ジチタイワークス

障害児福祉サービス事業所向けの解説本「ホウデイノトリセツ」を出版。~子どもたちがよりよい支援を受けられるように~

読者投稿ページは、自治体職員が日々の業務や活動している内容を発表・共有できる場です。読者自ら執筆した原稿の中から、編集室が選出した記事を、ジチタイワークスWEBで公開させていただきます。

ぜひ、皆さんの自治体職員としての経験や取り組みを、編集室にお届けください。

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● 投稿者(自治体職員)プロフィール

テーマジャンル : 障害児福祉
ペンネーム : ホウデイノトリセツ出版チーム
所属部門 : 神戸市 福祉局監査指導部

 

なぜ、この本が必要だったのか。「放課後等デイサービス」の現状と課題について。

「放課後等デイサービス」は、児童福祉法にもとづき、障害児を対象に、授業の終了後または学校の休業日に、生活能力の向上のための訓練や社会との交流促進等の支援を行う福祉サービスのことです。この説明を読んでも、よく分からないと感じる方は多いかもしれません。しかし、このサービスを「支援が必要な児童・生徒の学童保育のようなものです」とお伝えしたら、「ああ、そうか!」となるのではないでしょうか。

これが、私たちが「ホウデイノトリセツ」をつくった理由です(ホウデイとは、放課後デイサービスの略)。最初に記した説明は正しいけれども、多くの人にはあまりピンとこない……行政の説明ではよくいわれることだと思います。

このサービスは、平成24年度の制度創設以降、事業所がかなりのスピードで増加しており、本人にとっても家族にとっても必要不可欠なサービスとして定着しています。福祉サービスは量の確保と質の向上の両方が求められますが、数が増えるとともに、質の確保が全国的にも課題となっているのです。

 

これまでの神戸市の取り組みについて。2つのアプローチで、現場の課題解決へと導く。

神戸市では、この課題に対して令和3年度に2つの事業をスタートさせました。

ひとつは作業療法士や公認心理師の専門家が、事業所を巡回して子どもへの関わり方について助言などを行う取り組み。もうひとつは、外部から登用した特別指導監査専門官が、市の行う実地指導に同行し、これまでと違う視点で効果的な指導や調査の手法について市に助言するという取り組みです。

支援そのものの質を上げる、ルールなどを周知することで事業全体の質を上げるという2つのアプローチです。特別指導監査専門官は、多くの事業所で、管理者と児童発達支援管理責任者(児発管と呼んでいます)という2つの重要なポストを1人で兼務していることに着目しました。

管理者は運営全体の責任者であり、児発管は支援方針を決定し個別支援計画を作成するといった役割を担っています。兼務は制度上禁止されていませんが、どちらも重要な役割なので大変な負担がかかります。その結果、法令等を十分に読み込む時間がなく、例えば、支援の基本となる個別支援計画が“必要なプロセスを経て作成されていない”といったことが起こるのです。

個別支援計画作成の例だと、運営基準の条文は1 ,400文字もあります(下図参照・一部抜粋)。専門官から、「これを分かりやすく説明した資料をつくることで、負担軽減が図れるのではないか」という提案を受け、専門官を中心に職員が、簡単に分かりやすく解説した資料を作成することになりました。

 

支援に携わる人たちに届けたい。疑問が生じたとき、サッと手に取れる参考書のように活用してもらえたら……。

令和4年度、専門官が中心となって執筆し、職員がイラストを入れたこの解説資料を、ホームページ上に連載(下図参照)。グラレコの手法によりイラストを描きながら説明するような形になっており、事業所の方にも分かりやすいと好評だったことから、今年度書籍として出版することになりました。

ICT化がいわれている時代に、あえて紙の媒体にしたのは、現場で疑問に思ったときにすぐにチェックしたり、法律を読むときの辞書や参考書として活用したりしていただきたいと考えたからです。日々の業務の中で疑問に思ったことがそのままになってしまっていると、利用者が適切なサービスが受けられない、事業者は結果として報酬返還を求められるようなこともあり、望ましくありません。

市が行う指導は間違いを後から指摘するというスタイルですので、この本でそのようなことを防ぎたいと考えています。そして法令の理解や事務に追われるのではなく、より多くの時間が支援の充実にあてられ、多くの子どもたちがより良い支援を受けられることを願っています。

 

 

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