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入庁1年目の公務員が副業に取り組むわけ。〜公務員の副業について〜

「読者のコトバ」は、自治体職員の様々な「言葉」を集めるコーナーです。

この「コト場」は、自治体職員が日々の業務や活動している「コト」を発表・共有できる「場」です。読者投稿の中から、編集室が選出したものを随時公開していきます。全国の自治体の皆さんにぜひ共有したい!伝えたい!経験・活動などがあれば、ぜひご投稿ください。

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● 投稿者(自治体職員)プロフィール

テーマジャンル : 副業
ペンネーム : 菊見 祐介さん(20代)
所属部門 : 鹿嶋市 税務課

 

私が副業として取り組んでいる“キャリアコンサルタント”とは。

国内最多タイトルを誇る鹿島アントラーズの本拠地である茨城県鹿嶋市職員です。この春から公務員2年目になりました。様々なご縁でいただけた掲載の機会ですので、公務員として働いている方や公務員を目指している方の“自分らしい働き方”を考えるきっかけになればうれしく思います。私は、市の業務の傍ら、国家資格キャリアコンサルタントとして副業に挑戦しています。

具体的には、平日の夜に大学生と就活やキャリアについて一緒に考え、土・日曜は合同企業説明会の運営・補助、セミナー講師など多くの経験をさせていただいています。

無償のお仕事もお受けしていますが、地方公務員法や市の条例と照らし合わせて、有償でのお仕事もありがたくお受けしています。

 

きっかけは“キャリアコンサルタント”との出会い。

活動のきっかけは、さかのぼること2年前。ちょうど就職活動の真っただ中の大学3年生のときでした。私はキャリアの第一歩目の選択を納得いくものにしたいと考え、選択肢はできるだけ排除せずに残したまま、就活時期に差しかかりました。その選択肢を絞る上での軸は、“地域”でした。“どうせ働くなら地元のために働きたい”という思いのもと、茨城県内の企業、自治体に絞って就職活動を進めていました。都内の大学に通っていたので、いわゆる“Uターン就活”です。

茨城県内で就職活動を進める上で、大学の就職課では少し物足りなさを感じていました。それは、“地元の企業の情報は、地元の人が一番知っている”ため、地元の求人票は地元の大学に集中しがちで、都内の大学の就職課に集まる求人票の多くは、都内の企業のものだったからです。そこで私は、水戸市にあるNPO法人「雇用人材協会」という、地域の若者のキャリア支援を行っている機関が主催するインターンシップに参加しました。そこで、今でも大変お世話になっているキャリアコンサルタントの方と出会えたのです。

それから、何度も自身の就職活動についてお話を聞いてくださり、アドバイスもいただきました。中でも最も印象に残っている出来事は、就職活動の終盤で相談したときでした。その頃、選択肢は2つに絞られていたのですが、そのどちらに進むべきかに悩んでいると、「もう自分の中で(選択肢は)決まってるんじゃない?」と、そう言われました。

確かに、相談する前から心の半分以上は“鹿嶋市役所に入庁したい”と決めていたことに、その言葉でハッと気づかされました。ただ単純に、背中を押してほしかったり、最後の決め手が見つからなかったり、決断の一歩が踏み出せない状況だっただけなのです。決してどちらの選択が“正しい選択”かではなく、私が自信をもって前進するための後押しをしてもらいました。そんな経験をしたことで、“次は違う誰かのキャリア選択のお手伝いがしたい”と思うようになりました。

 

副業が正式に認められるまでの道のりとその試みの中身。

昨年7月、無事にキャリアコンサルタントの資格を取得することができ、公務員とキャリアコンサルタントという二足のわらじでの活動を志すことになりました。無事に資格も取ったのだから、何か始めたい。でも入庁してまだ3カ月。やっと業務の例月の流れが分かってきたくらいで、ほかのことは全く分かりません。
そこでまずは、課長への説明から行いました。「こんな資格を取ったから、こんな活動がしたいです」。

1年目の職員が本業以外の取り組みがしたいと言って許可をもらえるものなのか、と不安もありました。しかし、丁寧に話を受け止めてもらえ、人事課との調整までしてくださりました。そこからは、人事課の担当者と何度か対話を重ね、まずは報酬なしでの活動の許可をもらいました。その許可をもとに、休日を使って自身の活動の営業のために様々な場所へ顔を出しました。

そのうち、有償でお仕事を依頼されることも出てきました。報酬ありの活動については、地方公務員法の第三十八条の通り、任命権者の許可を受けなければ活動できません……。が、裏を返せば、“許可を受ければ活動しても良い” ことに目を向けました。そのときも、まずは課長に相談しました。すると、「良い活動なのだから、もらえる報酬はもらった方がいい」と心強い言葉をもらいました。

今は別の課へ異動してしまいましたが、当時の課長には心から感謝しています。人事課の担当者も、地方公務員法や市の条例などは考慮しつつも、温かく応援してくれています。ほかにも、鹿嶋市役所入庁の決め手になった憧れの先輩にも、活動を面白がっていただき「“やる”か“やらない”かじゃなくて、やれ!」と手荒い応援をいただきました(笑)。

そして今、副業についての相談と交渉を重ねた結果、依頼の内容を都度吟味した上で、“許可を得れば報酬の受け取りも可能”という方針に変化しました。新卒一年目。何も分からないからこそひたすらに相談を重ね、そのうちに心強い味方が増えていく感覚を覚えました。許可を得るために自分で何かをしたというよりも、自力には限界があるからこそ、多くの方の支援を少しずつ得ながら許可を受け、今活動ができていると思っています。

 

公務員が副業をするときに意識しておきたい基本的な考え方。

公務員は全体の奉仕者である以上、副業への一定の制限はあるべきだと私自身は思っています。ただ、その制限の中でもいくらでも自分らしく働くことができる“余白”はあるとも同時に考えています。公務員×キャリアコンサルタントの大先輩である島田正樹さんの著書の中で、報酬という言葉を①有形報酬と②無形報酬に分けてつづられています。

①有形報酬はカネとかモノとか、目に見えるもの。これらをいただくことは公務員として働く以上、制限は当然ある。でも、②無形報酬は制限なくいくらでも稼ぐことができる。例えばネットワークとか、やりがいとか、新しい学びとか。

公務員として副業をする中で、様々な企業の方、学生の方、他自治体の職員の方とご一緒する機会があります。また、キャリア支援を通じて、少しでも役に立てた感覚を得られたときや、感謝の声をいただいたときは大きなやりがいもあります。そして何よりも、庁内で働いていては、決して味わうことのできない“経験”を得られています。

これからも有形報酬は許可を得た上でお受けしますが、無形報酬は思う存分もらい続けたいと思っています。私は、キャリアコンサルタントとして“らしさ”を支援するという言葉を理念にしています。「どんな周囲の声よりも自分の声を大切にしてほしい」「将来の夢が見えていないとしても、“こんな風になりたいな”という、漠然としていたとしても何かしらの理想像があるのであれば、それを大切にしてほしい」。こんなことを日々考えながら、支援させていただいています。

そして、あのときに言われた「もう自分の中で(選択肢は)決まってるんじゃない?」というセリフを、いつか誰かにそっと言ってあげられるようなキャリアコンサルタントになりたいと思っています。

らしさを支援すると掲げる以上、私自身が自分らしく働く姿を見せる責任があります。そのためにも、公務員という枠にとらわれず、私らしく兼業を続けていきたいと思っています。

 

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