ジチタイワークス

北海道北広島市

新スタジアム「エスコンフィールド」を核とした、地域が進化するまちづくり。

スポーツ施設の開業準備と管理運営

令和5年3月、北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールド HOKKAIDO」を核としたエリア「北海道ボールパークFビレッジ」が開業した。民設民営の大型施設を誘致し、まちづくりを推進する北広島市の担当者に話を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.36(2025年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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北広島市
経済部 ボールパーク連携推進室
ボールパーク連携推進課
主任 葛西 貴弥(かさい たかや)さん

小さな組織の機動力を活かしてプロ野球チームの本拠地を誘致。

約32haの広大な土地に、球場や商業施設、グランピング施設に居住区などが共存している北海道ボールパークFビレッジ(以下、Fビレッジ)。スポーツ施設を核とする地域創生モデルとして注目され、同市への視察は後を絶たない。Fビレッジが建設された場所は、50年以上前から総合運動公園の予定地とされながら、財政などの課題で未整備だった。平成27年、市長選挙をきっかけに公園整備の検討を進めることに。「行政だけで整備や運営をするのは難しいと思い、官民連携をはじめ様々な手法を念頭に置いて調査を始めました。また、道内では硬式球が使える施設が限られていたこともあり、高校野球の地方大会や、プロ野球の2軍の試合ができるような野球場をつくりたいと考えていたのです」と葛西さんは話す。

球場に必要なスペックを聞くために、プロ野球チームの「北海道日本ハムファイターズ(以下、ファイターズ)」を訪問したとき、偶然にも新球場の構想があることを知ったという。何か一緒にやれることはないかと半年ほど当時の企画財政部内で検討し、メディアで新球場構想が発表されると、いち早く市長が誘致を表明。本格的に自治体として動き出し、ファイターズとの話し合いを重ねていった。

「誘致にあたって懸念していたのは、民間のスピード感についていけるかどうか。そこで、市庁舎が1カ所にまとまり、フロアを降りればトップ決裁をもらえる小さな組織の強みを活かし、職員が協力して合意形成や手続きを迅速に進めていきました。市長から当時の企画財政部長に一部の権限を委任してもらい協議に臨んだのです」。財政面については、国の補助金や、将来的な経済効果を含めて試算し、施設建設に伴うインフラ整備の費用も賄えると見込んだそうだ。

手付かずの広い土地を開発し人が集う小さなまちをつくる。

誘致にあたっては球場の固定資産税相当額を10年間免除する上、公園の土地を一定期間無償で貸し付け、ファイターズができる限り自由に開発できるようサポートするという破格の条件を提示した。プロポーザルの結果、平成30年に建設が決定。人口約5万8,000人の自治体が、プロ野球チームの本拠地に選ばれるのは類を見ないことだったという。

「ファイターズには、野球の試合がないときも人が集まり、楽しんでもらえる場にしたいというビジョンがあり、当市が目指す姿と一致していました。広大な土地があり、真っ白なキャンバスに新しいまちを描いていけると思ったのではないでしょうか。色々な課題について早めに話し合い、ボタンのかけ違いが起きないよう、双方の役割を明確にしました」。

同市では、誘致に向けて40回以上にわたる市民説明会を開催。新球場への理解を広げるとともに財政面の見通しを伝え、市民の不安な気持ちや疑問にも応えてきた。誘致を表明した直後には市民グループが立ち上がり、誘致に向けて署名活動が行われた。行政と一緒に観戦ツアーを開催し、大型バス5台で「大和ハウスプレミストドーム(札幌ドーム)」に行き応援したこともあるとか。ファイターズと市長が意見交換するシンポジウムには、多くの市民が訪れて会場が熱気に包まれたという。「市民の歓迎ムードが、誘致成功の決め手になったと思います」。

平成28年に市民グループによる「ファイターズ応援ツアー」が開催され、総勢239人が参加したという。

協議を重ねて運営体制を整え多様な人が楽しめる施設に。

Fビレッジは民設民営の施設であり、全体的な企画や建設、施設運営は「ファイターズ スポーツ&エンターテイメント(以下、FSE)」を中心に行われている。同市は周辺の交通環境などのインフラ整備や、行政に関わる様々な許可や権限を与える役割を担う。施設の総合管理は、FSEから「東急コミュニティー」が受託。同社は、開業の約1年半前から、自治体を含む関係各所と何十回も協議を重ねてきたという。施設の使い方や警備の配置など細かい部分まで確認し、開業に向けた全体スケジュールを立て、調整業務も担ってきた。開業後はFビレッジに常駐し、施設の管理を務めている。「近隣自治会とのやりとりなどもFSEと一緒に対応してくれるので行政としてはとても助かっています。安心してお任せしていますね」。

エスコンフィールドは日本初の開閉式屋根付き天然芝球場。芝のメンテナンスや清掃を含む全体の管理には特に力が注がれている。「以前、海外の有名企業の方を案内したことがあったのですが、“こんなにきれいな球場は見たことがない”と大変喜ばれました。ほかにも、来場者からはエスカレーターやエレベーターが多くて便利だという声が届いています。車いす用の観戦席が数種類あるなど、バリアフリー機能も整っていて、多様な人が楽しめる球場です」。

球場が生む経済効果は高く市民の地域への愛着も増した。

Fビレッジがもたらす経済効果は、北広島市で年間約500億円、北海道全体では1,000億円を超える推計が出ている。試合がある日は3万人以上が訪れ、周辺施設での消費も増加。開業以降、新規企業や店舗が増加するなど経済の活性化が進んでいるという。

令和5年度の市民満足度調査では、約75%がFビレッジを訪れたと回答。地域への愛着が向上したことが明らかになった。「ファイターズのグッズを身に着けている人が、とても多くなりましたね。球場ができたことで市の認知度が上がり、誇りに思ってくれる市民が増えたことは大きな成果だと思います」。

今後はさらに開発が進み、2028年にはFビレッジの近くに新駅ができる予定だ。また、教育・医療・ビジネスの拠点としても機能する構想を描いている。「スポーツがまちづくりに大きく寄与することを実感しています。市民、FSE、企業などたくさんの人たちと連携し、さらに魅力ある市にしていきたいです」。

エスコンフィールドは、国が目指す“まちづくりや地域活性化の核となるスタジアム・アリーナ”として選定されている。スポーツによる地域活性化モデルとして、ますますの進化が期待される。

施設管理パートナーである東急コミュニティーの役割

※館内物流、駐車場運営、フィールド管理、イベント管理とも連携

 

施設がどのように使用されるのか確認する
開業までのマスタースケジュールを作成する
利用者の動線に合わせた警備計画を立てる

Fビレッジ開業の1年半前から、施設管理パートナーとしてチームに参加。球場を運営するために必要なことを関係者に伝え、スケジュールを決めて実施すべきことを示し、プロジェクトを推進した。
 

各部署から工事などの予定を申請してもらう
各業者の動線がバッティングしないように調整する
予定に合わせて必要な人員を手配する

工事の内容や場所などを記入する申請書フォーマットを作成し、各部署から申請書を提出してもらうことで全体を把握。内容をチェックし、スケジュールや動線が重なっている場合は調整する。
 

屋根の開閉時間を調整して温度を快適に保つ
日照時間のデータを芝生の育成に活かす
エネルギー消費とのバランスを見極める

天然芝を育てるためとはいえ、屋根が開いていると外気温になってしまう。そこで、芝生管理会社と日照獲得時間をもとに協議。芝の生育と温度管理を両立できるよう、最適なタイミングで開閉している。

 

担当者の声

東急コミュニティー
北海道支社
ビル運営部運営チーム
営業担当課長
青島 賢之介(あおしま けんのすけ)さん

Fビレッジチームの一員として球場のファンをつくるために取り組む。

運営会社と連携し顧客の声に応える

球場を運営するFSEと連携し、常にコミュニケーションを取りながら施設管理に関する業務を担っています。開業前から現在に至るまで私を含め約20人のスタッフが常駐し、試合に合わせて必要な人員を手配して迅速に動ける体制を整えるなど、観戦する人たちが快適に楽しく過ごせるよう心がけています。

FSEが運営するSNSアカウント「Fビレッジおじさん」には、手すりのぐらつきや鳥のふんのことなど、来場者から様々な声が寄せられます。一件ずつ確認し、可能な限り迅速に対応。デッキのスロープや多目的トイレのユニバーサルシートは、こうした現場の声を改善に活かした結果です。改善したことはFビレッジおじさんから発信し、双方向のコミュニケーションを大切にしています。FSEもわれわれも、球団だけでなく“球場のファン”を増やしたいという思いで日々業務に取り組んでいます。

セキュリティ面の管理も私たちの仕事です。施設の利用時間によって、開閉する扉や警備の配置を決定。色々なイベントが事故なく安全に行えるよう、細心の注意を払っています。

新しいことに挑戦する攻めの管理

人口6万人弱の市に3万人以上の観客が入るスタジアムを建設したことにより、上下水道やごみの排出など、行政との協議、連携は日常的に発生しています。課題や懸念があれば官民で連携して解決策を検討。特に交通関係は、行政を介して近隣の声を聞きながら交通誘導の業務設計を行い、範囲や内容を協議します。駅からスタジアムまで、来場客が安全かつスムーズに移動できる動線を確保し、誘導することも大事な役割です。

当社では全国各地で大型スポーツ施設、ビル、商業施設など多様な施設の運営管理をしてきました。蓄積したノウハウと経験は、Fビレッジでも活かされています。決まった業務だけをこなす守りの管理ではなく、観戦客から何が必要とされ、どんなふうにすれば喜んでもらえるのかを考え、新しいことにも挑戦していくことが大切です。様々な関係者と連携し、よりよい提案ができる“攻めの管理”を大切に、チーム一丸となってFビレッジをしっかり支えていきたいと思います。

SNSへの改善要望にはFSEと協力してできる限り対応。段差で転びそうという投稿を受けてラインを引き、注意を促した。

 

CHECK!

国土交通省PPP協定パートナーとして活動

大型スポーツ施設管理などの実績とノウハウを活かし、顧客視点に立ったサポート力を強みに事業展開している同社。PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)協定パートナーとして、PPP/PFI に関するセミナー開催や相談対応なども随時行っている。

管理実績

PFI事業・・・33件
ビル・その他指定管理者物件・・・58件
住宅系指定管理者物件・・・約24万戸

※令和6年4月1日時点(PFI事業は稼働予定・終了事業も含む)東急コミュニティー調べ

お問い合わせ

サービス提供元企業:株式会社東急コミュニティー

営業開発本部 PPP営業部
事業推進チーム

東京都渋谷区道玄坂1-21-1
渋谷ソラスタ6F

TEL:03-5717-1083
Email:kanminrenkei@tokyu-com.co.jp

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