ジチタイワークス

大阪府河内長野市

地域内で移動が困難な高齢者の“ラストワンマイル”を支援。

大阪市や堺市のベッドタウンとして栄えてきた河内長野市は、現在、府内33市の中で最も高齢化率が高い自治体だという。そんな同市が取り組む、高齢化で増加した“移動弱者”への施策とは?担当者に話を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.26(2023年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]ヤマハ発動機株式会社

買い物などの移動が困難な高齢者に実用的な移動手段を提供する。

昭和57年にまち開きした南花台地区。戸建てを中心に約3,300世帯が居住する市内最大級のニュータウンだ。閑静な住宅地として知られているが、高齢化により大きな課題が浮上したという。それは、丘の上に位置するために坂が多く、免許返納後の移動手段が確保できない住民が増えたこと。

横山さんは「もともと交通網が充実した地域ではありません。坂が多く、主な移動手段は自家用車という住民が大多数です。商業施設も少なく、免許を返納すると買い物や通院など日常の移動が困難になるという声が出ていました」と話す。

同市は平成26年度より、大阪府が提唱する「スマートエイジング・シティ」の実現に向け、“今いる住民が安心して住み続けられる”持続可能なまちづくりに着手。地域住民主体の様々な活動を実施してきた。住民の共助意識も高く、“お互いさん”と呼ばれる高齢者の買い物支援ボランティアの活動も盛んだという。

そんな中、同市が平成28年に策定した第5次総合計画において、同地区を“丘の生活拠点”と定め、郊外型開発団地の再生モデル地区として事業を推進。令和元年度より、市と地域住民が主体となった移動支援の一つとして、時速20km未満で公道を走る電動カート「グリーンスローモビリティ(以下、GSM)」の導入実証実験を「ヤマハ発動機」と協働で開始した。

“ちょっとそこまで”の移動を楽しく快適な時間に変えられる。

令和元年度に実証実験が始まった同地区のGSMは、まずは運転手による手動運転での無償サービス※1としてスタートした。「まずはデマンド運行で開始しました。タクシーのように希望の乗降地点まで送迎してくれるので、利用者からは“ありがたい”という声が多く聞かれますね」。

もとの車両は、ゴルフ場で目にする同社製の電動カート。これを公道走行できるように開発した車両を使っているという。ゆっくりと静かに動くだけでなく、風を感じる開放感あふれる構造。利用者からは一様に“楽しい” “気持ちいい”という声が聞かれているという。乗客同士はもちろん、道ゆく人とも会話ができるため、住民同士の交流を促進。より住み心地の良い地域づくりへの貢献も期待できそうだ。

また、引きこもりがちな高齢者にとっては、外出のきっかけにもなるという。社会との接点が増えることは、心身の健康にも良い影響を及ぼすのではないだろうか。

※1 令和3年12月より1乗車100円に有償化

河内長野市のグリーンスローモビリティ導入成果

~“「のりあい」から「ふれあい」へ”をコンセプトに、地域コミュニティの活性化に寄与~

地域コミュニティの醸成
乗り合うことで会話が生まれ、住民同士の交流が広がった。

引きこもり高齢者の外出増
開放的な景色が心を弾ませ、引きこもり高齢者の外出が増えた。

共助意識の向上
助け合いの意識が芽生え、地域ボランティアの参加者が増えた。

非交通空白地域にも存在する移動弱者をGSMで支援する。

公道を運行する事業を新しく始める場合、地域住民の理解を得るのが難しいケースが多いという。しかし、今回の取り組みは「低速ですし、事前説明会を開いたこともあり、おおむね好意的な反応でした」と振り返る。また、近隣エリアにも導入が波及しているそうだ。

「交通空白地であり、以前よりバス路線の延伸を望んでいた集落では、この取り組みを知った自治会が自らGSMの運用を始めています。南花台はいわゆる公共交通空白地域ではないため、一見するとGSM導入は不要に見られがちです。しかし、そんな地域ですら移動困難な高齢者が大勢いて、実際に成果を上げていることが見本になっていると感じます」。

現在はデマンド運行に加えて、自動運転※2による定時定ルート運行も始まっている。運転手の担い手不足も想定した、より持続可能なまちづくりを視野に入れての進化だ。将来は、遠隔操作システムとも連携する予定だという。

「開始以来、順調に利用者が伸びていた中でコロナ禍に突入しました。半年以上も中断されましたが、現在はもとの乗り合いスタイルで再運行しています。バスやタクシーなど既存の交通機関との調整は課題として残りますが、我々自治体の役割を“ラストワンマイルの支援”と捉えれば、共生できると信じています」。同様の課題を抱える自治体の良い前例となれるよう、今後も取り組みを続けていくと語ってくれた。

※2 乗務員が同乗し障害物や飛び出しなどには手動で対応

総合政策部
政策企画課 政策推進係
係長
横山 司(よこやま つかさ)さん

ヤマハ グリーンスローモビリティの特性

周囲の環境に優しい電気自動車
環境性能に優れたリチウムイオンバッテリー採用。走行中も静かで、脱炭素にも貢献する。

乗り降りしやすい低床構造
床はノンステップバスよりもさらに低い。開口部も広く、子どもや脚の不自由な高齢者など、多くの人に優しいつくり。

狭い道でもすれ違えるコンパクトな車体
車幅は軽自動車より狭く、細い道でも運行可能。バスが運行できないようなエリアに適している。

オープンで開放的な乗車空間
車内であることを忘れるほどの開放感と景色を楽しめる低速移動。乗車したまま外とのコミュニケーションが可能で会話も弾む。

期待される導入効果
●健康的で豊かな持続可能なまちづくり
●観光地の活性化、まちの資産価値の向上
●QOL向上、社会保障費抑制への期待
●気軽な移動で活気のあるまち
●住民同士に新たな交流が生まれ続けるまち
●外出機会増加で健康寿命の延びるまち


観光事業での活用事例も多い。「自治体・公共Week 2023(6/28~6/30)」にはJAFと共同で出展予定

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お問い合わせ

サービス提供元企業:ヤマハ発動機株式会社

NV・技術戦略統括部 新事業推進部

TEL:0537-21-2554
住所:静岡県掛川市成滝322-1

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