ジチタイワークス

愛知県豊橋市

地域の未利用資源に価値を加えた“高機能バイオ炭”で環境と農家に優しいまちへ。

環境に優しく土壌改良にも役立つ高機能バイオ炭

日本有数の農業産出額を誇る豊橋市。高齢化や資材高騰といった営農上の課題解決を目指し、全国から農業関連のスタートアップ企業を募集。地元農家・関連企業との実証開発プロジェクトから、新たな事業が誕生した。

※下記はジチタイワークスVol.32(2024年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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農家へのヒアリングで課題を抽出しスタートアップ企業との橋渡しを行う。

野菜や果物、花きなど多品目が栽培され、畜産なども盛んな同市。食品加工や農業資材など、食や農業に関連する企業が多いことが地域の特色の一つだ。そんな中、令和4年度には官民で地域の主要産業である農業の課題解決を目指し、農業イノベーションの創出を目指す実証開発プロジェクト「TOYOHASHI AGRI MEETUP(豊橋アグリミートアップ)」を開始。まず取り組んだのは、地域の農業関係者が本当に困っていることは何か知ることだったという。新しい農業のあり方や課題の解決に興味がある人を地域から集めるため、市内の農家に1件ずつ連絡を取って参加者を募ったそうだ。

講座やワークショップ開講、交流会と段階を追うごとに、化学肥料の高騰や剪定枝の処分方法など、農家が抱える課題が明確化したという。そこで抽出された課題に対し、全国から農業関連のスタートアップ企業を募集。課題解決の提案を募るため、賞金1,000万円をかけた“アグリテックコンテスト”を開催した。令和4年度に同コンテストで入賞し、現在、市内農家と実証実験を進めている企業が「TOWING(トーイング)」だ。

環境負荷を低減させるだけでなく、有機農業でも生産量を落とさない。

同社は高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」の開発企業だ。これは剪定枝やコーヒーかすなど、生物由来の未利用バイオマスを炭化装置で加工し、農地によい影響を与える微生物群を培養した農業用の土壌改良資材。作物の育成促進や耐病性を高めるなど、様々な効果があるという。

さらに、これまで剪定枝は焼却処理するしかなかったが、宙炭の原料として活用することで、農地散布後も土中に炭素を閉じ込めることができ、温室効果ガスの削減が可能になるそうだ。「農家から寄せられた、化学肥料の高騰傾向や環境負荷という課題に対応した提案でした。当市は令和3年度に“ゼロカーボンシティ宣言”をしており、脱炭素の取り組みにつながる点でも評価されています」と澤田さん。

長期間、手探りで行う土づくりや収穫量減への不安は、農家が有機農業への転換に挑戦する上での大きなハードルとなっていた。「現在は市内で実証実験を行っている段階なのですが、実験に協力をお願いした農家からも肯定的な声が多く上がっています」。今年度は市内にプラント兼研究所を開設することも決定するなど、取り組みが加速しているという。

民間の連携を支援し、農業を盛り上げてまちを発展させる。

プロジェクトによって、全国から集まったスタートアップ企業が産業を活性化し、新たな雇用が生み出されるという好循環も生まれはじめている。「もともと、産学官連携などを積極的に進めてきた地域であり、様々な企業とともに新しいことへ取り組もうと考える農家が大勢いることが強みだと考えています。同様の課題をもつ地域は日本全国にあると思うので、先進事例となるよう力を入れていきたいですね」と澤田さん。

今後はスタートした事業を地元農業にいかに根付かせるかが課題となるという。「市内の農家にとって本当に役立つものを生むことがプロジェクトの出発点。いかに優れた製品であっても、生産工程の変更は農家に負荷がかかるため、簡単に導入できるものではないと思っています。まずは、興味をもった人からスモールスタートできるよう、市としても後押ししていきます」。

目標は“農業をするなら豊橋市”といわれる地域になること。プロジェクトを通して自治体が単独で動くのではなく、事業者や地域住民とともに進む重要性も感じている。「農家ファースト、スタートアップ企業ファーストの2つの視点をもつ橋渡し役として、チャレンジを支援していきます。農産地として、持続可能な食のシステムをつくる第一歩になれば」と、展望を語ってくれた。

愛知県豊橋市
産業部 地域イノベーション推進室
澤田 恭平(さわだ きょうへい)さん
 

環境にも農家にも優しい高機能バイオ炭「宙炭」を活用

持続可能な“農”に貢献!

1.有機へのシフトチェンジを円滑に

10年以上の研究で積み上げた微生物の知見を最大限活用。約5年かかる有機肥料に適した土づくりを、約1カ月で可能にする。

※TOWING独自のバイオ炭の前処理技術、微生物培養などにかかる技術を、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発した技術と融合し、実用化

2.地域の未利用バイオマスを活用

もみ殻や茶殻などの未利用バイオマス300種類近くを分析し、データをもとに各バイオマスの資源化を実施。地域循環を促進する。

3.カーボンクレジットを創出

未利用バイオマスを炭化して活用するため、国が認証するJ-クレジット制度を適用可能。地域の脱炭素の取り組みをけん引する。

 

環境と農業、どちらの課題も同時に解決することを目指す同社。ゼロカーボンシティ宣言やオーガニックビレッジ宣言など、資源循環や脱炭素、有機農業推進に関する取り組みを検討・実施している自治体をサポートする。気軽にお問合せを。

お問い合わせ

サービス提供元企業:株式会社TOWING

TEL:052-753-6332
愛知県名古屋市千種区不老町1
国立大学法人東海国立大学機構
名古屋大学インキュベーション施設

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