ジチタイワークス

鳥取県伯耆町

他部署との連携を深め、事業者とも協力しながら地域の足を維持する。

4部署間の垣根を越えたバス事業の効率的な運用

交通、教育、総務、介護の4部署が関係するバス事業を、横断的に一括で管理している伯耆町。民間の路線バスの撤退を機に始まった“伯耆町型バス事業”の成り立ちや現在の運営について話を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.35(2024年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

分庁総合窓口課
副室長
伊澤 靖成(いざわ やすなり)さん

新たなバス事業の導入をきっかけに効率的な運用方法を同時に検討。

同町が公共交通の見直しを迫られたのは、平成18年のこと。路線バスを運営する事業者から、幹線に接続する全支線で、翌年から運行を廃止すると通達されたのがきっかけだった。「住民の移動手段確保に向けて、路線バスに代わる新たな手段を検討。その結果、予約制のデマンドバスとスクールバス機能を兼ねたバスを導入することになりました」と、分庁総合窓口課の伊澤さんは当時を振り返る。交通・教育と部署をまたぐため、平成19年からの運行に向けて新たに地域交通室を設置。その後、研修などに利用できる総務のバスと、外出支援サービス事業に使う介護のバスも加えて、町のバス事業に関する施策や窓口的役割を同室が一括で担うことにした。「地域交通特別会計を新設して予算も同様に一括管理するので、事業全体の費用対効果を把握しやすい上に、一つの会計で予算管理ができるようになりました」。一元化にあたっては当時の関係部署でプロジェクトチームを結成。職員が2週間で手分けして全路線・全便の利用調査を行ったという。

機構改革により地域交通室は平成25年に廃止され、現在は企画課と分庁総合窓口課でバス事業を管理。「企画課は主にバス事業に関する許認可などの手続き、会計全般の管理、財源の管理に関することを、分庁総合窓口課は運行管理者として年間を通じての運行配置やダイヤ改正、関連する部署や運行業者との連絡調整などが主な業務です」。運転手の点呼や車両管理など実際の運行業務は交通事業者に委託している。

“伯耆町型バス事業”は令和6年度で18年目を迎えた。 

各関係部署との情報共有を密にして迅速で細やかな対応を可能にする。

4つの部署のバス事業を一元管理する同町の取り組みは“伯耆町型バス事業”と呼ばれ、開始以来変わらない形態で今日まで運行を続けている。朝夕はスクールバス、日中はデマンドバスとして運行し、予約がある場合は研修バスとしても走らせる。一般住民も利用できるようにするため、スクールバスの有償運送を申請。住民の利便性も考慮している。予約が必要なデマンドバスや外出支援サービスについては委託業者の運営する配車センターが対応し、研修バスについては分庁総合窓口課が受け付ける。同課とセンターが連絡を密にし、デマンドバスと研修バスの予約が重複した場合などでも車両や運転手の確保が迅速に調整できているという。

「当初は運行側も利用者も初めての取り組みということもあり、トラブルが多かったと聞いています。例えばスクールバスの運行では、学校側と考え方が合わないことも。現在は通常の運行はもちろんのこと、ダイヤ改正や夏休み中の運行などについて、教育委員会事務局や各学校担当者と定期的に意見交換する場を設けています。積雪などによる急な運休が生じても、連携して保護者に連絡を取る体制ができています」。

高齢者や障害者などを乗せる外出支援サービスは、介護・福祉部署との連携が欠かせない。事前に本人や家族、ケアマネジャーなどに注意点を確認し、運転手に共有しているという。「福祉タクシーではないので、運転手は乗降時の介助くらいしかできませんが、利用者にはできる限り寄り添って対応するよう心がけています」。
 

将来的な運転手不足に備えた、持続可能な体制づくりが必要。

「路線バスの頃と比べて利便性は向上していると思います。便数は多くありませんが、自宅からバス停までの移動の負担を軽減するためバス停の数を増やしたり、設置場所の調整を行ったりもしています。事業全体としては、窓口を一元化したことで1人の運転手が兼任で運行できるようになり、少ない人員で多様な運行が可能となりました」。このようなサービスを持続的に提供できているのは、各担当部署だけでなく委託業者の協力も大きいという。「委託先は、これまで路線バスを走らせていた業者と町内のタクシー会社の2社。委託することで新たな収入源と雇用が生まれています。両社とも、日頃から密に連携することにより良好な関係が築けているため、事業に対して非常に協力的で助かっていますね」。

しかし5年、10年先を見据えると現行の体制を維持するのは困難だと伊澤さんは語る。「令和6年の労働基準法の改正などによる人材不足は、当町も例外ではありません。運転手の高齢化が進む中、次の担い手が見つからないのが現状です。現在は、来年度に向けて運用の見直しを進めています。例えばスクールバスについては路線バスと重複する区間があるので、路線バスを併用することで運転手の削減を図れるよう調整中です。今までのように全て町営で運行するのではなく、民間の力を借りながら地域の足を維持したいと思います」。
 

 

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