ジチタイワークス

福島県矢吹町,東京都狛江市

低コストで運用できる、小規模自治体向けのデータ連携基盤モデル。

子ども中心の共助型社会という共通の理想に向けて協働

スマートシティ構想の第一歩ともいえる、データ連携基盤。なるべく予算をかけず、これに挑んでいるのが狛江市と矢吹町だ。小規模自治体にオススメの“基盤の共同利用”について、両自治体の担当者に話を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.28(2023年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]三菱商事株式会社


左:狛江市 企画財政部 情報政策課
係長 久保田 康弘(くぼた やすひろ)さん

中央:狛江市 企画財政部 情報政策課
主事 小野敏樹(おの としき)さん

右:矢吹町 企画・デジタル推進課 
デジタル推進係 
副主査 吉田 賢樹(よしだ けんじ)さん

開発コストをなるべく抑えながらデータ連携基盤を構築するために。

単独での構築はコスト的に難しいため、「当市の非常勤特別職のDX推進監と、共同利用を検討していました」と、狛江市の久保田さん。そこに名乗りを上げたのが、令和4年のデジタル田園都市国家構想交付金“デジタル実装タイプ”のTYPE1で採択された実績をもつ矢吹町だ。同町の吉田さんは、「大都市モデルが多い中、小規模自治体向けというのが魅力的でした」と話す。

基盤に接続して提供するサービスとして、「当市は“子どもと若者、子育て世代に対する切れ目のない総合的な支援”を掲げており、対象者への情報配信を充実させたいと考えました」と久保田さん。吉田さんも「進学などで町外に出た子どもに戻ってきてもらえるよう、また、移住・定住先として選ばれるよう、子どもと子育て世代向けのサービスを拡充させたい」と賛同した。

令和5年にデジ田交付金のTYPE2に採択され、基盤構築のほか、それに接続するサービスを狛江市が2つ、矢吹町が1つ開発することになったという。

サービスを横展開できるだけでなく職員同士が交流し、知見を共有できる。

同規模の自治体が共同利用するメリットについて、「基盤の構築・運用コストが抑えられることです。参加自治体が増えれば、運用コストはさらに割安に。また、共通ルールにもとづいて開発するため、サービスの横展開も容易になります」と話すのは、狛江市の小野さんだ。

「今回、狛江市と矢吹町は“子どもを中心とした共助型社会”を目指してサービスの開発に取り組んでいます。同じ地域課題を抱える自治体がデータ連携基盤でつながることにより、同規模の自治体にフィットしたサービスを横展開できる。住民により良いサービスを届けられることに魅力を感じています」と吉田さん。

また、久保田さんは「複数の自治体が連携して取り組むことで、この事業に限らず、知見や経験を共有することができます。考え方の違いなどを知ることで、互いに刺激を受け、人材交流にもなっている。吉田さんにはいつも助けてもらっています」と話す。

今後も地域の枠組みを越えて共同利用の輪を広げていきたい。

ただでさえ難しい事業に取り組むわけだが、複数自治体で進める混乱などは特にないという。スムーズな進行は、事業全体を統括する「三菱商事」の力によるところが大きいそうだ。「やりたいことを言語化できないこともありますが、三菱商事の担当者がこちらの意図に沿った提案をしてくれるため、非常に心強く感じます」と吉田さん。

将来的にスマートシティを目指す両自治体。久保田さんは、「今後は環境・防災分野での活用や、産官学のデータ連携による各種施策の見える化など、様々な分野で取り組みを進める考えです」と話す。

矢吹町では防災分野のほか、「スポーツ振興や、オンデマンドバスの導入による公共交通の最適化など地域交通への活用も検討中です。この取り組みでは、従来は対面でしか得られなかった、住民一人ひとりのニーズを基盤が教えてくれるようになる。デジタルでアナログのニーズがつかめるのです」と吉田さんは期待を込める。

今後は同じような地域課題を抱える全国の自治体にも、データ連携基盤の共同利用を呼びかけていく考えだ。
 

予算情報

総事業費:約1億2,000万円
データ連携基盤の構築費ほか、3つのサービス開発費を含む。

 

複数自治体での共同利用!
データ連携基盤を低コストで構築・運用できる仕組みとは?
 

左:東京都狛江市 久保田 康弘さん
中央:東京都狛江市 小野 敏樹さん
右:福島県矢吹町 吉田 賢樹さん

小規模自治体がデータ連携基盤を独自に構築するのは、予算や人員の面で難しい。そこで、複数自治体が共同で構築・運用する“広域連携”について、実際に取り組む2自治体に、そのメリットや選んだ理由をインタビューした。

 

Q1:広域連携で取り組む理由を教えてください。

狛江市 複数の自治体が連携することで、スケールメリットを活かした取り組みを行えると考えました。

矢吹町 予算や人員が少ない自治体同士、手を携えてやっていけるからです。小規模自治体でも、スマートシティの推進に取り組めるのが魅力的でした。

Q2: 連携での取り組みをどのように進めていますか?

狛江市 矢吹町とは週に1回、オンラインミーティングを行っています。これとは別に、三菱商事も全体会議を週に1回セッティングしてくれます。意思疎通を図りながら、順調に進めています。

矢吹町 ミーティングでは、どのようなデータを揃えられるか確認したり、開発するサービスについて意見交換したり。チャットなども活用して、密に連絡を取っています。

Q3:住民サービスの面で、メリットはありますか?

狛江市 矢吹町が開発したサービスは当市の住民も利用できますし、それとは逆に当市のものを使ってもらうことも。提供の幅が広がるので、住民サービスの向上に直結します。

矢吹町 横展開することで、自治体の枠を越えた住民サービスを行えるのではないでしょうか。狛江市が検討している環境・防災分野のサービスも楽しみにしています。

Q4:そのほか広域連携ならではのメリットはありますか?

狛江市 双方の知見を合わせることで、取り組み内容をより良いものにすることができます。吉田さんの知識に負けないようにこちらも勉強するなど、互いが刺激し合える点も良いですね。

矢吹町 近隣自治体との交流はありますが、遠方の自治体とつながる機会は貴重です。首都である東京の自治体がどう考えているかを知ることができ、いつも刺激をもらっています。

Q5:興味をもった自治体職員にメッセージをお願いします。

狛江市 “狛江市・矢吹町モデル”のデータ連携基盤は、人口10万人未満の自治体向けです。たくさんの自治体と協力し、活動を広めていきたいと考えています。

矢吹町 参加する自治体が多ければ多いほど、データ連携基盤の導入費や運用費が抑えられます。また、サービスを横展開するためにも、仲間は大歓迎です。

 

まちづくりで“地域創生”を目指す、三菱商事の取り組み

データ連携基盤担当者の声

三菱商事 電力・地域コミュニティDX部
近藤 要(こんどう かなめ)さん

自治体サービスの“今”と“未来”に貢献

スマートシティなど、これからの都市サービスに欠かせないデータ連携基盤。現状の課題解決をはじめ、個別に提供されている自治体サービスをシームレスにつなぐなど、各サービスの付加価値向上にも有益です。プライバシーを守りながら住民一人ひとりを識別し、必要なサービスを必要なとき、必要な人に届けることで、サービスの提供価値と住民の利便性向上を目指しています。

当社では、基盤の構築をはじめ、地域課題の抽出や、基盤に接続するアプリやサービスの開発など、プロジェクト全般をサポート。“便利で活気のある自律分散型コミュニティ”の創造を掲げ、地域住民のため、自治体や各事業者と連携・推進しています。

 

地域ポータル担当者の声

三菱商事 電力・地域コミュニティDX部
坂上 聡(さかがみ さとし)さん

実際に利用する人に寄り添いサポートする

当社の強みは、基盤の構築だけではなく、地域住民や観光客が利用できるアプリやサービスを提供していること。那須塩原市が導入する「地域ポータル」と「デジタル観光パスポート」は、当社が責任もって開発・提供するサービスです。地域ポータルの実証実験では、私が学校に行って、実際に現場で使ってくれる教頭先生や保護者に直接、説明し、質問や要望を受け付けました。

サービスは実装して終わりではなく、使いつづけてもらうために、常に改善が必要です。実装に至るまではもちろん、“住民に使い勝手の良いものになっているか”“住民ニーズの変化に対応できているか”など、実装した後もしっかりサポートしていきます。

 

栃木県那須塩原市
「未来のために今、動きだす!データ連携基盤を構築し、“住みつづけたいまち”をつくる」はこちら

お問い合わせ

サービス提供元企業:三菱商事株式会社

東京都千代田区丸の内2-6-1
丸の内パークビルディング27F

データ連携基盤
TEL:070-8788-3667(担当:近藤)
E-mail:
ml.pj.data-platform@mitsubishicorp.com

地域ポータル
TEL:070-3875-2829(担当:坂上)
E-mail:
ml.pj.hometown-portal1@org.mitsubishicorp.com

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