CO2削減につながる環境配慮型ごみ袋
ごみの減量を目的に、指定ごみ袋制度を導入した芦屋市。ごみ袋の仕様は、隣接する西宮市とほぼ同規格にすることで、令和5年の本施行までスムーズに準備が進められたという。そのねらいや、制度に期待する成果について聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.30(2024年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]日本サニパック株式会社
ごみの分別推進と減量を目指し市民が日常的に使うごみ袋に着目。
令和3年6月に「ゼロカーボンシティ」を表明し、CO2排出量削減の施策を模索していた同市。一方でごみの分別が徹底されておらず、他自治体と比較して燃やすごみの量が多いことに頭を悩ませていたという。「従来はごみ袋の指定がなく、黒や青の袋を開けると缶や瓶、小型家電が出てくることもありました」と永田さんは振り返る。中には紙袋や段ボール箱でごみを出す人もおり、地域の景観が損なわれていることも課題だったという。
「市民の分別意識を高めるためには、毎日使うごみ袋を変えることが有効だと考え、指定ごみ袋制度の検討を始めました。他自治体の情報収集や、市民へのアンケートを行いながら、ごみ処理料金を上乗せする有料化ではなく、“単純指定ごみ袋制度”を採用することにしました」と藪田さん。同制度は、市の規格を満たした袋を製造する事業者を承認し、市内の店舗で自由に販売してもらうもの。住民にとっては、購入するごみ袋の選択肢が広がる上、市場原理が働いて価格が抑えられるというメリットがある。さらに、製造事業者を1社に限定しないことで、安定的に供給できるそうだ。そうして、令和4年6月の市議会で承認を得て、本格的に制度施行に向けて踏み出した。
環境に配慮した素材を採用しごみ袋もCO2排出量の削減へ。
施行に際しては、隣の西宮市が1年前に同じ制度を導入していたため、指定するごみ袋の規格を踏襲したそうだ。「すでにその規格で製造している事業者がいたので、当市でもスムーズに実現できると判断しました。さらに、規格の中には“石油由来のごみ袋と比較して、CO2排出量を10%以上削減できる素材であること”とあったので、環境対策として当市も倣いました」。
そうした規格をクリアし、製造を承認された事業者の1社が、環境配慮型ごみ袋「nocoo(以下、ノクー)」を展開する「日本サニパック」だ。ノクーは、同社が独自開発した天然ライムストーン(炭酸カルシウム)を配合したごみ袋。ポリエチレン100%の袋と比較して、製造時・燃焼時のCO2排出量を約20%削減でき、バイオマスプラスチックよりコストが低いという。西宮市をはじめ、他自治体でも製造を担っている経験から、ごみ袋に関する知見も豊富だそうだ。
また、袋には同市の美しい風景がデザインされている。これについては、「渋谷区と同社が、花柄のデザインを施したごみ袋を製作しているのを知りました。私たちも市民に愛され、まちの景観向上にもつながるごみ袋をつくりたいと考えたのです」と永田さん。デザインは公募制で、専門家による審査や市内の児童生徒らの投票を経て決定したそうだ。
インターネット広告も有効活用し幅広い世代に届くよう周知した。
令和5年10月には、半年間の移行期間を経て指定ごみ袋制度が本格的にスタート。「分別に関する問い合わせが増えました。“分別すればこんなにもごみが減るんですね”という声も聞かれ、ごみの収集業者も減量を実感しているようです。まちの景観もよくなったと市民に評判です」と藪田さんは顔をほころばせる。
順調な滑り出しには、制度開始前からの地道な啓発活動が功を奏したようだ。周知のため、広報紙やごみカレンダー、チラシの全戸配布をはじめ、市民説明会は要望があれば休日でも出向いた。若年層を想定して、インターネット広告も活用し、幅広く情報が届くように工夫。「当市のコストは不要で、同社が主要駅に屋外広告を出稿したり、特設サイトを用意したりしてくれたのも、ありがたかったですね」。
2人が口を揃えるのは、これはスタートであるということ。「まずは燃えるごみの量を約10%削減するという目標に向けて、引き続き周知を行い、市民と一緒に環境対策を実施していきます」と意気込みを語ってくれた。
制度施行までの流れ
▶令和2年10月
・指定ごみ袋制度の検討を開始
▶令和4年6月
・市議会へ提出・承認
▶令和5年4月
・制度の移行を開始
▶令和5年10月
・移行期間を経て本格実施
芦屋市
市民生活部 環境・経済室
環境施設課
課長 藪田 循一(やぶた じゅんいち)さん
係長 永田 佳嗣(ながた よしつぐ)さん
環境に優しいごみ袋の導入はゼロカーボンシティへの第一歩
同社の独自技術で製造する環境配慮型ごみ袋nocoo(ノクー)。環境施策の足がかりとして、自治体にぴったりだという。
1.プラスチック使用量やCO2排出量を減らせる
ポリエチレン100%のごみ袋と比較し、CO2排出量は約20%、プラスチック使用量も約20%削減できる。削減効果としても定量的に分かりやすく、各自治体の削減目標に貢献する。
2.住民が手に取りやすい価格で提供できる
環境に優しい素材として知られるバイオマスプラスチックよりもコストが抑えられ、従来のごみ袋と同等の価格設定が可能。環境に配慮しながらも、住民にコスト負担を与えずに提供でき、喜ばれる。
過去記事はこちら
芦屋市が参考にした西宮市、渋谷区の事例をはじめ、他自治体の事例を知ることができる。閲覧はこちらから。
CHECK!
環境施策の第一歩としてまずは気軽に相談を
これまでの導入実績から、自治体のごみ袋事情にも詳しい同社。“どのようなサイズが必要か?”などの質問や、環境施策についても気軽に相談できる。