ハンディータイプの簡易型IC車載機
過疎化や高齢化、運転手不足など、地域の公共交通の課題が表面化しつつある。利用者のニーズに応えるため、河南町ではコミュニティバスのキャッシュレス化を推進。乗客の利便性向上を図り、乗客数の維持につなげようとしている。
※下記はジチタイワークスVol.31(2024年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]株式会社JR西日本テクシア
生活に欠かせないコミュニティバスを交通系ICカード決済でもっと便利に。
金剛・葛城連山のふもとにある同町は、遺跡などの歴史的文化財や豊かな自然に恵まれている。町内には鉄道駅がないため、役場が運営するコミュニティバスが日常の移動手段として重要な役割を果たしているという。運賃は一律で大人100円。従来は、降車時に現金または乗車券を渡す形で精算していた。ほかの交通機関と同様に、交通系ICカードを使いたいという要望が上がったことから、キャッシュレス化を視野に入れるようになったと岡出さんは話す。「頻繁に利用する方からは、毎回小銭を用意するのが面倒だという声もあり、何とか要望に応えたいという機運が高まっていました」。
令和3年、乗客の利便性を向上させるため、地域のバス事業者を交えてICカード決済システムの導入を検討。その過程で、交通系ICカード「ICOCA(イコカ)」などの対応機器を展開する「JR西日本テクシア」から“簡易型IC車載機”の提案を受けたという。小規模事業を想定して機能を絞ることで、設置やメンテナンスのコストを下げたモデルだ。「片手で持ち運べるサイズで、通常のIC車載機よりも低コストで導入可能な点に興味をもちました。新車購入を検討していたため、簡単に移行できることもメリットでしたね」。買い物や通学、民間バスへの乗り継ぎなどでの利用が多く、交通系ICカードであれば、ほかの交通機関で使えることも選択の後押しとなったという。
河南町コミュニティバス
▲ラッピングデザインは、町内にある大阪芸術大学の学生によるもの。「カナちゃんバス」の愛称で町民に親しまれている。
工事不要でキャッシュレス化し運転手の業務を軽減する利点も。
新型バス2台と従来のマイクロバス1台の計3台に導入を決め、町民には、ホームページや車内掲示、LINE配信で周知を実施。運転手研修や試験運転などを経て、令和5年5月から本格運用をスタートした。
簡易型IC車載機は、交通系ICカードを1回タッチするだけで運賃が自動精算される仕組みだ。乗車用リーダー、運賃表示器などの車体据え付け工事が不要なため、低コストの導入がかなう。多区間精算や定期券運用などの機能面では制限があるが、均一運賃であるコミュニティバスには十分と判断。また、必要に応じて、運転手が端末を直接操作することで、乗降駅の記録や多区間運賃へ対応することも可能だそう。
同町がキャッシュレス化を進める背景には、運転手の負担を軽減するねらいもある。「1日50人から100人の乗客を乗せて運行していますが、バスの運転手には、手動での両替業務があります。計算自体は複雑ではありませんが、運転手は運転に集中できることがベストだと考えています」と岡出さん。キャッシュレス化を進めることで、両替や現金集計などの負担が減り、正確で安全な運行につながるという利点もあるのだという。
高齢化による運転手不足など公共交通の課題に向き合う。
「ICカード決済の利用は、徐々に増えています。高齢の方が多いので、まだ現金払いの方が上まわっていますが、利用者の反応は好意的です」。現金払いが減ることで、運転手の負担軽減や、乗客の利便性向上に一定の効果があったと評価しているようだ。
さらに、簡易型IC車載機では、“何人がICカード決済したか”などのデータを取得することもできる。年1回行われる地域交通会議や評価会議で、バスの利用状況を報告する際にデータを活用しているそうだ。
今後も同町では、乗客数を維持するためにニーズ把握に努め、デジタル技術を活用して“町民に愛される公共交通”を目指していくという。「高齢化による免許返納などで運転できない方を支えるなど、コミュニティバスは生活を維持する上で必要不可欠な存在です。民間バスの廃線や運転手不足など、業界全体の問題がある中で、交通事業者だけでなく地域全体で補完し、協力し合って継続していかなければならないと考えています」。
大阪府河南町 総務部 総務課
主査 岡出 侑樹さん
小規模事業向けの簡易型でも十分な機能と利便性を保持
1. 全国相互利用交通系ICカードに対応可能
「JR西日本」が発行するICOCAをはじめ、全国で相互利用ができる交通系ICカード10種類に対応可能だ。タッチするだけで簡単に決済できる。
2. 通信が弱い山間部でも問題なく利用できる
IC決済処理は、上位サーバーへの通信環境を考慮する必要がなく、端末内で完結できる。処理速度も約0.5秒とスムーズだ。
その他のサービス紹介
駅や公共施設などの案内をサポートするAIシステム
AIアシスタントによる案内システム「AyumI(あゆみ)」は、日英中韓をはじめとする多言語に対応。駅などの公共施設に設置すれば、学習システムにより柔軟な案内が可能だ。ユーザー自身のスマホを介して操作や確認を行う操作型もある。
導入事例
●JR西日本大阪駅 うめきた地下口
●沖縄都市モノレール ゆいレール(実証実験)
お問い合わせ
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営業企画部
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E-mail:info_product@kwf.techsia.co.jp
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