ジチタイワークス

神奈川県開成町

広報に動画を活用!町民に分かりやすく伝えるための議会改革。

迫力あるサイトや動画で魅せる“これからの議会広報”

分かりやすい情報発信を目指す開成町議会は、目を引くWEBサイトを開設し、一般質問を20秒の動画で配信している。議会のイメージを覆す斬新な取り組みは、広報改革だけにとどまらず、議員や議会のあり方までを変えたという。

※下記はジチタイワークスVol.30(2024年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

“読む人がいるのか”という率直な疑問から改革に着手。

「議会改革といわれますが、私たちが取り組んだのは広報改革です」と話すのは、議会事務局の佐藤さんだ。令和3年に異動してきての初仕事は、議会だよりの校正だった。白黒で文字だらけの議会だよりを読む人がいるのかと疑問に感じ、早速、次の号からリニューアルに着手。議会の旬の情報を載せる、表紙や裏表紙までスペースを有効活用する、子どもモデルを起用する、カラーにするなど、いくつもの改善策を反映させた。

次に提案したのが、WEBサイトの制作だ。「議会だよりは制作から発行までにタイムラグがあるので、これからの議会広報はWEBと両輪でやるべきだと考えました」。同年11月、広報広聴常任委員会で議会サイトの必要性を説いて承認され、12月の定例議会で可決。翌3月にはプロポーザルで選んだ委託事業者と契約し、4月からシステムエンジニア(以下、SE)と制作に入ったという。

「目指したのは、日本一のWEBサイト。そのためにはSEのやる気が必要ですから、制作については一任していて、上がってきたものにNOと言ったことはありません。トップのムービーに関しても、“SEになってから一番やりたかったことをやってください”とだけ注文しました」。試写会で初めて見た議員からは驚きの声もあったが、制作者の熱意が伝わり、満場一致で採用されたそうだ。

同町議会のWEBサイトを開くと、議員たちが登場する、迫力あるムービーが目に飛び込んでくる。“やっちゃえ開成”“いいね!開成”など、キャッチーなフレーズは議員が考案したもの。

一般質問の内容を20秒にまとめ町民に伝わる情報発信を行う。

同議会では、令和3年6月から議会映像をライブおよび録画で配信していたが、視聴数は伸び悩んでいたという。「議会への興味関心を引くため、一般質問の予告を動画で行ってはどうかと議員に提案しました。短い動画なら通勤や家事の合間に見ることができ、500文字もある通告書より効果的に告知できると考えたのです」。

取り組みのポイントは、1人の一般質問に対して、動画が3本公開されること。一般質問の概要を20秒でまとめた予告、実際の議会における質問映像、質問を終えた議員に突撃する直後インタビューの3本だ。予告動画の撮影については議員も快諾したが、直後インタビューには難色を示す声も多かったそう。話す内容を事前に準備できない上、質問がうまくいかないこともあるからだ。しかし、佐藤さんは「結果を伝えるまでが一般質問です。うまくいかなくても真剣に勝負したことを伝えてほしい」と、粘り強く必要性を説いた。始めてみると、質問直後の議員の汗だくの姿や率直な感想は町民からも好評で、議会を身近に感じてもらえるようになったという。

「“どうしたら町民に伝わるか”に注力する議員が増えました。再生回数が表示されることも刺激になり、議員間で切磋琢磨する姿が見られるなどの変化が起きています。動画の撮影・制作は事務局の担当ですが、自ら動画を撮る議員があらわれたり、一般質問で取り上げる場所の現地ロケをしたいと相談されたり。議員の意識が明らかに変わりましたね」。


▲開成町の一般質問動画はこちら

チームの力を原動力にして時代に合った議会を模索する。

広報改革の副産物はそれだけではない。「一般質問の質まで変わってきたように思います。3本の動画を配信しているため、内容に矛盾があれば、すぐに伝わってしまいます。どの議員も内容をより精査しはじめました。結果として、議会全体の機能強化につながっているように感じます」。

また、令和5年の統一地方選では、40代や女性の新人議員も増えた。広報改革の結果と断言することはできないが、新人議員は4人全員が動画の存在を知っており、撮影にも積極的だったという。一連の取り組みが、町政への関心を呼び起こした側面も否定できないだろう。

改革に着手して2年足らずの短期間で、同議会は様々な取り組みを行ってきた。それを可能にしたのは、議員12人と事務局3人のチーム力だという。「事務局からたくさんの提案をしてきましたが、それを受け入れて議会で討議し、やってみようという議員の意欲があってこそ。議員と事務局が一丸となって取り組んできたことが、結果につながったと思います。とはいえ、ただやみくもに改革すればいいとは思っていません。大切なのは、自分たちが行っていることが時代に合っているかを見極めること。そして、合わなくなったものは止める勇気をもつこと。開成町や町民のために、これからもチーム議会で取り組んでいきたいと思います」。

党派を超えてチーム力を発揮する議員たち。今年度の「マニフェスト大賞 議会改革賞」で優秀賞を受賞。

 

開成町
議会事務局 書記
佐藤 久子(さとう ひさこ)さん

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