ジチタイワークス

【セミナーレポート】ノーコードツールで自治体業務はどう変わる?市民サービス向上を目指した全庁的なDX推進

国の自治体DX推進計画も期間の半ばを過ぎ、全国で様々な成功事例が生まれています。そうした中、「取組がなかなか進まない」と焦りを感じている自治体も少なくないようです。

本セミナーでは、「ひと」を中心に据えたデジタル活用の道を進む仙台市と、ノーコードツールで自治体DXを応援する事業者が登壇。デジタルツールを駆使した業務改革について語ってもらいました。

概要

□タイトル:ノーコードツールで自治体業務はどう変わる?市民サービス向上を目指した全庁的なDX推進
□実施日:2024年6月25日(火)
□参加対象:自治体職員
□開催形式:オンライン(Zoom)
□お申込み数:182人
□プログラム:
 第1部:DX推進に関する仙台市の取組状況
 第2部:ノーコードグループウェアで自治体業務を改善!“紙文化”をやめたい!から始まった庁内DX


DX推進に関する仙台市の取組状況

令和6年に新たなDX推進計画を打ち出した仙台市。この計画で解決を目指している課題は、全国の自治体に共通のものだといえる。同市ではどのようなステップで課題解決を目指しているのか、DX推進部門の課長が取組の内容を共有してくれた。

<講師>

金 裕史氏
仙台市 まちづくり政策局 行政デジタル推進課 課長

プロフィール

民間企業を経て平成17年に入庁。情報政策課で文書管理システムの導入などに3年間従事。以降、水道局企画財務課、総務局行財政改革課など庁内様々な部署を経て、令和6年4月から現職。


「ひとならでは」の業務を強化するためデジタルの活用を段階的に進める。

仙台市では令和6年3月に「仙台市DX推進計画2024-2026」を策定しました。人口減少が進む中、職員の確保も困難になる。一方で市民ニーズは多様化し、仕事は複雑化・高度化していく。そうした中で市民のニーズに対応し、安定的に行政サービスを提供していくためにはどうすればいいか、というのが計画のコンセプトです。

この計画では、「Full Digital(フルデジタル)の市役所」というテーマを掲げています。これは、DXによって時間や空間にとらわれない柔軟な行政サービスの提供を実現し、職員側についてもライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を可能にする、というものです。さらに、DXによって生み出されたマンパワーなどのリソースを、人でなければ対応できない高度な業務に割り当てて、人を中心にデジタル化を進める、という目的も含んでいます。

フルデジタルの市役所では、デジタル技術を用いつつ「ひとならでは」のサービス、暮らしを豊かにするサービスを意識しています。また、まちに目を向けると、市が保有しているデータをオープン化し、民間でも活用してもらうことで、データを活用した新しいまちづくりや、地域の魅力向上につなげるといったことを掲げています。

下図は、フルデジタルの市役所を実現するための道のりです。本年度から令和8年度までの3年間を「集中改革期間」と設定し、窓口サービスの見直しや業務の効率化・集約化、DX人材の確保・育成などと進め、基盤を整備します。令和9年度以降の3年間は「高度化期間」で、令和12年度までに目標を達成することを目指しています。

この集中改革期間に取り組む具体的な事項として、例えば「書かない窓口」、「待たない窓口」、あるいはオンライン化で「行かない窓口」を実現し、市民負担の軽減を目指します。市役所の仕組みの変革という面では、業務・職場のデジタルシフト、業務の集約化を進め、生み出されたリソースで新たな課題に対応するといったことを掲げています。

また、これらに加えて「誰にも優しいデジタル化」として、デジタルデバイド、あるいは日本語が得意でない方、障害のある方なども含め、あらゆる人がデジタル化の恩恵を受けられることを目指した取組も進行中です。スマートフォン教室などのデジタル活用支援を行うことはもちろん、分かりやすく使いやすいデジタル化、あるいはデジタル化で生み出されたリソースで、アナログな業務をより充実させていくといったことも、このテーマにつながっていくと考えています。

住民の意見、外部人材、グループウェアとあらゆるものを活用して、改革の遂行へ。

本年度からは、「デジタル改善目安箱」という新たな取組を始めています。これはアナログな手続きで感じた不便などについて、市民から意見や提案を受けるものです。現時点で寄せられた提案の半分以上が「紙や電話でしかできない手続きをオンラインでもできるようにしてほしい」というものでした。こうした要望の中で、すでに対応方針が決まったものはホームページでも公開しています。

次はDX人材について。今回の計画では、人材の確保・育成にも力を入れています。“確保”の面では、本年度から社会人採用に「情報職」という区分を設け、ICTに関する業務経験がある人材の採用を薦めています。“育成”という部分は研修の充実を図ることとしており、従来の研修に加え、全職員が受ける基本研修の中に、DXに関するカリキュラムを組み入れ、DXの必要性を浸透させる取組を実施しています。

これらに加え、外部人材も活用しています。1つ目がCDO補佐官。当市のCDOである市長を専門的見地から補佐する職員として、経営的な立場にある人材を置いています。2つ目がデジタル推進専門官。主にデジタル部門の様々な事業に対しての助言や、各部署との意見交換、場合によっては現場支援に入るといったことを行っています。そして3つ目が情報アドバイザー。情報化セキュリティに関する学識経験者である大学の先生4名を委嘱しており、年に数回相談などの支援を受けています。

最後に、ITツールの活用事例を紹介します。

当市では、グループウェアとして「デスクネッツネオ」を採用しており、スケジュール管理はもちろん掲示板や回覧板、設備や会議室などの予約、メールなど、様々な用途で業務に根付いています。例えば「電子会議室」。区役所も含めて関係する部署が多いと、集まって打ち合わせをすることも難しくなるので、この電子会議室を活用し、情報共有や様々な依頼などを行っています。円滑なコミュニケーションが図れる上、過去のやりとりを検索しやすいというメリットも生じています。

以上、当市の取組が参考になれば幸いです。より具体的な内容はホームページにも掲載しているので、ぜひご確認ください。

ノーコードグループウェアで自治体業務を改善!“紙文化”をやめたい!から始まった庁内DX

セミナーの第2部は、スムーズなDXの進め方について事業者が解説。政府機関・自治体での導入が1100超という実績を誇るネオジャパンが、紙からの脱却を軸に業務改善を進めている大野市の事例を中心に、ノーコードツールの活用ポイントを語ってくれた。

<講師>

岡部 永遠氏
株式会社ネオジャパン マーケティング統括部

プロフィール

営業職を経て、現在はマーケティング職に着任。主にセミナーを通じた製品のプロモーションを担当。

業務効率化で、紙からの脱却は必須!ポイントは段階的なデジタルシフト。

ネオジャパンは1992年に設立した企業です。グループウェアの「desknet’s NEO(デスクネッツネオ)」、ノーコードツール「AppSuite(アップスイート)」をはじめ、ビジネス用のコミュニケーションツールを自社開発・販売しています。導入実績は、令和6年4月時点で510万ユーザーを突破。官公庁や自治体においても多数の導入実績があり、総務省や仙台市、神戸市、秋田県などで利用いただいています。

今回紹介するのは福井県大野市の事例です。同市では紙の文化が長く根付いており、職員の負担にもなっていました。メールで情報共有することもあったのですが、既読確認ができないため、結果的に紙の方が漏れなく伝わると判断され、紙からの脱却ができなかったようです。具体的には、以下4つの課題がありました。

こうした課題を解決し、全庁的なDXを推進するために、消防本部も含めた業務改善を検討。コストやUI、他自治体の評価などを比較した上で導入したのがデスクネッツネオです。

同市では、まず全職員向けのアンケートから着手。従来の紙によるフローをデスクネッツネオに移行し、アンケート機能を使って一斉配信。回答結果はCSVでダウンロードでき、集計作業の手間が大幅に軽減されました。回答期間の設定や情報の重要度表示も可能で、職員の回答状況も一覧で確認できます。

ただし、業務の電子化においては、現場の混乱や職員に抵抗感が出ることも懸念されます。これに対し、同市は紙からの脱却を段階的に進めました。まずはデスクネッツネオの操作感と便利さを知ってもらうために、全員が関わるもので、かつ難易度が高くないものから着手。結果的に総務の作業負担の軽減につながっています。

紙ベースのやりとりに困っていたのは消防本部も同様でした。例えば「道路通行止めのお知らせ」を全職員に伝える際には、紙の書類を作成し、55人分の押印欄を設けていたそうです。これを回覧するのですが、出動中の職員や非番の職員もいるため、途中で滞留。回覧が終わった頃には通行止めが解除されていた…というようなことも起きていたとのこと。この問題もデスクネッツネオで解決しました。回覧を電子化したことで、全員に同じタイミングで情報が行き渡り、確認の履歴も一目瞭然に。以前よりスピーディかつ確実に情報を伝えることができるようになりました。

グループウェアでの成功をステップに、ノーコード開発で改革が一気に進む。

このように、紙からデジタルへの転換で、同市の一部業務は効率化されました。しかし、コロナ禍で職員の業務量が増え、同時に紙による業務がまだ残っていることもあり、これまで以上にデジタルの力を使わなければ行政サービスの維持が難しいと判断。庁内横断型の「業務再構築プロジェクト」を発足しました。プロジェクトでは各課から1人ずつ代表を招集し、定期的に課題を持ち寄って、優先順位を決めながらノーコードツールによる課題解決を進めています。代表的な事例を2つ紹介します。

1つ目は、消防の運行日誌です。従来、消防署での車両整備・点検業務は帳簿に手書きで行っていました。さらに車両20台分の整備・点検・出動の帳簿が別々で、重複記入の作業も発生していました。「いつミスが起きてもおかしくない」という危惧があったそうです。そうした状況の改善に向け、ノーコードツールでデジタル運行日誌を作成。車両マスター上で出動、整備、点検のデータがリンクし、情報が一元化されます。上長のチェック欄を設けるなど試行錯誤を重ね、大幅なペーパーレスと職員の負担軽減を実現しました。

2つ目の事例は伺い書・起案書・稟議書などのデジタル化です。改善前は起案書をワードで開いて印刷、ホチキス止めし、押印後に申請されていました。決裁が終わればパンチを開けて保存。こうした業務をノーコードツールで改善しました。しかも単なる電子化ではなく、決裁状況の可視化や、文書番号の自動採番、入力漏れを防ぐために項目を必須化する、といった工夫も加え申請フローの工数削減・効率化につなげています。

これら一連の取組により、共用の複合機・紙の使用量は2割削減。トナーの購入量も14%削減できました。定性的な効果も大きく、紙を利用していたときの「内容を確認したか」という内線や、押印作業、手作業で集計する時間、他部署による代理申請などが不要になり、ファイリング作業もゼロ化。同市では今後、ほかの業務でもペーパーレス化を進めていくとのことです。

これらの事例は、扱いやすいノーコードツール「アップスイート」だからこそ、現場主導でいち早く業務改善を進めることができたということを示しているといえます。ここで紹介した事例以外にも、自治体業務に幅広く適用できるのが強みです。大野市以外の事例については当社公式ホームページに掲載しているので、ぜひご覧ください。

お問い合わせ

ジチタイワークス セミナー運営事務局
TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works

このページをシェアする
  1. TOP
  2. 【セミナーレポート】ノーコードツールで自治体業務はどう変わる?市民サービス向上を目指した全庁的なDX推進