あらゆる自治体業務において、必要不可欠なツールの一つである「GIS(地理情報システム)」。国を挙げて利活用を呼びかけてきたこともあって、導入自治体は着実に増えている。一方で、地理情報データの具体的な利活用法がイメージできていないケースや、全庁横断的な活用が進んでいないケースなども多いという。
そうした中、自治体や民間企業などが持つ様々なデータを1つの地図に集約できる「地理空間データ連携基盤」の注目度が高まっているという。同サービスを提供する「Geolonia」の西川さんに、サービスの概要や活用によるメリットなどを尋ねた。
※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです
[PR]株式会社 Geolonia
Interviewee
Geolonia
取締役COO:西川 伸一(にしかわ しんいち)さん
スマートシティ実現のカギは「地理空間情報」の活用。
都市づくりと地図とは、切っても切れない関係にある。都市が生まれる前の段階から、人々は山、川、平地、海など自然の地形に影響を受けながら、まちを形成してきた。それがやがて、交通計画や都市計画の策定につながり、福祉サービスの提供や防災・減災への取り組みなど、都市のシステムとして発展していく。それら都市づくりやインフラ整備業務には、必ず地図を用いることになる。
民間でも同様で、不動産、観光、エネルギー、店舗建設など各方面で地図が活躍している。言い換えれば、自治体で地図を使わない部署は、ほとんどない。以前は紙だった地図が、近年はGISへと急速に進んでおり、総務省の調べによると、53.2%の都道府県および65.9%の市区町村が、令和5年度までにGISの導入を完了した※1。
ただ、各部局がそれぞれの業務で個別にGISを使う、あるいは役所の中に閉じた利用に留まっている自治体がほとんどだ。その主な原因の一つが、「地図データがインターネットに出ていかないこと」と西川さんは指摘する。
各部局のGISデータを1つのWEB地図にまとめ、ハザードマップや要支援者の所在地データなどを集約すれば、万が一の発災時、行政側の意思決定も住民側の避難行動も迅速化できる。
「リアルタイムな被災情報が1つの地図上で見えて、自席のパソコンで確認できる。その環境が整えば、紙主体で行われていることが多い災害対策本部の業務を大幅に効率化し、住民の安全性を高めることができるでしょう」。
それを実現するための“カギ”は、地理空間情報をインターネットで活用できる仕組みだろう。「弊社はGIS をクラウドで提供しているのですが、元々のゴールはスマートシティを実現すること。スマートシティとは、まちづくりをデジタル化することであるため、まちに関わるあらゆる情報をインターネット上で動くデジタル地図にしてはどうかと考えたのが、GIS を取り扱うようになった理由です」。
自治体が持つ様々な情報を一カ所に集めて、重ね合わせて見えるようにする。そうすれば、自治体も民間企業も住民も、みんなでまちづくりを考えられるようになるだろう。
※1 令和6年4月総務省自治行政局行政経営支援室「自治体DX・情報化推進概要」より(https://www.soumu.go.jp/main_content/000944041.pdf)
GIS(地理情報システム)とは?
▶ 自治体での利用目的や導入状況を分かりやすく解説!
「地理空間データ連携基盤」がデジタル地図づくりを単純にする。
「Geolonia」は、位置情報関連のクラウド事業やオープンソースによるシステム開発、位置情報利活用の支援事業などに強みを持つスタートアップ企業。地理空間情報の社会的重要性が高まる中、最新技術を用いて、スマートシティ実現に向けた施策や不動産、物流、ドローン、ロボット向けなど、様々なデジタル地図を提供している。
令和5年より提供開始した「地理空間データ連携基盤」は、WEB地図にGISデータ、住所データ、FIWARE(ファイウェア)データ※2、センサー・GPSによるリアルタイムデータなどを統合できる。
「通常のインターネットブラウザで閲覧できる軽量で高速なWEB地図なのが最初のポイントです。この地図に、ExcelやGISファイル、最近では国土交通省の「PLATEAU(プラトー)」など、自治体が持つ様々な地理情報データを重ね合わせることができます」。
デジタル地図を整備する重要性は理解できるものの、手間やコスト面、職員のスキルや時間的な制約から、二の足を踏む自治体も少なくはないだろう。
その点、地理空間データ連携基盤で行う作業は、普段使っている台帳データやGISファイルをアップロードするだけと非常にシンプルである。「どの職員でも簡単に始めることができます。自治体は多くの地理空間情報を持っており、複数部署に色々な地図や住所情報があるはずです。都市計画GISやインフラ管理用GIS、様々な台帳情報は、全て地図にすることができます。また、オープンデータとして、避難所や子育て、介護施設、病院や投票所の情報などを整備している自治体なら、そうした情報も地図にできます」。
※2 国や地方自治体、民間企業などの枠を超えて、それぞれが保有するデータの相互利用などを促すために開発されたソフトウェア群
さらに、国や民間の情報も取り込むことで、コストと手間を削減することも可能といい、「例えば、国土地理院の『地理院地図』を採用することで、背景となる地図が準備できます。地理院地図は元々、自治体がつくる都市計画基本図や道路台帳図をもとにして国土地理院が更新を行うので、地形図や写真、標高、地形分類、災害情報など様々な地理空間情報が提供されています」。
また、国土交通省が作成・公開している「国土数値情報」には、人口、交通、地価、統計、土地利用に関する情報が揃っており、法務省は地番の地図データを、デジタル庁は住居表示の基礎データを、それぞれ公開している。
「地理院地図を下敷きにして、その上に色々な省庁や民間の情報を重ねていくことで、自治体の情報だけでは作成が困難な、まちの姿をきちんとあらわす地図ができ上がります」。
画像: 高松市スマートマップ。役所、国、県、民間の情報を集めて地図ができている
地図を使ったアプリでスマートシティ実現に向けた課題を解決する。
ひとたび一カ所に集められたデジタル地図は、都市計画、防災、建築・土木、観光、交通など、様々なユースケースで活用できるようになる。整備した地図を様々な現場で簡単に使えるようにする仕組みが、「地図API」だ。同サービスを活用することで、1枚の地図から多くのアプリケーションが作成することができる。
「公開型GISのほか、防災アプリ、イベントマップ、観光地図など、住民にも見てもらう地図アプリや、盛り土管理、公園台帳、電子申請など、自治体業務に地図を活用する様々なアプリがつくられています」。
これまで、自治体が公開型GISや防災アプリ、台帳管理システムなどをつくる際は、各部署が個別に地図データや地図サーバーを用意していた。そのため、全体的に多額のコストが必要な上に、一つひとつの地図のデータ量やクオリティは下がってしまう傾向が見られていたという。
「その点、タクシー配車アプリやフードデリバリーサービス、ホテルや民泊の検索サービスなどは、『Google』や『Apple』などが提供する地図APIを使って、自前で地図システムを用意することなくサービスを展開しています。自治体が住民サービスや業務アプリケーションで地図を使う際も、あらかじめ国、都道府県、基礎自治体、民間のデータを連携させた地図を利用すれば、大幅に手間が省けるはずです」。
民間ですでに成功している形を、自治体に持ち込もうというわけだ。この方法ならば、あらかじめ地図があることで、UI/UXの設計やデザインをすぐに始められる。「その分、サービスや業務を実施する単体の発注業務コストも、自治体全体が負担する費用も、一気に下げられるのです」。
国のデータ活用の仕組みとして標準化を進める。
「スマートシティのプラットフォームは、各自治体が柔軟に活用できるデジタル地図。『GAFAM』のような巨大IT企業の仕組みに依存するのではなく、国や自治体がオープンな仕組みをつくり、連携して運営するべきなのです」と、西川さんは強調する。
その実現を後押しするのが、令和5年8月に内閣府が改訂版を公開した「スマートシティリファレンスアーキテクチャ(ホワイトペーパー)およびスマートシティガイドブック」と、デジタル田園都市国家構想推進交付金だ。
ちなみに、令和5年3月から、地理空間データ連携基盤の活用による「高松市スマートマップ」を公開型GISとして立ち上げた高松市の場合、約150種類の位置情報データをWEB地図上に掲載。防災アプリとして「たかまつマイセーフティマップ」を公開したほか、消防、MaaS、電子申請などの分野でも、アプリ開発が進んでいるという。
同市の場合は、令和4年度6月の「デジタル田園都市国家構想推進交付金」(デジタル実装タイプTYPE3)と翌年のTYPE2への採択により、Geoloniaと仕組みをつくり上げた。その業務で同社は、地理空間情報をインターネットの仕組みにつなげることで、データ連携とスマートシティを実現する仕組みを提案した。
「デジ田でつくった仕組みを、ほかの自治体にも使ってもらいたいと思っていたところ、ちょうど内閣府からお声がけいただきました。データをどんどん追加できること、アプリケーションが次々に生まれていること、仕様やソースコードがオープンなので、ベンダーが限定されないことを評価いただきました」
出典:2024年9月17日内閣府科学技術・イノベーション推進事務局「地理空間データ連携基盤」資料より
「政府は、これまでも地域におけるデータ連携を推進してきましたが、“成功例”といえるほどのものは見当たらないようで、『データはあるが使えない』『コストがかかって維持できない』『新しいユースケースやビジネスが生まれない』などが実情のようです。その点、当社のデジタル地図の仕組みを活用することで、スマートシティに向けた歩みを具体的に実現することができるのです」。
すでに同社サービスを導入し、活用している自治体のアプリケーションは、他自治体でもすぐにコピーして使えるとのこと。データ標準化が進む中でこの仕組みを使えば、様々なスタートアップや大企業がつくるアプリも、どんどん使えるようになる。人口減少に伴い自治体の予算が減り、インフラの老朽化が進む中で、自治体はより効率的に、住民の暮らしを守っていく必要がある。
成功しているアプリケーションをコピーし、少しずつ増やしていくことで人口問題や災害の激甚化にも対応できるはずだ。「データを連携させるためには、組織同士が連携する必要があります。地図は情報が重なるという特徴があるので、産官学民が協力するための仕組みにもなります。こうした特徴を活かして、官民全員が参加できるスマートシティ実現に取り組みたいですね」。
[Geolonia 地理空間データ連携基盤の特徴]
● 膨大な量のデータを1枚の地図に集約
様々なデータフォーマットに対応可能。ファイル形式が異なるデータを、地図上に集約できる。
● WEB上で高速で軽快な表示
Google Mapsや地理院地図と同じフォーマットでつくられているので、一般的なブラウザで閲覧でき、表示も高速。
● API化して外部アプリやサービスと連携可能
自治体情報が詰まった地図をAPI化することで、業務DXや住民サービス向上につながるアプリなどと連携させられる。
● オープンな仕様とソースコード
ベンダーロックインされることなく、地場の企業も含めた様々な事業者が相乗りできる仕組み。
お問い合わせ
サービス提供元企業:株式会社Geolonia
TEL:03-6824-4290
E-mail:hello@geolonia.com
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