ジチタイワークス

福井県

“全職員がDX人材”を目指し、福井県が実施した伴走型研修とは。

国を挙げて進められている自治体DXだが、推進にあたってはデジタルツールの導入だけでなく、熱意やスキルをもつ職員の存在が不可欠だ。福井県では全庁で意志を統一した上で、実践的な研修を導入して人材育成に努めているという。

※下記はジチタイワークスINFO.(2022年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]株式会社ジョイゾー

Interview

福井県
左:地域戦略部 DX推進課
古田 宗寛(ふるた むねひろ)さん
中央:総務部 人事課
吉田 志織(よしだ しおり)さん
右:農林水産部 水産課 水産試験場
青木 萌子(あおき もえこ)さん

必要なのは知識や技術よりも、周囲を巻き込む“熱量”をもつ人。

同県がDXに向けた取り組みを本格化させたのは令和3年。“みずから変える・みんなで変える・ふくいを変える”をスローガンに掲げ、「スマートふくい」の実現に向けて庁内の動きを加速させた。DX担当の古田さんは、「まずは機運の醸成から始めました」と語る。「県としてのビジョンづくりや、民間からDX推進監(CDO)を採用するなどして意識を高めていきました」。

こうした流れの中で直面する課題が“人材育成”だ。組織全体を底上げするためにどのような方法を採るべきか検討を進める中、「ジョイゾー」が展開する職員研修「J Camp(ジェイキャンプ)」の提案を受けた。 同研修は、企業や自治体のDXを支援する教育サービス。デジタルを活用した業務改善の心構えや基礎知識、協働による課題解決手法を学ぶことができる。同県はそのユニークな内容に期待を寄せたという。

「単なる知識の習得にとどまらず、業務の課題を明確化した上で解決策を見出す力や、関係者との調整能力までをロールプレイングで身に付けるというのが魅力的でした」。まずは職員一人がトライアル受講。これで手応えを得て、庁内での本格的な実施を決定した。

基礎から実践までの4日間に期待し集まった12人の職員。

研修は4日間の日程を基本とし、前半2日は座学、後半2日はロールプレイングという構成になっている(カリキュラム参照)。オンラインで受講でき、講師は複数人体制と対応も手厚い。庁内で研修を通して業務改善に挑戦したい職員を募ると、次々と希望者があらわれたという。

その中の一人、人事課の吉田さんは「これがチャンスだと思いました」と振り返る。「昨年度から庁内でDXの推進が叫ばれていましたが、もともとデジタルが得意ではなく、このままでは生き残れないという危機感をもっていました。デジタルツールをどう活用すべきか学びたいという気持ちもありました」。

水産試験場に勤務する青木さんも手を挙げた一人だ。吉田さん同様、デジタルに苦手意識はあったものの「近々、新たな業務改善ツールが導入されると聞き、自分も活用できるようになれば、産業の支援に貢献できるかもしれないと感じました」と受講の理由を語る。この2人をはじめ、所属も年齢もスキルも異なる職員12人を受講対象者とし、令和4年7月下旬から研修がスタートした。

デジタルが苦手な職員の心もつかむ研修内容とは。

研修初日は業務改善に対するマインドセットを座学で学び、1週間後に開催される2日目にデータベースの基礎知識や開発の進め方などの基本スキルを身に付ける、という流れで進む。吉田さんは受講した感想を次のように語る。「とても面白かったです。ツールの使い方の前に、業務改善への心構えをじっくり学ぶ点が興味深かったですね」。青木さんは「データベースの考え方について、初歩から知ることができました。データを管理して誰もが使えるものをつくる、といった点が非常に勉強になりました」と評価する。

さらに1週間を経た研修後半では、実際に簡単なシステムをつくるロールプレイングに入るが、「ここで学ぶことが大きかった」と2人は口を揃える。「自分の業務と関連のない仕事をシナリオにして進めるので、個人的な考えや都合が思い浮かぶこともなく、メンバーとのやりとりに集中できました」と吉田さん。青木さんは「最初は戸惑いましたが、回を重ねるごとにテンポよく進めることができるようになりました」と振り返る。

また、研修では講師が受講者の良い部分を見つけてフィードバックをくれることも、モチベーションを高めるきっかけになったという。

研修の手応えをステップに全職員でのDXを目指す!

同研修は8月に終了し、受講者はそれぞれの学びを職場にもち帰って、業務改善に向けて動き始めている。こうした姿を見ながら、古田さんは研修の成果を実感しているという。「業務改善を進めたいという意志と健全な危機感をもつ職員が、そのマインドを現場で発揮するためには、こういった研修が重要であることを改めて感じました。日常業務で多忙な中でも、自らデジタルツールを使い、悩みながらも前進しています」。

もちろんこうしたマインドをもつ職員の背中を押す、庁内での環境づくりも重要だ。吉田さん、青木さんは揃って「DX担当の応援や庁内の相談体制があったからトライできたし、実践に向けたチャレンジもできました」と語る。

今回の研修で確かな手応えを得た同県。古田さんは「DX推進の土台づくりとして、非常に良い体験ができました」としつつ、「今後、全職員のスキルを階層分けし、個々に合わせた教育の実施を計画しています。その中の実践的な研修の一つとして、このJ C ampの継続実施も検討中です。県の将来に向けた取り組みとして、全庁一丸でDXを推進していきます」と展望を語ってくれた。

J Campのカリキュラム
庁内のデジタル戦力を増やす!DX 人材を育てる4日間の集中講座。

業務改善の考え方、データベースの基礎知識、コミュニケーション能力の育成といった多面的な内容を凝縮したJ Camp。DX実現に必要な“スキル”と“体験”を身に付ける。

DAY1:DXの目的や意義を学び、心構えをする座学①

まずは“そもそもDXとは何か”と定義を再確認。社会におけるDXの現状を知り、実現に向けたマインドセットを行う。続けてデータベースの基礎知識を学んだ上で、業務改善は“何のために・誰が・何を・いつ”やるのか、という考え方を習得。さらにその前提として、顧客目線で課題を見つけることの重要性を学ぶ。これらのメニューを座学とワークショップで進め、DX人材になるための最初の土台を築く。

受講者VOICE
吉田:意識改革の話から始まったので、システム研修ではなく人材育成研修なのだと実感。この後どう進むのだろうとワクワクしました。
 

DAY2:初日の内容を深化し、定着させる座学②

前回のおさらいをした上で、誰もが使いやすいデータベースを構築する手法を学ぶ。また、DX推進において求められる、相手の声に耳を傾け理解する力(顧客目線)、改善を決断してやりきる力(熱量)、スタートを切って動き続ける力(失敗を恐れない)という3本の柱を、それぞれ掘り下げて理解する。1日目と同様、ワークショップを絡めて習得していく。

※福井県では、全プログラムを3日間に調整して実施(DAY1・2を同日に開催)

受講者VOICE
青木:データベースの正規化、データ整理の方法などは今まで学ぶ機会がなく、基礎知識を得られたことが、その後の実践でかなり役立ちました。
 

DAY3・4:実践に向けた体験を重ねるロールプレイング

DXを“自分事”として捉えるためのロールプレイングに取り組む。4~5人でグループをつくり、舞台を“家具屋”などに設定。システムを使う依頼者(業務担当)、それをヒアリングする立場(設計担当)、つくる立場(開発担当)、そして客観的に評価する立場(観察役)と、各人が役割を担当して開発※を行う。講師のデモ
を経て本番に入り、ローテーションしつつ全ての立場を体験することで、知識を実践力に昇華させていく。

※研修ではキントーンを利用(ツール導入の有無にかかわらず受講可能)

受講者VOICE
吉田:自分の業務ではない設定で最初は戸惑いましたが、逆に“ 現実はこうだから無理”など余計なことを考えずに済み、集中できました。
青木:どの役割も難しく、受講者には部課長級の方もいたので最初は緊張しましたが、徐々に慣れて自分の役割に没頭できるようになりました。
吉田:回を重ねるごとに、私もほかの人も“ 勘どころ”をつかんでいきました。講師の方が良かった点をほめてくれるのも励みになりました。
青木:シナリオは同じなのに、前回の成功・失敗事例を踏まえて、回ごとにみんなでやり方を見直していく。この点がとてもリアルで、成長につながっていると感じました。
 

役割を交代する意味とは?

ロールプレイングは2日間で5セット実施。短い時間に役割をローテーションすることで混乱が起きるが、ではどう依頼すれば伝わるのか、どう聞けば必要な情報が得られるのか、といった問題解決能力が磨かれていく。また、異なる役割に対しても当事者意識が芽生え、全員が協働して仕組みをつくる、というDXの本質が習得できる。

PRACTICE
受講者が現場に戻って実践した取り組み

身に付けたスキルは即実践へ!庁内であらわれた研修効果の例。

同県では研修で利用したキントーンを導入していたため、研修後は各自が現場でその成果を発揮する“実践”のフェーズに入った。2人にそのファーストステップを聞くと、研修の効果が垣間見えた。

同僚との会話から課題を発見!

業務改善課題を探していると、同僚が資料共有に難儀していることを発見。各部署で印刷された紙資料を毎日スキャンし庁内共有する作業で、時間がかかるという。そこで、各部署が資料の元データをアップロードして共有できるアプリがあれば、同僚をラクにできると考えた。

ヒアリングを行いサンプルアプリを作成

ロールプレイングの体験をもとに、同僚に現在の作業内容や、何に困っているのかなどをヒアリング。必要な情報を揃え、1週間でアプリを作成した。同僚にデモを見せる際にも研修の学びを活かし、サンプルデータを入れて実作業のイメージが湧くように工夫した。

身近なアプリ開発から次のステップへ

同僚から「使えそうだ!」と好感触を得て、ともに関係部署に提案。それをきっかけに他部署から別の解決策が提示され、そちらが採用されることになった。アプリの実務デビューには至らなかったが、同僚の課題解決やペーパーレスに貢献できたことは、大きな自信となった。

⇒身近な課題を発見し、協働で仕組みを変えられたという成功体験が自信に!

紙+エクセル管理をスマホで直接入力に

まずは自分の業務からスモールスタートすべく、毎日行っているデータ管理の見直しを実施。従来は水温や酸素量、給餌の数値を紙に記入し、PCに入力し直すという作業フローだったが、現場でスマホから直接入力できれば、時間も労力も軽減できると仮説を立てた。

写真も投稿できるアプリが完成!

データベースに入力する項目の洗い出しから着手。また、担当者間での情報共有のスムーズ化や、飼育結果情報の蓄積、前年度との比較など、実務で活かせる点をイメージしつつアプリを作成。画像アップロード機能も盛り込み、現場作業に即したものが完成した。

“より便利、より広範囲”を現在も模索中

実際に使用しながら修正を続け、遠隔地にある他施設とのデータ共有も実現。現在は県職員以外の人でもセキュリティを確保しつつ直接入力ができるよう、プラグイン(拡張機能)の活用なども検討中。さらなる業務改革に向けたカスタマイズを進めている。

⇒実務の中でブラッシュアップを続けるという、アジャイルの考え方を体得!

自治体DXの実現は“人づくり”から

DXの実践には、“デジタルツールを使える人”の前に、“自発的に動き、まわりを巻き込んでいける人”が不可欠。そうした人材育成をお手伝いします。気軽にお問い合わせください。

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