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県庁職員に連続休暇の取得を促進する「休み方改革」
県全域の企業や団体も含めて、従来の休暇の取り方を見直している愛知県。庁内では職員に連続休暇を取ってもらうために行事の日程を変更することも。多くの職員が充実した時間を過ごせるよう、独自の工夫を行っているという。
※下記はジチタイワークスVol.36(2025年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
愛知県
人事局 人事課 監察室
左:室長補佐
稲垣 健一(いながき けんいち)さん
中央:主査
栗原 礼奈(くりはら れいな)さん
右:主事
脇田 智仁(わきた ともひと)さん
職員の要望を聞き入れて、庁内にも休み方改革を広げる。
従来の休暇のあり方に課題を感じていた同県。一般的に、働き手にとっての休暇の満足度は、仕事の生産性や職場への定着につながると考えられている。しかし実際は、祝休日に観光需要が集中することで、質の高い休暇を過ごせない人や、祝休日に仕事があって、子どもと過ごす時間がつくりづらい人も多いようだ。こうした状況の改善に県全域で取り組んでいこうと、プロジェクトを実施することに。“働き方”ではなく、“休み方”を見直すというメッセージを込めて「休み方改革」とネーミングしたという。
県内の企業や団体に改革を促し、プロジェクトを推進するにあたり、庁内でも職員向けの取り組みを行うことが決定。「以前から人事課が年次休暇の取得を促していたので、庁内に休みやすい環境や雰囲気は醸成されていたものの、長期休暇はあまり浸透していませんでした」と栗原さんは話す。事前に行った職員アンケートで“好きな時期に長期で休みを取りたい”という要望が多くあったことから、連続休暇を取得しやすい仕組みづくりを進めることになった。
▲家族との時間や心身の休息を充実させるために、連続休暇取得を促す。それによる仕事の効率向上も目指している。
休みを取得しやすい環境を整え職員から幹部まで浸透させる。
職員に向けた休み方改革として、令和5年11月から2つの取り組みを実施。「あいちマイ・ウィーク・プラン」は、職員自身が取りたい時期に7日間の“マイ・ウィーク”期間を決める。期間内で、土日・祝日に、2日以上の年次休暇を加え、5日以上の連続休暇を取得できるという。この期間を年に1回以上は定めるよう、職員へ促している。「大型連休にあわせた連続休暇の取得促進」では、年末年始の前後などに追加で休みを取得する。申請方法はどちらも勤怠管理システムで行っている。職員間でスケジュールを把握しながら計画を立て、複数人の休みが重なる場合は上長が調整するという仕組みだ。「周囲の人が順番に休みを取ることは、自分も休みやすくなるという相乗効果があります」と稲垣さんは話す。
「大型連休にあわせた連続休暇の取得促進」では、令和5年度の年末年始の前後3営業日(12月28日、1月4・5日)を対象の期間とした。所属ごとに各日7割の職員が休めることを目指したという。そのための工夫が、恒例行事の見直しだ。例年12月28日に行っていた仕事納め式の代わりの会議を1日前倒しして実施。また、幹部職員が出席する1月4日の仕事始め式は開催せず、年頭の知事による訓示は、職員が庁内のパソコンで視聴できるよう動画メッセージとして配信。その時期に実施予定だった会議なども、できる限り日程を変更するよう、各部署に呼びかけたという。脇田さんは「幹部職員から一般職員まで、無理なく休暇が取れるような仕組みづくりにより、休み方改革は全庁に浸透しつつあると感じています。改革を始めるにあたり、知事から職員へ休暇取得を促す発信があったことも後押しとなりました」と話す。
充実した休暇を過ごすことで日々の働き方が改善される。
5カ月実施した結果、「あいちマイ・ウィーク・プラン」は職員約1万人のうち、997人が取得した。「大型連休にあわせた連続休暇の取得促進」は、令和5年度の年末年始の取得率は53.6%で、12連休を取得した職員は18%いたという。また、満足度を測るアンケート調査では、77%が“この取り組みを続けてほしい”と回答。“子どもの長期休みに合わせて、家族とまとまった時間を過ごすことができた”“課全体で休暇を取得しようという雰囲気の醸成につながった”などの賛成意見があった。一方で、連続休暇が取れるように業務量の見直しを求める声や、年末年始に休暇を取りづらい業務の職員への配慮が欲しいという意見も。そのため、令和6年度は5月の大型連休と、お盆にも連続休暇が取れるように改善し、それぞれ職員の約3割が取得できたそうだ。
「職員一人ひとりが休み方を意識することは、メリハリのある働き方を意識することでもあります。私も年末年始の12連休では、趣味などを楽しんでリフレッシュでき、休み明けは仕事に集中することができました」と栗原さん。脇田さんも「これまで長い時間を費やしていた業務も、休みまでに終わらせようと短期間で取り組めるようになりました。全庁的に働き方の意識改善ができ、休んでも適切に生産性が担保できていると感じています」と手応えを得ている。
今後も休みやすい職場環境を整えることで、業務効率の向上やワーク・ライフ・バランスを推進していく同県。この取り組みが県全体から全国へと広がって休暇のあり方が変わり、日本の経済がさらに活性化することを目指すという。