伝BGM』だった。ちなみに海外からの分配額はベスト10内の9曲をアニメ作品の楽曲が占めている(※3)。
また、全ての楽曲の中から、JASRACからの著作物使用料分配額が多かった作品に贈られる「JASRAC賞」 も『推しの子』の主題歌「アイドル」の金賞をはじめとして、銀賞、銅賞もアニメ作品の楽曲となっている。
※3出典:JASRAC「2024年JASRAC賞分配額TOP10」
政府の「クールジャパン」戦略の重要な要が「アニメツーリズムの推進」
「クールジャパン」戦略(※4)とは、関係府省庁が連携して、外国人から「COOL(かっこいい)」ととらえられる日本の魅力を世界に広め、経済成長につなげるという戦略である。「情報発信」から始まり、「海外への商品やサービスの展開」、「インバウンドの国内消費」を展開していくというものだ。
※4出典:内閣府「クールジャパン戦略について」
外国人が「COOL」と考えているものの一つに「アニメ・漫画・ゲームなどのコンテンツ」がある。政府は日本のアニメコンテンツが好きな外国人観光客向けに、アニメの聖地を訪問する「アニメツーリズム」、つまり「聖地巡礼」を推進する取り組みをスタートした。具体的には以下のようなことを行っている。
・インフルエンサーのモニターツアーの実施、および協働しての情報発信
・アニメの聖地を核として、地域や日本の魅力の発信
・武将のキャラクター化など、アニメツーリズムを見据えた作品企画
アニメの聖地を活用した自治体の成功例
アニメの聖地の場所として成功した地域の例を見ていこう。
【埼玉県久喜市】普通の女子高校生たちの普段の生活を描く『らき☆すた』 に神社が登場
以前の埼玉県久喜市は都心のベッドタウンとして知られる人口3万人ほどの静かな地域だった。それが、2007年に京都アニメーションが制作した『らき☆すた』で同市の鷲宮神社が登場したことから、ファンが押し寄せるスポットへと変貌した。
この様子を見た市や商工会が、ファンのためにグッズ販売やスタンプラリーなどのイベントを開催したところ、さらに大勢の人が集まり地域のファンになる人も増加、祭りには『らき☆すた』神輿が登場するほどになった。
アニメが終了した現在も、キャラクターの誕生日や正月など定期的にイベントが行われ、ファンが集まる場所となっている。
【茨城県大洗町】『ガールズ&パンツァー』で100人超の移住者も!
戦車を使った武道“戦車道”を行う女子高生たちの青春を描く『ガールズ&パンツァー』略して「ガルパン」に登場したことをきっかけに人気になったのが、茨城県大洗町だ。大洗町では、人気を盛り上げるために、店舗などでのキャラクターパネルの展示、スタンプラリーや声優トークショーなどのイベントを開催している。
さらに、イベントなどでの住民との触れ合いがきっかけで大洗町のファンとなり、移住する若者が増えるという驚きの効果も出ている。
【神奈川県鎌倉市】『スラムダンク』 に登場する踏切に国内外から観光客が殺到
神奈川県鎌倉市の鎌倉高校前踏切は人気バスケットボール漫画『スラムダンク』に登場する踏切として有名になった場所だ。国内だけでなく海外からも多くの観光客が集まり、アニメと同じ場所で写真を撮影する人が後を絶たない状態となっている。
「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」とは
一般財団法人アニメツーリズム協会では、国内外のアニメファンの投票をもとに、アニメに登場する場所だけでなく、作者の出身地や漫画やアニメに関する美術館・博物館も含まれた「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」を毎年発表している。
また、アニメ聖地に選ばれた複数の場所を結んだ「アニメ聖地巡礼ルート」も作成し、令和2年には地域に年間400万人もの外国人観光客を呼び込んだ(※5)。選定されたアニメ聖地には、情報や魅力を伝える「番札所」を設置、一部のスポットでは「御朱印」が押印できるようにし、観光客が各地のアニメ聖地を訪れるきっかけづくりも行っている。
※5出典:内閣府「クールジャパンの推進/コンテンツを活用した地域活性化」
アニメでまちおこしの際に気をつけておきたいポイントとは
アニメを使ってのまちおこしは、国内外の観光客を呼び込むチャンスになるが、いくつか注意点もあるので押さえておこう。
国内・海外のインフルエンサーの情報発信の状況・効果を把握
インフルエンサーを使っての情報発信を検討する場合は、どのような施策が効果的かを把握することが重要となる。例えば、「国や地域に合わせた情報発信方法を考える」「多言語対応のガイドブックの作成」「アニメ聖地とそのほかの観光地を合わせたツアーの作成」などがある。
訪問客が増えてもマネタイズできなければ経済効果はない
アニメでのまちおこしの最終目的は収益化である。収益化のために、きちんと著作権許諾を取得し、地域の特産品などと連携したグッズの作成販売を検討すべきだろう。また、例えば「聖地と呼ばれる場所の周辺に飲食店やお土産店を配置する」などの方法で、地域での消費機会の増加を促したい。
地域住民への配慮を忘れずに!
観光客が大挙して訪れることを喜ばない地元住民も存在する。これらの人々への配慮も重要だ。観光客に対して、パンフレットやインターネットを利用したマナー遵守の呼びかけも忘れないように行おう。
国内外の観光客を呼び込むため、官民が連携して効果的な取り組みを
日本のアニメや漫画は日本人だけでなく海外の人からも人気を集めているため、地域内にアニメの聖地があると、多くの観光客を集めるチャンスとなる。官民が連携して、観光客に喜ばれる方法を検討してほしい。
ただし、地域にとって達成したい目的は「収益化」である。観光客を増やすことも重要だが、収益化のために「公式グッズ販売をする」「継続的にイベントを開催する」などの取り組みも考えていきたい。