ジチタイワークス

埼玉県川口市

“デジ田交付金”を活用し、地域企業のDX推進を学びによって支援する。

各地の自治体が地元企業のDX推進を支援するため、セミナーや勉強会などを実施している。ただ、複数の業種・業態を対象としたセミナーは“総論”的な内容になりがちで、個々の事業者には響きにくい上、大手企業の成功事例は中小~零細規模の企業にとって参考にならないケースが少なくないようだ。

そうした中で川口市は、「ベネッセ」が全国34自治体と令和3年度に実施した「DX人材育成の実証研究」に参加。良好な手応えを感じたことから、デジタル田園都市国家構想交付金を活用し、同社が提供する「Udemy Business(ユーデミービジネス)」による「デジタル人材育成オンライン講座」の事業実施に踏み切った。交付金申請から講座実施までの流れ、事業の成果などについて、経営支援課の後藤さんと佐藤さんに聞いた。

※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです
[提供]株式会社ベネッセコーポレーション

【特集】デジ田交付金 × 中小企業支援
 #1【埼玉県川口市】デジ田交付金を活用した地域企業のDX推進術!
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Interview

川口市 経済部 経営支援課
左:次長 兼 経営支援課長 佐藤 健一(さとう けんいち)さん
右:課長補佐 兼 経営支援係長 後藤 清高(ごとう きよたか)さん

事業者のデジタル化推進には、個別最適な講座やセミナーが必要。

新型コロナ感染症が急拡大しはじめた時期から、業務のデジタル化を通じた出勤人数抑制や、対面業務縮小のニーズが急速に高まった。川口市でも令和2年度、川口商工会議所がデジタル化推進のための特別委員会を発足させ、市も参加する形で議論を開始した。

市内の事業者を対象に、デジタル化が進まない原因をアンケート調査した結果、コスト面の問題と、デジタル化を推進できる人材不足との回答が特に多かったという。

 

そこで、令和3年度にDX推進補助金の制度を創設。国からのIT導入補助金に市の補助金を上乗せする形で、DX推進のための資金支援を行う体制を整えた。

「並行して人材育成についても、同年度にDXセミナーのオンライン開催に踏み切りましたが、受講した企業の業種や規模、社内全体の知識レベルがバラバラな状態の中、全ての方が満足する内容とするのは難しいと感じました」と、後藤さんは当時を振り返る。

そんな折、ベネッセが同年度に「Udemy Business(以下、Udemy)」の実証研究を自治体とともに実施するという情報を入手。「細分化した内容の講座やセミナーを市が開催するのは困難です。それならば 、この機会にぜひ応募してみようということで、実証研究への参加を決めました」。

IT利活用に対する理解度が、学習前・後で大幅に変化。 

同社が提供するUdemyは、アメリカのUdemy社が運営する21万以上の学習コンテンツの中から、厳選された約12,000以上の講座を定額制で学べる法人向けオンライン学習サービス。

IT関連でも、基礎的な知識からDX推進力、データ活用、業務効率化、プログラミングなど幅広い内容の講座が準備されており、PCはもちろんタブレットやスマホなど、各種端末で受講できる。

 

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「事業者にとってリアルのセミナーや講座だと、せっかく時間を確保しても自社業務とは合わない、しかし途中退席もしにくいといったことが発生しがちです。その点、Udemyならば、合わないと感じればすぐに別の講座に切り替えることができる点が大きなメリットだと感じました」と、佐藤さん。

実証研究は令和3年6月から3カ月間、50ライセンス分を使用できる形態だったが、「市や商工会議所の広報紙、ホームページなどを通じて募集を行ったところ、開始前までにはライセンスが全て埋まりました」。実証研究期間中、28社・50人が計209種類の講座を受講し、総視聴時間は1,184時間(一人あたり23.7 時間)に達したという。

 効果測定のために同社は、受講者に学習前・後のアンケート調査を実施。受講前は「現在の業務に活用可能なIT技術が分からない」「ITを活用した業務改善・生産性向上の仕方が分からない」などの回答が多数だったものが、 受講後は「Udemyを受講したことでIT技術への理解が進んだ」が72%、「Udemyで学んだことを業 務に活かすことができた」71%と、DXの“入口”ともいえる複数項目の回答が、かなりの改善を見せている。 

「講座の種類が豊富な分、受講者から使い方が分からないといった相談はいつでも対応できるようにしていましたが、問い合わせはほぼゼロでした。キーワードを入れれば関心のある講座を簡単に探せて、各講座の概要や評価もひと目で分かるので、各受講者とも直感的に使えたのだろうと思います」。

事業継続予算を確保するため、デジ田交付金の申請を決断。

DXの推進はもはや、業種・業態を問わず“当然の取り組み課題”になりつつある。しかし実際は、WordやExcelといった基本的なビジネスソフトすら十分に活用できていない小規模企業も、決して少数ではないようだ。 その点、Udemyであれば、理解度や知識レベルの応じた講座が選べるので、幅広い受講者の学習ニーズに応えられる。
 


※講座の一部です
 

3カ月間の実証研究に参加した同市の場合も、前述のような学習効果を得られたことから、令和4年 度も引き続き、活用を検討していたという。ただ、実証研究は無償参加だったた め4年度分の予算が確保できず、オンライン学習を継続させることができなかった。

「実証研究に参加した事業者への事後アンケートでは、“今後もこういった事業を続けてもらえるとありがたい”といった声が多数寄せられました。そこで、令和5年度の事業実施に向けた予算要求と併せて、デジ田交付金の申請を行うことにしたのです」 。

同市の場合、庁内に交付金申請を取りまとめる課があり、国の採択事例確認とデジタル庁への問い合わせの結果、Udemyによる地元企業のDX推進支援も該当すると判断。申請を決断したという。 

そこで同市は令和5年度の事業実施に向け、DX推進補助金とUdemyの2件について、デジ田交付金を同時申請することを決定。

スムーズな審査につながるよう申請書作成にあたっては、「中小企業基盤整備機構」による全国の中小企業1,000社を対象としたアンケート「中小企業のDX推進に関する調査(令和4年5月)」内にある、DX推進にあたっての課題(ITやDX推進に関わる人材不足)などを引用し、説得力をもたせるように工夫した。

また、同市内における企業の業務効率化や人材不足の解消のほか、女性起業を積極的に支援していることもあり、受講者の枠を個人事業主や起業予定者、求職者などにまで広げる計画も併記したという。

そうしたかいもあり、申請後の修正指示なども入らずに交付決定までこぎ着けた。過去の経験などを参考にして様々な配慮を施したことが、採択に至った主因といえそうだ。  

目標は、各企業の実情・ニーズに応じたリスキリング支援。 

デジ田交付金が得られたことで同市は、令和5年7月からUdemy利用による「デジタル人材育成オンライン講座」をスタート。

81人の受講者を法人部門、個人事業主部門、起業者部門、求職者部門の4区分で募集した。 対象者を市内事業者に限らず、起業者・求職者(どちらも1年以内に起業・就業することが条件)を含めた背景には、より多くのデジタル人材を増やしていきたいという同市の意図があった。

受講者からも、「Pythonの応用法やExcelのマクロ機能の習得により、業務の自動化が図れた」「生成AIを使って文面を提案させることで、SNS投稿の効率化につながった」など、デジタルに関する講座受講による具体的な効果を述べる声が聞かれているという。

また、「学習TIPSやオススメ講座などについて、参加者間で情報共有する機会が欲しい」「本人の知識レベルに応じてオススメの講座を紹介してもらったり、学習計画を相談したりできるアドバイザーが欲しい」など、積極姿勢が感じられる要望も出されている。

なお、同市は令和5年度の実績と成果を踏まえ、今後は個人の学習意欲だけに頼るのではなく、企業全体を見た戦略的なリスキリング支援のモデルケースをつくっていく考えだ。

「先日、“中小企業経営者の約55%がリスキリングの必要性を感じていない”という調査結果を目にしました。当市内においても、同様だろうと思います。社員が自主的に学んだことで業務の一部効率化に成功した、などの小さな成功体験を積み重ねることで、社内全体に積極的な学びの姿勢が広がり、その結果、DXが進むという流れが理想です。当市が実施しているオンライン講座の事業が、そのきっかけとなれば良いと思っています」。

今後は、人材育成コストが課題となっている企業に対して、オンライン講座の無料活用を推奨し、人材不足が課題の企業に対しては、省力化につながる講座の受講を提案するなど、各企業に適した提案ができる仕組みづくりを進める構えだという。

 

- Udemy Businessを活用したベネッセによる支援 -

⑴ 12,000以上の学習コンテンツを定額で学べる
多様な学習ニーズに対応した幅広い分野の学習コンテンツを用意し、実務に直結するスキルを取得できる学習環境を提供。

⑵ DX人材育成に向けた伴走・サポート体制を構築
戦略的学習パートナーとして、Udemyの活用方法や学習カリキュラムの相談、学習結果の効果検証までを一気通貫で支援する。

⑶ 全国60以上の自治体・団体が利用中
鳥取県、広島県、神戸市、糸魚川市ほか、60以上の自治体・団体で導入中(2023年9月時点)。豊富な実績や知見があるため、先進事例を知れる。

 


お問い合わせ

サービス提供元企業:株式会社ベネッセコーポレーション 

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