ジチタイワークス

岐阜県飛騨市

【首長と職員の絆】立場を越えて育むファンクラブ。ダメ出しされても、それが学びになる!

ジチタイワークス増刊号「感謝劇場」とは?
行政マガジン編集室が、事例紹介を中心とした通常号とは趣の異なる「増刊号」をつくりました。
「感謝・ありがとう」をコンセプトにした、その名も「感謝劇場」。略して、カンゲキ号です!
公務員の誰もが主人公になり得る、様々な視点での「ありがとうのドラマ」を取材し、紹介しています。

※下記はジチタイワークス 感謝劇場号(2024年3月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

アニメ映画「君の名は。」のモデル地とされる飛騨市。全国から約1万3,000人が参加する屈指の同市ファンクラブ(以下、FC)は、関係人口づくりを目的に都竹市長が発案し、平成29年1月に設立された。総合政策課の上田昌子さんが翌年度から運営を担当し、その後、上田博美さんにバトンタッチ。愛称で呼び合う3人の立場を越えた「絆」を取材した。

中央:都竹 淳也(つづく じゅんや)さん 飛騨市長
左:上田 昌子(うえだ しょうこ)さん 総合政策課 広報プロモーション係
右:上田 博美(うえだ ひろみ)さん 総合政策課 ふるさと応援係

2人とも明るくて人との交流が上手だから、FC事業にぴったり。

―― 市長から「2人の上田さん」をご紹介ください。まずは昌子さんから。

都竹 はい!昌子ちゃんは、FCを大きくした立役者ですね。難しいことも前向きに変換し、新しい道を見出せる人。明るくて誰からも好かれるので、この事業にぴったりでした。

上田昌 私が異動で担当になったのは、設立から約3カ月後。「初年度の目標は1,000人」と市長が議会で掲げたのを「大変そう!」と外野から見ていたら、それが自分の仕事と目標に(笑)。当初は知人に入会を促したり、特典を提供する店舗を増やすためのお願いに奔走したり……。それでもなかなかうまくいかず「増やすには、にぎわいを演出するといいよ」という市長の助言のもと、市長室をジャックして「400人突破記念動画」を配信してみたんです。すると、それがバズってメディアから取材が入り、どんどん会員が増加。そこから「ファンクラブの集い」や市長がガイドする「バスツアー企画」などを立ち上げていきました。

―― 市長自らツアーのガイドまで!?

上田昌 市長はまちの歴史や文化に詳しく、説明もすごく分かりやすいんです。会員さんが満足してくれるので、公務に隙あらば頼らせていただいてました(笑)。まち歩きをしていると、子どもたちからも「市長〜!」と呼びかけられる人気ぶりですよ。

―― 昌子さんからバトンを受け取った、博美さんの活躍ぶりはどうですか。

都竹 やぶちゃん(博美さんの愛称)が担当になったのは、会員が8,000人台の頃。おっとり穏やかだけど人との交流も上手で、周囲に嫌な思いをさせないから親しまれるタイプ。それでいて、実は根性もあるんです。

ダメ出しと助言の繰り返しから、多くの学びを得てきました。

上田博 担当になったときには、すでに会員も多数で。前任の昌子ちゃんが築いた皆さんとの関係性を、自分がうまく受け継げるか本当にプレッシャーでした。企画立案も「前年に倣えばいいだろう」と思って提出すると、市長に突っ返されるんです(笑)。

都竹 皆さんを楽しませるには、同じ企画ではダメ。だから、2人には結構ダメ出しもしてきました。でもそのたびに、ちゃんとブラッシュアップされる。それが分かっているから、簡単に「答え」は渡しません(笑)。

上田博 ダメ出しだけでなく、一緒に助言もいただけるんです。そのおかげで、どうしたら会員さんが面白がってくれるか考えられるようになりました。

全職員の配属理由を説明できる市長は、本当にすごいと思います!

―― FC事業に合う職員さんが、歴代、担当に就いてきたのですね。

都竹 実は、当市では一般行政職の人事を、僕と副市長の2人で考え抜いて行っています。異動の意向調査書は熟読しますし、普段も庁内をうろうろして話しかけたり、観察したり。一人ひとりの強みの把握に努めているので、「なぜ、その人をそこに配属したか」を全職員について説明できます!

上田昌 実際に市長は、約200人いる職員の顔や名前を覚えていて、業務も気にかけてくださり、「あの企画、どうなった?」という感じで話しかけてくれます。最初は、「こういう市長もいるのか」と驚きましたし、本当にすごいと尊敬しています。

―― 最後に、互いへ感謝の思いを。

都竹 初めてファンの集いを開いたとき、見込みの甘さもあり、参加者から厳しい声をいただきました。「失敗したな」とへこみましたが、昌子ちゃんが「次、改善すれば大丈夫です!」と前向きだったことに救われました。無理難題に対しても、常に期待を超えようとする姿勢に刺激をもらっています。

会員さんからの「ありがとう」があるから、難しくても頑張れる。

上田昌 私は市長のおかげで「公務員って、こんなにいろんな仕事ができるんだ。こんなに面白いんだ!」という気づきを得ました。無理難題も、その先に会員さんからの「ありがとう」が待っているのがうれしくて。そんな機会をくれた市長に感謝しています。

都竹 FC運営は、一般的に公務員がやる業務ではないので、難しいはず。だけど、やぶちゃんは、なんとかよくしようと挑戦してくれる。僕が全てをひっくり返すようなことを言っても、めげずに改善してくれる。この2年の成長を感じますし、イベントなども安心して任せられるようになりました。

上田博 確かに、この事業は前例踏襲ではダメだと分かり、挑戦を面白がることを学びました。「また参加するね」と声をかけてくれる会員さんとの出会いに、やりがいを感じる日々。また、近くで応援し、アドバイスをくれる昌子ちゃんにも「感謝感謝」です。

上田昌 やぶちゃんファンも確実に増えているよね。会員さんと仲良くなって、よりよいFCにしてくれると期待しています。これからも市長に助言をいただきながら、ダブル上田で飛騨市を盛り上げていきましょう!

 

◆会員1万3,000人を突破!「飛騨市ファンクラブ」の魅力とは

※令和6年1月時点の会員数

飛騨市に関心をもつ人たちが、つながり、集い、語り合うコミュニティ。市内で会員証を提示すると、宿や店舗で特典サービスが受けられるほか、「ファンの集い」や市長が名所を案内する「バスツアー」、同じ趣味をもつ会員同士の「部活動」、市長と職員が飛騨の名産品を持って会員のいる地域へ出向く「おでかけファンクラブ」など、多彩な活動を展開中。また、飛騨市民のしたいことや困りごとを、現地に行って「オタスケ」すると、お返しがもらえるプログラム「ヒダスケ!」も好評だ。

飛騨市ファンクラブWEBサイトはこちら

 

◆なぜ「関係人口づくり」を進めているの?


移住してくれなくても、たくさん人が来て活動し、「いいまちだね」と言ってもらえると、住んでいる人たちは元気になるんです。だから関係人口は大事!

 


私たちの研究によると「関係人口は移住しない」「『うれしい』とか『役に立つ』という印象深い体験をすると、関係地に対する愛着が高まる」という分析結果があります。それをヒントに「ヒダスケ!」を始めました。

 

 

ヒダスケ!で市内外の方々との“お互いさま”の輪が広がり、関係性を深めていくことが、「景観の維持」や「高齢者が多くても活気のある地域づくり」につながっていると感じます。

 

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