ジチタイワークス

岐阜県大垣市

学校で防災備品を備蓄しながら、防災教材としても活用する。

普段は椅子に、災害時はつなげて床に敷ける防災マット

避難所に欠かせないベッド関係の備蓄だが、保管場所に限りがあるため導入に頭を悩ます自治体は多いだろう。大垣市ではその悩みを解消するため、防災マットにもなるクッションを全小学校に導入するという。

※下記はジチタイワークスVol.33(2024年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[PR]太平洋工業株式会社

左から
岐阜県大垣市
生活環境部 危機管理室
主幹 國枝 義典(くにえだ よしのり)さん
主事 山下 凌(やました りょう)さん

地元事業者からの相談をきっかけに、新しい発想の防災マットを共同開発。

同市では令和6年6月から全小学校を対象に防災マット「MATOMAT(マトマット)」の導入を開始した。これは市内に本社を置く「太平洋工業」が開発した製品で、普段は教室で児童の椅子のクッションとして使い、災害時には複数枚をつなげてマットになるというものだ。きっかけは、災害時にも活用できるクッションの開発について、同社が相談に訪れたことだった。同社は、事業の生産過程で出るウレタン廃棄物の再利用方法として、学校の椅子の座り心地を和らげるクッションを発案。災害時には学校が避難所として使われることを踏まえ、防災の観点からも何か役立てたいという思いがあったそうだ。國枝さんの第一印象は「普段も災害時も利用できるフェーズフリーなアイデアで、新たな可能性を感じるものだった」という。

「幸いなことに当市を含め岐阜県の西濃地区は、何十年も災害に見舞われていません。しかし、職員も市民も“災害の経験がない”ことに危機感を抱いています。能登半島地震では職員が支援に行き、現地の避難所生活が長期化している様子を見て、避難所の環境整備や対策が、より一層必要だと考えるようになりました」。

危機管理室・教育委員会・事業者で協議し、実証実験を経て導入へ。

「同社から最初に相談があったのは令和4年8月でした。学校で使うものなので教育委員会にも声をかけ、意見交換を重ねました」と山下さんは当時を振り返る。「学校の椅子が硬く、子ども用にクッションを持ち込みたいという保護者からの要望に応えられそう、全校集会がある冬場の体育館の床冷え対策に使えそう
など、教育委員会でも好反応でした」。試作には、教育現場を知る教員のアドバイスが大いに役立ったという。「例えば色。性別問わず使えて汚れが目立ちにくいグレーを選びました。子どもたちの行動を予想し、飲み物をこぼしても大丈夫なようにはっ水性のある生地を採用したり、椅子への装着方法なども検討したりしました」。中学校でも使い続けられるよう、将来を見据えて十分な耐久テストを行った。

令和5年9月には3者で「防災用マットの開発に向けた実証実験に関する連携協定」を締結し、約360人の児童が通う静里小学校で、10月から翌年3月まで実証実験を行った。「期間中、教員や子どもたちを対象にアンケートを実施し、それらをもとに製品の改良を重ねました。また、市内全小学校への本格導入に向けて、市民に広く知ってもらう機会をつくるなど準備を進めました」。

学校で、防災について考える教材としての活用にも期待。

市内の全児童と来春入学予定者分の防災用品として、1万枚を令和6年度の予算に計上し、一人ひとりに配布を開始。利用する場所は学校だが、あくまで防災備蓄品として危機管理室が予算計上した。「同製品は10枚つなげば、大人一人が横になれるスペースが確保できます。例えば全児童が300人の小学校では、約30人分のスペースに。学校は避難所にもなるので、避難者全員分は難しくても、配慮が必要な人へ優先して使えるのではないでしょうか」。防災備蓄品は保管場所が課題となるが、その心配がないのもポイントだったという。「段ボールベッドなども備えていますが、保管場所が限られるため、多くは備蓄できません。これなら普段は子どもたちが使いながら備えもできる、まさにフェーズフリーな製品だと思います」。クッションは面ファスナー仕様となっており、接続するときや分解するときもワンタッチで簡単に行えるそうだ。

また、教育ツールとしての役割も期待していると國枝さんは話す。「座っているクッションが防災用品だという話をきっかけに、学校や家庭で防災について話し合えるかもしれません。廃棄する材料を再利用していることや、製造に福祉施設の協力があることなど、教育の題材になるのではと期待しています」。

 


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サービス提供元企業:太平洋工業株式会社

新規事業推進部 事業戦略グループ

TEL:0584-93-0171
E-mail:matomat@pacific-ind.co.jp
岐阜県大垣市久徳町100

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