受動喫煙防止のため、公園や駅前などにパーテーション型喫煙所を設置する自治体があるが、煙の流出が防げずクレームの原因となるケースが多いようだ。大阪市はこれを改善するため、オフィス街の公園にコンテナ型喫煙所を設置した。
※下記はジチタイワークスVol.23(2022年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]株式会社ランドピア
2025年の万博に向けた整備と、分煙マナーを啓発するために。
受動喫煙による健康被害を防止するため、各地の自治体が条例を定めるなどして対策を進めている。同市も平成19年に条例を施行し、市内の都心部を縦断する御堂筋エリアを最初の路上喫煙禁止区域に指定。同時にオフィス街の一角にある堂島公園内に、パーテーション型喫煙所を設置した。
「路上喫煙禁止区域を設けるからには、マナーを守って喫煙できる場所の確保も必要だという外部有識者会議の提言を踏まえ、“吸える場所・吸えない場所”を明確に分けたかったのです」と木村さん。しかし、灰皿の近くにパーテーション1枚を置いた簡易タイプでの分煙は難しく、煙やにおいが周辺に漂う状況だった。また、喫煙できる範囲を明示していなかったため、喫煙者が公園全体に分散することも。そのため付近を通行する市民からクレームが寄せられることが多かったという。
そこで、2025年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けて整備やマナー啓発を進めるタイミングで、東京都内での導入事例などを参考に、「ランドピア」の「バリアフリー喫煙コンテナ®」を関西エリアで初めて新設することになった。
限られた設置スペースでもバリアフリー化が可能な設備。
近隣オフィスに勤務する人たちを中心に、1日当たり約570人※が利用している堂島公園。万博に向けた再整備計画が進んでおり、令和3年9月には新しい観光トイレが完成した。今後も船着き場などが整備されることになっており、喫煙場所の改善も急務だった。「導入にあたっては、小さな公園なので、スロープ用スペースがなくてもバリアフリー化できることが決め手になりました」と嵯峨さん。
同社の喫煙コンテナは、貨物用20ft(フィート)コンテナを改良した閉鎖型喫煙設備。“建てる”のではなく“置く”構造物なので、開設費用・期間ともに削減できる。また、出入口下部のはりをなくすことで床面を下げ、スロープなしでバリアフリーに対応。さらに、室内のプラズマ脱臭機が煙やにおいを除去し、受動喫煙リスクを下げられる点も、同公園のニーズに合致していたという。
通行者に配慮して、コンテナの排気口を川側に設けたり、防犯のためにガラス窓部分を大きめにしたりと、設置環境に合わせた工夫も。一度に室内に入れる定員を記載したプレートを掲示するなど、コロナの感染対策も行っている。
※令和4年1月19日、7時30分~19時のうち6時間の通行量・利用者数(大阪市調べ)
喫煙マナー強化の好事例として市内全域の分煙対策に活かす。
コンテナ設置の3週間前から、公園内の喫煙者に対して同市職員が告知ティッシュを配布。コンテナ以外の場所で喫煙した場合は、過料を徴収するというルールも設けた。
こうした取り組みの結果、令和4年8月31日に設置して以来、副流煙に関するクレームは届いていないという。「当市は万博開催都市として、市内全域の路上喫煙禁止に向けて取り組んでいます。今ある5カ所の開放型喫煙所についても、再整備計画や利用状況などを見ながら改善を検討していきたいです」と木村さん。
関西エリアに同社の喫煙コンテナが設置されたのは今回が初めて。公園周辺の通行者が快適に過ごせていることが反響として分かり、これからの市内の分煙対策に活かされそうだ。
この事例をきっかけに、喫煙者・非喫煙者の共生のためのまちづくりが、近隣地域にも広がっていくことに期待したい。
大阪市 環境局 事業部
左:まち美化担当課長
木村 舞子(きむら まいこ)さん
右:事業管理課 担当係長
嵯峨 厚(さが あつし)さん
地域ごとのニーズや課題に応じて吸う人・吸わない人の共生を支援。
「バリアフリー喫煙コンテナ®」の導入メリット
1.独立した“建物”で空気を浄化し、煙を外に漏らさない
パーテーション型喫煙所と異なり、閉鎖型の“建物”として独立。プラズマ脱臭機を設置することで、たばこの煙を室内で浄化し、煙やにおいを室外に漏らさない。
2.スロープを設けなくてもバリアフリー化が可能
出入口部分のはりをなくすことで床面を下げ、地面との段差をなくしてバリアフリー化。長いスロープを設置する必要がないため、限られたスペースでも多くの人が使いやすい仕様になっている。
3.設置場所や周辺景観などに合わせた製品を提供
長さ・窓のタイプ・ドアの位置をそれぞれ複数種類から選択。設置場所の面積や予想利用者数、周辺景観などに合わせて、コンテナの形状や外装色を決められる。
地域の課題や設置場所などに合わせた導入事例
【事例1】東京都港区(新橋駅前SL広場) 令和4年1月設置
多くの人が立ち寄るという立地条件に合わせ、コンテナ2基を連結した。通行人も多いことから、防犯とプライバシー保護を両立。3面ガラス張りで、喫煙者の上半身の高さに目隠しフィルムを貼っている。
【事例2】東京都渋谷区(モヤイ像横) 令和2年3月設置
バス停近くの喫煙所は煙が漏れて苦情が多かったという。しかし撤去すると路上喫煙の増加が懸念される。限られた区画で住民の要望に応えるため、建築基準法の許可を経て歩道に設置した。
自治体の導入事例は全18件(令和4年9月現在)
オンライン相談を常時受け付けています
設置場所の広さや設置条件、周辺環境などに合わせて、最適な形状のコンテナを提案します。全国対応可能ですので、オンラインでも相談を承ります。地域の課題や要望など、気軽にご連絡ください。
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