ジチタイワークス

兵庫県明石市

人口も地域経済もV字回復!共生社会づくりがまちの好循環をさらに拡大

世界から注目を集めているSDGsに沿った政策を推進する自治体があります。兵庫県の明石市です。SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略。平成28(2016)年から15年間で各国が達成する国際目標で、大きな17の目標と169のターゲットから構成されています。

明石市の「誰も置き去りにしない」取り組みは国連で採択される前から始まり、今では「交流人口」「定住人口」「出生数」「市税収入」「地域経済」の5つのV字回復を達成。

今回は、とどまることを知らない明石市の成長の秘密に迫ります。

※下記はジチタイワークスVol.3(2018年10月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
 [提供] 兵庫県明石市

全ての子どもに焦点を当て分け隔てのない支援を

明石市の改革の中心にあったのは泉房穂市長の存在。平成23(2011)年の就任後、「こどもを核としたまちづくり」をスローガンに掲げます。所得制限を設けずに子ども医療費の無料化を実施。さらに第2子以降の保育料も所得制限なしで完全に無料化しました。

ほかにも全国で9年ぶりとなる児童相談所の設置や、市内全28小学校区でのこども食堂の開設、全国初の取り組みとしては離婚前後の養育支援やひとり親家庭の支援など、子ども・子育て支援の取り組みは挙げればきりがありません。


こども食堂も大きな支援の一つ

市民や職員の理解を得るためには

まずは市の予算配分や人員配置を見直し、子ども・子育て支援に向けた施策へ舵を切りました。しかし改革には大きな壁がつきもの。「最初は特に苦労した」と明石市政策局次長の岡田さんは語ります。

全ての子どもをまちのみんなで応援するには、納税者である市民やその税を預かる行政職員の納得が欠かせませんが、子ども重点の市政に理解を示さない人もいます。そこで庁内での意識の共有と地域への広報活動に力を入れました。

庁内では取り組みの背景にある理念をしっかり伝えるように気をつけたといいます。「なぜ必要なのか」「誰のためにするのか」。方向性の共有に努めました。

世界が注目するSDGsは共感を生む手がかりに

まちづくりの考え方を共有するため世界標準のSDGsを用いました。子どもや高齢者、障害者を社会で支え、分け隔てなく誰も置き去りにしない考えはSDGsの根本理念。世界的な共生社会の流れであることを明確に示し、月2回発行する「広報あかし」でも大きく取り上げました。

また、地方創生の目標には「人口30万人」「出生数年3千人」「本の貸出冊数年300万冊」の「明石のトリプルスリー」を掲げ、まちのみんなで共有。平成22(2010)年度当初、126億円だった子ども部門の予算は平成30(2018)年度当初には219億円に。子ども部門の職員数も39人(平成22年度当初)から103人(平成30年8月)に大きく増員しました。若手職員や女性職員も積極的に登用し、福祉職や弁護士など多くの専門職を採用し成果を上げています。

子どもを親の収入で分けない所得制限なしの政策は単なる貧困対策を超え、納税額の多い中間層にも大きな恩恵があります。若い共働き世帯が反応し、転入や出生数が増え、地域経済の好況にもつながりました。

国の政策を待たず、『やさしい社会を明石から』と、全国に広がるよう施策を展開。こうして明石市は「5つのV字回復」を達成したのです。どんな壁があっても、結果がなかなか出なくても、市民とまちの未来のためにあきらめない。それが好循環を生むカギだと岡田さんは語ってくれました。

How To

1.地域に合わせた理念

明石市は神戸市や大阪市に近く、通勤通学に便利なまち。面積が狭く人口密度も高いので、インフラにかかる支出も比較的低い。コンパクトな住宅都市のメリットをいかし、子育てに最適なまちづくりにシフトした。地域の強み・弱みを踏まえ焦点を絞ることで市民の共感が得られた。

まちの共通理解を深める姿勢

スタート時にうまくいかなくても、市民とまちの未来のためブレないことが重要だ。明石市も当初はなかなか成果が数字に表れなかったが、「子ども」重点を市長や職員、議会や市民の共通目標として掲げた取り組みがまちに好循環を生み出した。

適時適材適所の人材配置

一般的に人事異動は1年に1度だが、明石市役所では毎月のように実施している。時代や市民ニーズに適時対応するためだ。福祉職や弁護士など専門職を増やし、ワンストップ、アウトリーチ、チームアプローチを進めたのも市民サービス向上につながっている。

誰にでもわかる言葉を使った広報

「SDGs」と言ってもピンとこない人も多い。そこで言葉自体を分り易く言い換えた。それが、「いつまでも、みんなで、助け合おう」。子や孫、もっと先の代まで、地域・行政など、みんなで連携して持続可能なまちをつくろうと呼びかけ、共通理解を広げてきた。

市長のすぐ横に10人の職員が在席

市長室では政策局の職員10人が市長と一緒に机を並べて仕事に励んでいる。市長との距離が近いので、すぐに報告、連絡ができ、市長からの指示もダイレクトに伝わる。重要政策や各局の動向をリアルタイムで感じ、状況を的確に分析し、すぐに行動に移せるのが大きなメリットだ。


市長と近距離で業務を進められる

Results

①交流人口:1万9650人(平成27年10月)→2万8140人(平成29年2月)4割増加
②定住人口:29万349人(平成25年4月)→29万7712人(平成30年8月)5年連続増加
③出生数:2570人(平成26年)→2730人(平成29年)3年連続増加
④市税税収:342億円(平成24年度決算)→362億円(平成29年度見込)
⑤地域経済:住宅需要は1889戸(平成24年度)→2674戸(平成28年度)
新規出店は年12店舗(平成32年目標値)→24店舗(平成28年10月~平成29年10月)

庁内での伝え方や広報を工夫して、職員や市民と目標を共有しています。今後も障害当事者であるユニバーサルモニターの声を聴くなど、当事者目線を大切にして丁寧なまちづくりを進めていきます。


左から、福祉総務課障害者施策担当係長森太郎さん、明石市政策局次長岡田武さん

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